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日常と約束
休日の午後、学院の中庭。
秋とレディは、芝生に座って簡単な訓練を兼ねた遊びをしていた。
「秋、そろそろターンの練習をしてみたい」
「うん、でも無理はしないでね」
「……私はあなたの言うことに従う」
普段は冷静で、命令に忠実なレディの声も、今日はどこか柔らかい。
秋は思わず微笑んでしまった。
「ねえ、レディ。なんだかさ、君といるとお姉ちゃんと過ごしてるみたいで……楽しい」
言った瞬間、胸が熱くなる。
忘れられない姉の笑顔。事故で失ったあの日の記憶。
けれど、目の前にいるレディが、その面影をほんの少しだけ取り戻させてくれる。
「……秋」
レディの赤い瞳が揺れる。
「私はあなたの姉ではない。でも……あなたが笑うなら、私はその役目を果たしたい」
秋は小さく頷き、レディの手をそっと握った。
「ありがとう、レディ。本当に、いてくれてよかった」
その夜、二人は学園の屋上で星を見上げながら約束した。
「これからも、一緒に歩こう」
「はい、秋」
◇
しかし、学院の影は静かに迫っていた。
監視の目は増え、訓練データは刻々と研究棟に送られている。
片瀬の支援があっても、完全に安全な日々ではない。
――そして、次の週末には、学院による“制御テスト”が予定されていた。
秋とレディの絆を試す、最初の大きな試練が、静かに迫っていた。




