秘密の協力者
それから数日。
学院の授業や訓練は、いつも通りに続いていた。
……少なくとも表面上は。
「秋、今日の実技テスト、合格ラインぎりぎりだったな」
「うっ……レディ、そこはフォローしてよ」
「私は事実を述べただけだ」
「そーいうとこがお姉ちゃんに似てるんだよなぁ……」
笑いながら過ごす日常。
けれど秋は気づいていた。廊下で感じる視線、教官の問いかけの裏に潜む探り。
学院は確実に、レディを監視している。
そんなある日のこと。
放課後の訓練を終えた二人の端末に、一通のメッセージが届いた。
――『裏門のベンチで待っています。 片瀬』
◇
裏門の片隅、街灯に照らされたベンチ。
そこには、白衣を脱いでラフな服装に着替えた片瀬が座っていた。
「よく来てくれたわね。……今日は安心していい。監視網は外してあるから」
「本当にそんなことできるんですか?」秋が思わず聞き返す。
片瀬は小さく笑い、手元の小型装置を見せた。
「一時的にノイズを流すだけ。長くはもたないけど、数分なら十分」
そして差し出されたのは、小さなデータチップだった。
「これ、学院がレディをどう扱おうとしているかの記録よ。公式には絶対に見られない資料」
秋はごくりと喉を鳴らした。
レディが横に立ち、赤い瞳でチップを見つめる。
「……あなたは、なぜ私を信じる?」
「信じるというより――願っているのよ」片瀬の声は真剣だった。
「もし本当に“人と融合できるアンドロイド”が存在するなら、それはきっと世界を救う力になる。私はその可能性に賭けたい」
秋の胸が熱くなった。
自分以外にも、レディを“仲間”として信じてくれる人がいる――それが、こんなにも心強いとは。




