2話 作られた未来
「だ じょ ぶ い う ?」
意識はある。それに女の声が聞こえる。
「だいじょうぶ?だいじょうぶ?」
ここは天国なのだろうか。いや、もしかしたら地獄かもしれない。目が開かない、正確には開けたくない。開けた瞬間ここがどこなのかがわかってしまうような気がした。なら天国でも地獄でもないこの瞬間にいつまでもいたい。
「大丈夫?声聞こえてる?」
だけど
「お腹空いた?喉乾いた?」
頻りに話しかけてくれるこの名も顔も知らない少女に申し訳なさを覚えてしまうようになってきた。
「だい・・・じょうぶ?」
見知らぬ少女の声に諦めの色が混ざってきたところで俺は目を開いた。始めに入った景色は
「・・・。だれ?」
青空と見知らぬ少女の顔だった。いや、正確にはどこかで見覚えがあったような・・・。青空だから天国だと思ったがそうでもないらしい。周囲は焦げ臭い匂いが充満し、嫌な臭いが鼻を刺していた。
「よかった!生きてたんだね!」
回らない頭をなんとか回転させて今の状況を探る。どうやら俺はまだ死んでないようだ。そして今はこの見知らぬ少女に膝枕されてる。不思議と嫌な感じはしなかった。けど、なぜだか暖かみは感じなかった。
「大丈夫?お腹減ってない?」
そういえばなんで俺は生きているんだ?それにこの謎多き少女はいったい・・・。
起き上がる気力もなくそのままの寝たままの姿勢で会話を続けた。
「お腹・・・へった。」
疲弊しているせいか拙い会話しかできなかった。
「待ってて。今ご飯を持ってくるから。」
そう言って少女は俺の頭をそっと下ろした後にどこかへ走っていった。
現実味を帯びてない状況に困惑しながら辺りを見渡すとさらに現実味がなくなってしまった。まるで別の世界に転移したように。白昼夢を見ているように。
少し起き上がって見渡した辺りは一面焼け野原となり家という家は見渡す限りどこにもなかった。ここは昨日まで普通の町だったんだよと言っても誰も信じてはくれないだろう。
今までも何度も様々なところで空襲があったが今回の空襲は今までの比にならない規模の空襲だった。
町が崩壊し荒廃した姿を見ても感情はそれほど大きく揺れ動かなかった。まるで心を失ったように。
人を殺す火は大方なくなっていたがその代わりに弔いの火がいくつか上っていた。
よく耳をすませばいろいろな人の声が聞こえてきた。
嘆く者、人を探す者、怒り狂う者。
「体があんまり動かないな・・・」
俺はまた横になって少女の帰りを待った。