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時がきた。
そう“それ”は思っている。
目の前に広がるきらびやかな星々。その隙間を埋める暗黒の奥底に、かすかに瞬く光。
“それ”はそこに思いを馳せる。背筋を激しい興奮が駆け抜け、大きく身震いする。
求めたものがようやく、手の中に落ちてこようとしている。
あとはうまく受け止めるだけだ。“それ”は自分に言い聞かせる。何度もシミュレーションした。しくじるわけにはいかない。
生が何度巡ったとしても、二度とは訪れない好機だ。この一瞬のためだけに、どれだけの財を費やし、どれだけの退屈な時間を耐えてきたか。
だが、成功すれば見返りは余りある。
持たざる者がすべてを賭けた、一世一代の大勝負だ。
星が一列に並ぶ。
銀河がまとう空気が静かに変わっていくのを感じる。この感覚はおそらく今、全宇宙で己だけが味わうことのできるものだ。
口元に薄く笑みが浮かぶ。
ようやく始まる。
視界の端で、いくつかの星が流れていった。