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小さな国の大きなひと  作者: Quantum
贄の姫君
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王宮侍女(兼占術士)ファルの後悔

 残された時間はもうほとんどない。〈主君殺しの魔獣騎士〉の軍はすぐそこまで来ている。


 国王陛下もお妃さまも、いや、出陣前に王位を譲られたから先王さまか、は、わずかでも時間を稼ぐために決死隊を募って王宮を離れ、国境の砦を守っている。


 今私がいる王宮の最奥、〈魔導士の塔〉の最下層、石の床に描かれた召喚の魔法陣はわずかに光を放ち、そこにいる人々を下から微かに照らしている。


 王国で最高の召喚士、召喚した魔獣を魔法で拘束する使役士も軍最高の呼び声、さらには万が一拘束できなかった時に備えて控えている戦士と魔導士も、本来なら砦にいるべき一騎当千の方々だ。

 だがそれも当然だ。姫様がここにいるのだから。姫様こそがこの国の最後の希望なのだ。


 皆顔色が悪い。そして沈痛の面持ちだ。私もそうだろう。だが姫様は紙のような顔色だが表情は穏やかで、むしろ微笑を浮かべていると言ってもいいぐらいだ。お覚悟を決められているのだろうか、その表情を見ているだけでこちらが泣きたくなってしまう。私があんな予言をしてしまったばっかりに!!


 だがもう王国を救う手立てはこれしかない。異世界から強大な武威を持つ魔獣を召喚し、あの欲に狂った魔獣騎士と戦わせる。武技、魔法両方で、人間の限界を軽く超えるほどの圧倒的な個の力ですべてをねじ伏せる敵に勝つには、最低限、それを上回る破壊力をもつ個体を正面からぶつけ、それを後方から支援するという戦法、それも彼我の距離を考えれば付き従う魔導士や使役士は捨て身に近いが、今できる戦いで勝利の可能性があるのがこのやり方しかなかった。


 だから魔獣を召喚し兵器として使う。姫様の命とひきかえに。


 召喚士が魔法陣に魔力を込める。通常よりも緻密で複雑な呪文を丁寧に詠唱し、異界との接続をより強固にする。魔法陣が放つ光が少しずつ強くなり、召喚の瞬間が近づいていることに見守る者たちの緊張も高まる。


 失敗は許されない。それは今ここに集う人々全員の思いだ。〈召喚〉、〈使役〉、そして戦闘、すべてうまくいかなければ姫様の命が無駄に散ることになる。確かに予言は〈国難を払う〉と出たのだから、予言が正しければうまくいくはずだ。だが予言の解釈が正しいのか、そもそも予言が的中するのかは、誰にもわからない。ただ現在の状況が、予言の裏付けをしてしまっている。ほんとうに、なぜ自分があのとき、あれほど具体的な予言を得たのか、自分を呪ってしまう。


 魔法陣の上に光の粒が浮かび、どんどん増えてゆく、そして何物かの形に収束し、輪郭を見せ始める。召喚は何が出るかは選べない。文字通り運任せだ。魔獣の強さは概ね込める魔力に比例するけれども例外、つまり失敗もある。どうかあの禍々しい巨人を踏み潰すような巨獣を!


 ……輪郭の大きさはそれほどでもない。人間よりは明らかに大きいものの、平べったく広がり、見上げるほどではない。どうやら私の願いは叶わなかったようだ。なおも光は濃く集まり続け、形が見えてくる、ていうか、え?ひと?なんか手足を投げ出して寝てる人にしか見えない!そんな〈召喚〉聞いたことがないけど?!埒外な大きさの人間?そんな、え?〈召喚〉って、知恵ある生き物は呼び出せないはずでは?


 だが大きさと形状はともかく、構成はどう見ても人間のそれだ。やたらと巨大で膨れあがった胴体、それに繋がるこれまたぶっとい手足、頭も大きいが、胴体との比率でいうと普通の人間と大差ないくらいか。そして光が急速に輝きを失い始め、魔獣の色合いが見えてくる。肌の色はやや黄色味が強く、体毛はあまりない。頭髪はあるようだが短い。……服を着ている?胴体を隠す程度の簡素なものだが裸ではない。やはりレベルはどうあれ、知力を持っているとしか思えない。


 しかし顔が醜い。どうやらほんとうに寝ているところを召喚されたようで、目は閉じられているが、ちょっと人間離れしている。顔のパーツ自体は人間と同じ場所にあり、それが却って人外っぽい。そう、あれではまるで……


 って、そんなことはどうでもいい!!〈召喚〉は成功したのだ。次は〈使役〉だ。そうしなければ戦いに使えない。そして、今のところ展開自体は予想どおりだ。ということは、姫様の犠牲が必要な可能性が高まってしまった。あんな、伝説の 豚の魔物(イバーブメーラ)のような獣のために!!

生まれて初めて小説というものを書き始めました。

プロットが脳内にしかない…

ちゃんと完結できるようにがんばります。

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