1/2
-1-
* 沈黙の森-1-
作:朝野 貴仁
森の木々の下では、月灯りも…星の煌めきも、届かない。
動物達の囁きも…木々のざわめきも聞こえない…森は、闇と沈黙に、名を変えた。
その闇の中...わずかな光りが囁いていた。そこに彼女はいる。
彼女の手から、かすかな光りの粒達がこぼれていた。
光りは鋭く、自分の存在を訴えていたが、闇と沈黙を変えるには...あまりに小さく、
あまりに弱かった。そんな光りの粒達は、大地に抱かれ眠りにつく。
光りが消えると、ふたたび全てが、闇に染った。
何も聞こえない。何も見えない。何も感じない...
闇と沈黙は、全ての存在を、否定し続けていた。