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隣の幼なじみがまた「ステータスオープン!」と叫んでる 勝ちヒロインの定義  作者: タカハシあん


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31 長いものには巻かれろ

 夕食もなぜかお嬢様と一緒となった。


 食卓にはお嬢様、イルア、ラミニエラ、そして、わたしだ。


 リガさんとマールさんは馬車の見張りがあると同席せず、ダリオ様はラミニエラの護衛。侍女さんは主人と同席するなど不遜。料理人のルイさんは給仕に当たっている。いや、そこはわたしもじゃん! と思ったけど、ルイさんは料理と給仕の玄人。しかもイルアの話では戦闘もできるんじゃないかと言っていた。


 いやそれ何者? と口から出そうになったけど、知らなくていい真実は知らないままのほうが幸せと、十六年の人生で学んだ。口にしなければなかったまま。無理矢理流しておくほう幸せなのよ。


「いつも一人での食事だったから、皆さんと一緒に食べられて嬉しいわ」


 かなり高位の貴族でしょうに、気さくに接してくるお嬢様だわ。


「わたしどもは、礼儀も知らない庶民。無礼がありましたらご容赦くださいませ」


 お嬢様の相手はイルアとラミニエラに任せる。


 イルアは冒険者ながら品がよく、食べるのも綺麗だ。貴族の食卓でもそれなりにできる。コミュニケーション能力も高いしね。


 ラミニエラも教会で礼儀作法を学んでいるらしく、貴族と食卓を一緒にしたこともあるそうだから任せても問題ないでしょう。


 けど、お嬢様はわたしに目を向けてくる。


 なんとかわたしに話しかけようとしているみたいだけど、イルアが守ってくれてるので今のところは我関せずで食事をできているわ。


 しかし、お嬢様も負けてはいない。イルアの防御の隙をつこうと話題を次々と変えてきている。


 ……このお嬢様、下々のことまで知っているとか何者なのかしら……?


「シスター。あとでお祈りをお手伝いしてくださるかしら?」


 イルアがダメだと悟るとシスターに攻撃を切り替えた。


 これは悪い流れになってるわね。


 ラミニエラは楚々とお嬢様の相手をしているけど、コミュニケーション能力ははそれほどなく、知識も教会関係しかない。世間の話にはまったくついていけず、教会関係以外はイルアに任せている。


 お嬢様は話題を振りながら相手を探っている。わたしたちの為人を探っているんだと思う。


 真意はわからないけど、おそらくお嬢様の性格、いや、必要から備わった処世術、かな? そうしないといけないから備わった能力でしょう。


「ミリアの髪はとっても綺麗ね。なにか秘密があるのかしら?」


 話題はいつの間にか髪のことに移っていた。


 ……雑談なのに、話の持っていき方が妙よね……。


「イルアが作ってくれは薬液のお陰です」


 にっこり笑い、こちらに振ってきた話題をイルアへと放り投げた。


「いろいろな草や花、油を混ぜて作ったものです。オレはシャンプーと呼んでます」


 すぐにイルアは受け取ってくれ、話題を自分に取り戻してくれた。


「まあ、そうなの。イルアさんは多才ですのね」


「必要に迫られて作っただけです。本当はもっと質のよいものを作りたいんですがね」


「とてもよいものと思うのですけれど、ミリアさんの洗い方がよいのかしら?」


 このお嬢様も懲りないわね。どんだけわたしに話を振りたいのよ? わたしは、イルアたちのオマケみたいなものなのに。


「それはありますね。ミリアは器用ですから」


「料理の腕といい、ミリアも多才なのね」


「とんでもございません」


 言葉少な目に肯定とも否定ともつかない返事をしておく。


「ふふ。ミリアは警戒心が強いのね」


「人付き合いが下手なだけです」


「ミリアは人付き合いが上手よ。羨ましいわ」


 伏兵は身内にいた! ってことは最初から知っているわ。ラミニエラに援護しろと言うほうが間違っているもの。


「恐れ入ります」


 肯定も反論せず、ただ、ラミニエラより下を強調しておく。まあ、無駄だとは思うけど。


「お嬢様。そろそろお休みの用意を致しましょう」


 旅は体力勝負。ましてや旅慣れてない者はよく眠っておかないと馬車の揺れに勝てないわ。


「あら、もうそんな時間なのね。おしゃべりに夢中になりすぎたわ」


「では、オレたちも休むとしようか」


 わたしは明日の用意をしないと──。


「ミリアさん。お手伝いお願いできますな?」


 嫌です! と笑顔で返せたらどんなに気持ちいいだろうか。平民に拒否権はなし。


「はい。わかりました」


 と言うしかない。


「ルイさん。明日の下準備をお願いしてもよいでしょうか?」


 了承するんだから明日の用意をお願いしても罰は当たらないはずだわ。


「ルイ。お願いね」


「はい。お任せください」


 これが宮仕え、って言うものなのね。わたしは一生関わりたくないものだわ。


「シスターもお願いします」


 援護はできなくても囮には使える。しっかりわたしのためにがんばってもらいましょう。


 悪辣と言いたいなら好きなだけどうぞ。そんな暴言に負けてたら町では暮らせない。強かに、図太く、賢くないとね。


「わたしも、ですか?」


「お祈りをお願いされてたでしょう」


「あ、そうでしたね」


 信仰心はときには面倒だけど、場合によっては使い勝手がいいものなのよね。


「タリオ様。よろしくお願いします」


 手伝う側がお願いしますも変だけど、これが身分と言うもの。長いものには巻かれろ、よ。

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