表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

風の祝福

「そこまでにせぃ…」

重々しい声で話しかけたのはゴーレムのような存在だ。


「ノーム…」

サラマンダーが睨む。


「やめぃサラマンダー!これ以上はワシも手を出すことになるぞ?」

地面が揺れる…。


「ち…シラケちまったぜ…」

炎が球体を作り出しサラマンダーは消える。

ウィンディーネも水に溶けて消えていく。


「ごめん…なさい。ノーム…」

シルフは悲しそうに頭を下げる。


「ふぅ…気に病むな。

我々精霊とて個があり、考えることは違う。」

ノームもガッカリした表情を見せる。


「して…お主は転生者じゃな…誰の差し金でここへ来た?」

ノームはシルフを見ながら訪ねてくる。


「…。コノハナサクヤという人が僕をここへ送ってくれました。」

情報をどこまで言っていいのか逡巡しながらも答える。


「コノハナサクヤか…あちらの世界にも災いが起こっているのか?」

ノームは厳しい顔でナギを見据える。


「はい、詳しくは知らないのですが…」

と言いかけたところで、ノームがゴンッ!!っと足をたてる。


「おい若造…嘘をつくなよ?」

ギロンっと鋭い眼で睨まれる…。

よく見ると瞳に魔法陣が映りこんでいる…。


「この眼は"真実の目"という…ワシの前で嘘は通じぬ…偽りは全て我が目で暴かれる…。」

なるほど…とナギは思う。

試されているのか…もしくわすべてを…ナギは決意を固める。


「僕は……。」

異世界転生のことや見てきたこと、やってきたことを赤裸々に話す。


1時間は話しただろうか。

シルフもノームも黙って聞き続ける。



「そうか……。してナギよ。

お前は何を求める?お前の力はまだ発展途上…どうしたい?」

ノームは真実の目をナギに向ける。


「できるなら…シルフもノームも…4大精霊の力を借りられたら…

なんて思ってる。」

苦笑しながらナギは言う。


「ふぅん…我々は個人に力を貸すことを良しとせぬ。

間違った使い方をされれば、我々でも手が終えぬ可能性もある…。

だが…1つの精霊が人に…個々人に力を貸すことは稀にある…」

ノームはシルフを見ながら話す。

シルフはニコッと可愛らしい顔で微笑む。


「じゃぁ…力を??」

コクリと頷き、風が強く吹く。

「シルフ!?」

シルフの身体が粉々になってしまった。



「私は…ここ…」

頭の中?身体から??

どこからかシルフの声が聞こえる。


「ナギよ…それは"霊纏状態"(レイテン)じゃ。

精霊の衣を纏っているようなもんじゃ」


「そう…なんだ…って、これ!?」

マナの量が尋常じゃない…というか周りのマナを吸い取っている?!


「ナギ…それ…勘違い。吸収してるわけじゃない。」

落ち着いた口調でシルフは語る。

「これは隷属…私の持つ風や自然といった存在が…私に力をくれる。私たちは私たちを支える存在によって成り立っているの…」

「つまり…この霊纏状態っていうのは、マナが回復し続けるってこと?」

「ん~。少し違う。例えばウィンディーネなら水のある場所でより力を得られる。水が全くない砂漠地帯ではウィンディーネは存在を保てない…。」

「なるほど…でもシルフやノームはそう言ったものに縛られなそうだけど??」

「そんなことないよ…私は人や悪魔が何らかの事象で汚染された場所では力は出ない…ノームも縛りは受けている…」

そうなのか…どのくらい力が弱まるかとかは実際見てみないとわからないところだな…。



「さて…ワシはいく…」

ゴロゴロと森の中へノームは消えていった。



「ねぇシルフ…君はこれからどうするつもりなの?」

「これからナギと一緒にいるつもり…ナギ…気に入った」

気に入ったから付いてきてくれるのか…滅茶苦茶嬉しいけどなんか複雑…。



森から家に戻るともうすでに夕暮れ時だった。

今日はナギがご飯当番である。


「よし!美味しいもの期待しててよ~」

「「は~~い」」

仲良さげに二人の返事が聞こえてくる。


「…何作るの??」

「今日は…じゃじゃ~~~~ん!!肉じゃが!!!」

「にく…じゃが…??」

シルフが可愛く首を傾げたのが目に浮かぶ。


「ふっふっふ…この世界にも醤油に近いものとか色々あるからね!!」

ギラギラとした目でナギが話す。




とてもいい香りが漂い、アーバレストとミーナは匂いに釣られてキッチンまでやってくる。


「あら♪ナギ、今日は何を作っているのかしら?私が味を確認してあげるわ?」

ニコニコしながらミーナが真横へ寄ってくる。



「あ~~♪」

ミーナが口を開けて…もう可愛すぎんだろ!!!


「じゃぁ…ふぅふぅ…あ~~ん」

ナギは顔を真っ赤にしながらミーナの口に肉じゃがを入れる。


「ん~~~~♪ナギは将来お店を開くべきよ!!!

この街最大の料理店を出すべきよ!!!」

ミーナは目を閉じ両手を頬に当てて妄想している。


「そんなに美味しいなら早く食べたいな!」

アーバレストはすでに着席し、姿勢よく待っている…。


コンコン…。

ドアがノックされる。

「夕飯時に誰だ?」

アーバレストがドアを開けると明らかに見たことがある少女が立っている…。


「こんばんわ…私シルフィと言います。ナギくんとは仲良くさせていただいてます。

ナギくんからご飯に誘われていたので来ました。」

シルフはあっさり嘘をつき家の中に入ってくる。

こいつ…飯食いたいがためにそこまでするのか…精霊だろ。


「そうだったのか、ナギ、そういうことは早く言っておかなきゃダメじゃないか。

まだお皿も準備していないし…。」

アーバレストはシルフィにお皿など準備する。

「ありがと。」

シルフィは早く飯を持ってこいと言わんばかりにフォークを握りしめている。


「はい…一杯だけだぞ」

そう言いながらナギはシルフィに肉じゃがを配膳する。


「うん…美味い。これなら食材も喜ぶ。」

ニッコリと微笑む顔は凄く可愛らしい。


「あらあら…ホの字なのかしら♪」

ミーナは微笑む。

「いやいや、ホの字とか古いから…」

頬を染めながらナギが言う。



そんなこんなで仲良く食事を取り、シルフィは帰るといった。

「ナギ、送って行ってあげなさい。」

アーバレストに言われて一緒に外に出る。外はもう真っ暗だ。

「じゃぁ、シルフィちゃん、気をつけて帰るのよ」

ミーナが手を振って送り出す。

「うん、また…くる」

シルフィも微笑みながら手を振り返した。



「二人ともいい人…ナギの行いがいいから…」

シルフィは少し行った森の手前で話し始める。

「ナギ…悪魔たちの動きは活発化してる…。

私は戦闘向きじゃない…風は元々人々を祝福し、見守る力。

ナギがやろうとしていることに、私はとても非力…。」

シルフィは真剣な面持ちで話しかけてきた。


「そんなことないよ。

風の魔法を覚えていって分かったけど、風は色々な力の基礎になれる。

風は火や水を運ぶこともできるし、雷だって起こすことができる。

素晴らしい力だよ♪」

ナギが笑顔で話すとシルフィはニッコリと笑い姿を消した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ