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4大精霊

悪魔騒動から一週間が経過した。

魔法学院も2日間は休学となり、アーバレストとナギは身体を休めた。


ナギは悪魔と化したガラエルから受けた傷を、

理事長の紹介で悪魔の傷に特化した人物が学院を訪れていた。


名をティファ・リリーア。

紫のロン毛で瞳は蒼、眼鏡をおかけた綺麗なお姉さんだ。


「ナギくんだね?傷を見せてくれるかな?」

ティファに言われ服を捲り上げる。


「ん~…特に毒気はないね、まだ若いし、このくらいの傷なら傷跡も残らなそうだね」

ニコっと笑顔で言われて赤面してしまうナギ。

う…美しい…。


アーバレストは普段通りミーナの回復を受け元気にしている。




*****封鎖された競技場*****

影が蠢きそこからドロドロとしたモノが姿を成形していく。

「マッタク…ツカいものにならんな…。」

成形し終わると、1人の男性の姿へと変わる。

瞳は赤黒く、口の中には牙が見える。


「メルギス…失態だな。」

メルギスと呼ばれる男に神官の服装をした老婆が現れる。


「あぁ、ファーファか…そちらは上手く行っているのか?」

メルギスの問いにファーファと言われる老婆は無表情で答える。

「お前のように遊んではいない…目的を忘れるでないぞ?」

ファーファが脅すように言い放つ。

「えぇ、わかっていますとも。我々の宿願のために。

「わかっておるなら良い…して。メルギス。

そろそろバーンズ(理事長)を消す頃合いのはずだが…?

悪魔対峙を姿を見るに随分と元気そうだったぞ?」

「あぁ…あの方でしたら…。」

ゴボゴボと影が蠢き形を作る。

「んあ?!」

ファーファが驚く。

「影から出てきたのは紛れもなくバーンズである。

「なぜじゃ!?まだ人間だったはず!?」

ファーファは驚きを隠せない。

「あぁ、これはあの悪魔モドキを倒して浮かれていた夜に仕留めたのですよ、

愚かにも無駄に強大な魔法を使ってくれたおかげで殺すのは容易かった。」

メルギスはバーンズの影をしまう。


「ふ…さすが天界から摘まみ出された堕天使と言ったところか」

馬鹿にして挑発するように言うファーファをメルギスは相手にもしない。

「さて…私にはまだまだやることがあります、いやはや、何か面白いことが起きそうで楽しみですよ」

メルギスは邪悪な笑みをこぼす。


「ふん…貴様はいつか裏切るうもりなのだろう?わかっておるぞ…。」

「ほぅ…なにを根拠にそんなことを?私はサタン復活を心より願っておりますよ?」

「この魔眼で見抜けぬ未来などない…。」

初めて見開く老婆の目には魔法陣のようなものが映し出されている。

「おやおや…こんなところで開眼するものではありませんよ?」

「ふ…人間に見せているわけでも、ましてや天界の連中に…ゴガアア!!!」

ファーファの両目を一瞬にして千切りだし丸呑みにするメルギス。


「ん~♪とても良い魔力だ。これが"審判の瞳"か。」

メルギスの瞳には"審判の瞳"と言われるモノが発動している。


「き…貴様ぁぁぁぁぁぁあああ!なぜその瞳を…ぐぅ!?」

「元々は私達は瞳だよ…持ち主の場所に帰っただけさ…」

ファーファは対抗しようとするも身体が弾け飛ぶ。



「あなたの最期には丁度良かったでしょう?老いぼれ腐ったモノを華やかに彩ったんだ…。」

そういってメルギスは影の中に消えてゆく。







ナギはアーバレストの家から500mほどいった森林に入る。

ここの木々はとても美しい…コノハナサクヤと出会った光景を思い出す…。


花や木々、水の流れ…心と体の全てで自然を感じることができたことを思い出す。

ここもそれに近い。

木漏れ日の温かさ…風の音、草花、木が揺れる音…自然と一体となるナギ。

あまりの気持ちよさに途中で寝てしまう…。


「ぁぎ………ナギ??」

聞き覚えのある声にナギは夢の中で目を覚ます。

「?!  サクヤ!!」

そこにいたのは軽やかな恰好をしたコノハナサクヤだった。

「サクヤ!!君はあのとき…!!」

ナギの話を、指を口元にやって遮る。

「あまり時間がないわ…ナギ…」

優しい声だ…音色に近く感じて心地いい…。

「ナギ…。今、悪魔たちは何らかの計画に沿って行動しているわ…。」

「計画??一体どんな…?」

「わからない…でも嫌な予感がする…。

ナギ…今、あなたの近くにはシルフがいるわ…

ふふ、さすが私の見込んだ人…自然に愛されているわ」

笑顔で話すサクヤの声が、身体の中まで響き渡る。


「シルフはこの世界で風や空気…流れを司る精霊。仲良くなっておいて損はないよ♪

それに彼女は…きっと…あなたの助けとなってくれるわ。」

「シルフ…精霊? ミーナから聞いたことがある、あの四大精霊か?!」

「シルフは昔から人を助けてきた…でも中々報われない可哀そうな精霊よ。

精霊にしては珍しく人懐っこいの…仲良くしてあげてね…」


そうしてサクヤの声は遠くなっていく。

「転生者として見つかってはだめ…だよ…」

サクヤの声が完全に聞こえなくなる。


ハッと目が覚めると、涙が零れていることに気付く…。

「あぁ…僕は…」

ナギの涙を拭きとるように風が流れる。


ザァァァァア、と風が流れる。

優しく頬を撫でるように…優しく頭を撫でるように…。


「シルフなのかい?」

ナギの周りに吹いていた風はピタっと止まる。


「シルフ…なんだね?お願いがあるんだ…一緒に…僕と一緒に来て、色んな人たちと触れ合わないかい?

ナギの予想外の言葉に風はグルグルと螺旋を描く。

「僕の目線で、一緒に人を見てみないかい?」

風がザァザァと音を立てる。

「君はこの世界をよく知っているよね?僕はこの世界を全然知らない!教えてほしいんだ!!」

その時、風が大きく波打つのを感じた。


キィィィイイイイイン!!

「う!!?」

左目が…くそ…どうなってるんだ…!!?」

左目が熱い…焼け落ちそうだ…。

その熱が全身へ回る。


水魔法と風魔法を混ぜて自分の身体の熱を奪う…






しばらく経って湖に出た…異常にマナを消耗し、全身がだるい…。

湖で顔を洗いさっぱりした…???

湖がなんか…え??


湖の中から女性のような人影が歩いてくる…。

歩いてくるといっても、湖の水中だ…どうなってるんだ…。


ゴツ…ゴツ……と、後ろから物音がする。

振り返ると…

「ご…ゴーレム?!」


ジャバァァアア…と湖から音を立てて出てくる…女性。

そして頭上では灼熱の暑さを生み出す太陽のような球体が現れる…。


「え?! なに?! 僕なんかした!?」

三方向から迫るモノに対して、ナギはなぜか敵対する気は起きなかった。


すると、

ゴオオオォという強い風が吹き荒れ、3つの存在は一歩引く。



吹き荒れた風が森の中へ勢いよく流れ込み、そこから一人の少女が姿を現す。

「…。みんな…この人は…転生者…。」

ボソボソと話しているが、完全にアウトな言葉が飛び出している。


「ちょ!?転生者って!?」

ナギは絶叫する。

「ナギ…ちょっと黙って。」

風で口が強制的に閉じられる。

「ん?! んんん!??!」



「みんな…このままじゃ…私たちも…飲み込まれる…」

先ほどまで音を立てていた3つの存在は静かになる。

湖の中にいる存在が姿を現す。


下半身と髪の毛は常に水が流れ続けている。

「ウィンディーネ…お願い…。」

「あんたも懲りないね?」

ウィンディーネがイライラしながら話す。

「あんたは毎回利用されただけじゃないか…人間にそこまでする価値はない…

このまま滅ぼうと私たちは存在し続ける…」

猫のような目になり、凄まじい殺気を感じる…。


「そんなことない!人には未来を…?!」

シルフの目の前に火球が横切り、迂回して炎の球体に飲み込まれる。


炎の球体が変化し、1人の少年が姿を現す。

身体全体が灼熱の炎で包まれ、少年の周りは蜃気楼のようになっている。

「おいシルフ…少し…黙れよ。」


「…サラマンダー。」

サラマンダーと呼ばれる少年もまた、シルフに強い敵意を燃やしている。



一方、ゴーレムのような存在は、静かにこの場を見守っているように感じる。


ウィンディーネとサラマンダーがシルフ目掛けて一撃を放つ。


まずい!?

ナギはシルフの拘束を解き、シルフの前に割って入る。


両手を双方に向け暴風雨を両手から打ち出し続ける。


ウィンディーネとサラマンダーは平気な顔をしている。

一方のナギはこのままでは埒が明かないことを悟り、空間認知能力を高める…アーバレストととの一戦で使った能力を発揮する。

2つの存在の距離を把握し、二人のマナを掌握……。

マナはもはや図り切れない…


スッ…

ナギはゆっくりと目を閉じ集中する。

両手には暴風雨を纏い続け、ギリギリのラインで止める。

そして…転生者であるからこそ知っている知識で対抗する。


「あぁ??」

サラマンダーが即座に周囲の違和感に気付く…。

でももうすでに遅い!君のその炎を使えば…!


パッと目を開け、シルフを抱きかかえ風を強引に身体へぶつけて森の中へ逃げ込む。

ウィンディーネとサラマンダーの中心でバックドラフト現象を巻き起こす。

土の壁がすぐに周囲を取囲み、被害を最低限に止めている。



2つの存在の場所が爆散し一気に収束する。


両者無傷で同じ場所に立っている。

二人の目はナギとシルフに向けられていたが。


ゴロゴロと大きな岩が転がって来た。


「そこまでにせぃ…。」

重々しい言葉が岩から聞こえ、それに視線が集まった。

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