始まりの異世界転生
続きを読んでくれてありがとうございます!!
「お前…猫田か?」
聞き覚えのある声に振り返れば、そこには一緒に働いていたおやっさんの姿が。
「お…おやっさん!!!」
目から涙が出てしまった…情けないが、彼女のことを思ったあとに出会えてしまった以上、もう涙は止まらない。
「おやっさん!!一体…一体何があったんですか!!」
涙ながらに訴えかける。
「わりいな…俺の不注意だったんだ…」
おやっさんは悲しそうに俺を見る。
「コーヒーを沸かそうと思ってよ、ガスコンロを出したんだが、こいつが調子悪くってな。全然火がつかねぇもんだから、ガス捻りっぱなしでライター持ってきたんだがな…。急に携帯が発熱し始めたもんだからポケットから出したんだよ…。そしたら白煙が出て、次の瞬間には…。」
おやっさんも涙も流していた。
おやっさんには4人の家族がいて、一番上の娘さんがもうすぐ結婚だって…そう言ってた…。
おやっさんの話を思い出すと胸が痛いくらいに泣けてくる…。
「なぁ…猫田くん。言いづらいことだが、彼をよく見るんだ」
あすかに言われおやっさんを見ると、足が消えかかっていた。
「ど…どういうことだ!?なんで…どうして…!?」
戸惑いを隠せない俺に、おやっさんは優しく笑いかけた。
「どうもな…さっき説明されたんだが…俺は…すぐに消えちまうんだとよ」
おやっさんはどうしようもないと言わんだかりの顔をする。
「どういうことなんだよ!!みんな階段を登ってくってッ!!!」
猫田がいうよりも先にあすかは指を指す。
よく見ると、階段を登っていくのは20代くらいまでの人ばかりのように感じる…。
「輪廻転生…死んであの世に還った魂は、この世に何度も生まれ変わってくる…。ただね…それは平等じゃないんだよ…いや、今は特にというべきかな」
あすかは目を細めて言う。
「今の君がいた世界は、あまりにも死にすぎているんだよ…、輪廻転生はなにも人が人に還ると決まっているわけではないからね…それにしても…これは酷い状況なんだよ。」
あすかの怒りが目で見てとれる。
「さっきも言ったけど、この世界は今、赤子の玩具同然に遊ばれているんだ。悪魔たちは自分のしたいように遊びまわっている…悲惨なほどに‥ね。‥‥‥‥!?」
あすかはおやっさんを見て、深く頭を下げた。
おやっさんはにっこり笑っている。
ま、まさか!!
「お、おやっさん!?あすか!!なんとかしろよ!できるんだろ!お前なら!!!神様なんだろ!!」
必死にあすかに願うが聞いてはもらえない。
猫田がぎゃーぎゃー言っているうちに…おやっさんは、感謝の言葉だけを残して消えていった。
それから何時間経っただろうか…泣いて喚いて色々なものを殴って投げて…そんな中でも消えていく人もいれば笑顔で階段を登っていく子供もいる…。
「落ち着いたかな…猫田くん」
あすかが猫田の隣に腰を下ろす。
「なんか…つかれちまったよ…でも…ずっと胸の中にモヤモヤがあって、それが…なんとも言えない…」
猫田はモヤモヤしているよくわからないものがすごく気持ち悪く感じた。
「それはね、きっと…君にやれることがって、それをやる覚悟をしていないからだよ」
あすかは真面目な顔で諭す。
「覚悟?」
猫田は疑問しかない…けど、なんかそんな気もしてきた
「私が君に願うことは、転生し、あの悪魔どもの壊したバランスを取り戻すことだ」
きっぱりと、俺の目を見て強くいった。
「俺が…悪魔を??」
「そう…君はたぶん…どこか別の世界では力を持った存在だったと思うんだ。すべての生物、存在するものにはね、"マナ"という根源があるんだ。君のマナは、まだ眠っているようだけど大きい…間違いなく…ほかの世界では英雄クラスのそれが君にはある。」
あすかは言葉の最後には笑顔になっていた。
「俺に…そんな力が?そんなよくあるラノベ的な展開が…俺にあるのか?」
猫田は当たり前ながら疑問しかない
「うん!それは僕が保証するよ…この…ぼくが」
言葉の最後にバサッと大きな翼を見せた
「…!?な…き…きれいだ」
翼はただの羽じゃない…優しいとか嬉しいとか…そんな幸せを感じさせてくれるような…そんな翼だ。
「この僕、コノハナサクヤが言うんだからね!」
あすかもとい、コノハナサクヤは大きな翼を静かに動かしながら笑顔で変身を遂げた。
さっきまでの服装とは一変、天使という姿そのものだ…
それ以上に…女!?
「でも、なんで"あすか"なんて名乗ったんだ?」
猫田はなぜ名前を偽っていたのかがわからない。
「ふふ~ん、それはね…て☆き☆と☆う☆だ☆よ☆」
中性的な顔立ちから女の子になったからって…くそ、可愛いじゃないか。
「えぇ!なになに?僕のこと可愛いな~お嫁さんにしたいな~結婚したいな~とか思った????」
クスクス笑いながらそんな冗談をぶつけてくる。
「んなわけないだろ!!ったく…」
俺も少し笑いながら、ちょっぴり恥ずかしがりながら軽く返す。
「えへへ…これで緊張はほぐれたよね?僕のことはサクヤでいいよ♪」
可愛い笑顔で喋りかけられてドキっとする。
「ってか、だからなんで最初からサクヤって名乗らないんだよ!」
猫田はなんとなく気になって仕方ないから聞いてみる。
「深い意味はないんだけど…そうだな~…ちょっとマナが特殊だったから、少し警戒してたって感じかな?もしかしたら、実は悪魔の使いで私を消しに来るかもしれないでしょ?」
笑いながらとんでもないことを言われる…。
いやいや…笑えねぇよ…。
「いやいや、正直特殊と言われるのも気になるが、サクヤを…消しにくるとかってどうゆうことだよ」
気になるから質問するしかない…
「だって僕がいなくなったらこの階段を管理するモノがいなくなるからね…また"ここ"で遊ばれるわけにはいかないんだよ」
遠くを見ながら話すサクヤは寂しそうだった。そしてこの時、大事なことを聞き忘れてしまった。
"ここ"で遊ばれるわけにはいかない。
さっきからわけのわからない話が多くて聞きそびれる…
すぐにこの話を深堀しなかったことを後悔する。
「じゃ~そゆことで、異世界転生一名様!!しゅっぱ~~~~つ!!」
急にノリノリで変な文様を浮かびあげる。
「ちょ!!おい!!まだ話の途中だろ!!」
「ちょっと急ぎの用ができちゃったんだ~♪ここで大事なこと言うから、ぜ~~~~~ったいに忘れないでよ!!」
指をビシっと向けて笑顔で言ってくる。
1:転生者であることを悟られてはいけない!これは絶対だぞ~☆
2:小さい頃からマナを成長させること!継続は力なり、だぞ☆
3:向こうの世界にも悪魔はいる。それは人に化けていたりもする。気を付けて…最後まで…気を抜いちゃダメ…。
4:向こうの世界はよくある剣と魔法のファンタジー!マナの運用方法を磨くこと!
5:次に私と似た何かにあったなら…迷うことなく殺しなさい…
5つ目の約束に関しては…怖いほど真面目な顔をされた…。
可愛いはずの顔なのに…ゾッとした。
バシュッ…ドスッ!!
目の前で一閃…そして一突き…。
転生寸前に見た光景…サクヤの背中が…切られた…サクヤの腹部にドス黒い剣が刺さった…
「…どうか…彼を…お守りください…」
さあて!!
いよいよ次回は転生先ですよ~~~~!!