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☆死☆の運命星

3/16 全体の文書を整えました。内容は同じです。

俺が書き写した『☆死☆の運命星』をベアドとおっさんの3人でのぞく。


俺は大学の頃同人誌描いててね。

だいぶ漫画チックにはなったけど、なかなか特徴をとらえた絵が描けた思う。



俺が書き出した内容はこんな感じだ。


中央:ルジンカ・フラボワーノ 17歳 (黒服・オカッパ)→でっかい×印あり


上から時計周りで

①シェイラ・フラボワーノ 40歳 (黒髪のおばさん デブ)

②黒丸

③黒丸

④ロイル・ノヴァ・アルフェノール 17歳 (金髪イケメン)

⑤黒丸

⑥ネレッサ・アルフェノール 19歳 (金髪美女 巨乳)

⑦ゼルセース・クルクミー 49歳 (茶髪おやじ ムキムキ)

⑧リコピナ・クルクミー 16歳 (茶髪 美少女)


書き写しながら気づいたけど、これ日本語じゃないよな。

すげー普通に読めるし書けるけどな。


「これ何かわかります?この×印!めっちゃ気になるんですけど・・・」


死に顔を映すという不吉な鉢が描く×印。

絵のタイトルなんて『☆死☆の運命星』だし。

悪い想像しかできない。


2人は無言のままだ。


「俺は今、16歳なんでしょ?これ、17歳で死ぬってお告げじゃないよな?」


不安いっぱいの俺の言葉をベアドが肯定する。


「僕もそう思う。これは、ルジンカの死の未来を予知した図かもしれない」

「死の運命星って書いてあるからね・・・このルジンカちゃんの周りの人物が関係してるってことかな?そのままの意味でとらえるなら」


おっさんも同意した。


「俺の誕生日はいつなんだ?てか、今は何月何日?」


「ルジンカは1月1日生まれだ。今日は5月2日。他の人間の年齢も書いてあるから、それぞれの誕生日がわかれば17歳の何月かまで搾れるだろう」


こちらの世界では1年は360日。きっちり30日づつ12ヶ月に分かれているらしい。

今が5月なら、17歳の誕生日の1月1日まで約8ヶ月。

最低8ヶ月の命の保証しかないわけだ。

この絵を信じるならな。


「なんなんだよ!!ふざけんなよ!こいつら誰なんだよ!?」


始まったばかりのお嬢様ライフなのに、いきなりカウントダウンかよ!?


「落ち着け。順番に説明してやる」


ベアドは俺の図に書き込みをしていく。


①シェイラ・フラボワーノ 40歳 (黒髪のおばさん デブ)→ ルジンカの叔母

②黒丸

③黒丸

④ロイル・ノヴァ・アルフェノール 17歳 (金髪イケメン)→ 第2王子

⑤黒丸

⑥ネレッサ・アルフェノール 19歳 (金髪美女 巨乳)→ 王太子の婚約者

⑦ゼルセース・クルクミー 49歳 (茶髪おやじ ムキムキ)→ 治癒の一族のトップ 侯爵

⑧リコピナ・クルクミー 16歳 (茶髪 美少女)→ ゼルセースの娘(庶子)


「・・・まず、この名前の表記はおかしい。④のロイル様は第2王子。名前に“ノヴァ”がつくのは王太子と妃だけのはずなんだ。⑥のネレッサ嬢は今年の8月に第一王子で王太子のウェイド様と結婚する予定だ。現在はまだネレッサ・ビレンチス。結婚すれば王太子妃だから、“ネレッサ・ノヴァ・アルフェノール”となる。だが、“ノヴァ”が外れている」


「はあ・・・?」


ベアドはすらすら語るが、さっぱりわからない。

ロイル様って、俺をふった奴か?


「なんか問題あるのか?」


「単純にこれだけ見ると、ウェイド様とネレッサ嬢が結婚した後、なんらかの事情で弟のロイル様に王太子の称号が移ったことになる」


「王様が死んで、兄貴のウェイドさんとやらが継いだんじゃないのか?」


「もしウェイド様が王になっていたら、妻のネレッサ嬢は“ネレッサ・ノヴァ・アルフェノール・エラグリグナ”になる。国の名前を背負うんだ。だから、ウェイド様は王にはなっていない」


「名前長すぎだろ。じゃ、どうなったんだよ、ウェイド様は?」


「なんらかの事情で廃太子になったか、お亡くなりになったか・・・」


そこまではわからないと首を振るベアド。


「それが俺となんの関係があるんだよ?」


「わからないが・・・なんか関係あるから載ってるんだろ。でも、このメンバーも謎だな」


ベアドが再び考え込む。


「①のシェイラって俺の叔母さんなのか?」


俺の質問に今度はおっさんが答える。


「そうだよ。シェイラは私の妹なんだ。一応、この屋敷の東棟にいるんだけどね・・」


歯切れの悪い口調だ。

俺は思わずベアドを見る。

ついさっきまで東棟を案内してもらってたけど、叔母がいるなんて一言も言ってなかった。


ベアドは考え込んでいるのか、ふりなのか目を合わせない。


「色々あってねぇ。ルジンカちゃんと同じく記憶障害を起こしてるんだよ。事前に話をしてから会わせようと思ってたんだけど・・・」


初耳だった。

ベアドがさっさと東棟から出ようとしていたのは、このためだったのかもしれない。


「記憶障害ってどんな?」


「・・・まあ、この話は長くなるからまた改めて・・・」


あまり触れて欲しくないらしい。

まあ、今はいいか。

それどころじゃないし。



「この絵のお前の髪は正確か?」


ベアドが指を差しながら言う。


「ああ、うん。ちょっと省略してるけど」


「髪は本当にこの長さか?」


「そうだよ。ザンバラ。黒い服着てめっちゃ悲壮感ただよってたな」


「黒い服?」


「うん。真っ黒だ。胸くらいまでしかわからないけど、ダボダボでなんの飾りもない」


聞いた2人が息を飲む。


黒刑こっけいだ!それは重罪人の恰好だ」


「重罪人!?」


衝撃的なワードが出たな。


「黒刑は、国を揺るがすような犯罪を起こした者に課せられる極刑のことだ。黒い服を着せられるからそう呼ばれている。公開ムチ打ちの後、髪を切られて首を切り落とされる。本人だけでなく近しい親族も刑の対象だ」


「な、なんだよそれ!なんで俺がそんな目にあうんだよ!?」


「情報が少なすぎる・・・ただ、その場合は僕も父上も無事ではすまない・・・むしろ、ルジンカは巻き込まれる側なのかもしれない。取り調べや裁判もあるし、いきなり刑が執行されるわけじゃない。少なくともその数か月か半年前には捕まってるんじゃないか?」


ベアドが絵をじっと見て言った。


「はあ!?最短8ヶ月で17歳なんだろ?もし裁判に半年かかるとしたら、2か月後には捕まるのかよ!!」


俺は総毛立つ。


「巻き込まれるってことは、このおばさんが関係あるのか!?」


唯一名前が出ている親族だ。

かなり怪しい。


「シェイラはもう10年以上外には出ていないんだよ。記憶障害で、心は小さな女の子になってしまったんだ。大それたことができるとは思えない。絶対無理だ」


慌ててかばうおっさん。

しかし、なるほど。

シェイラさんもシャレにならない状態だったんだな。

別人になっちゃった俺とどっちがマシなのかは微妙なとこだが。


「シェイラさんはどんな服装だ?」


ベアドに問われ、改めて確認する。


「・・・この人もよく見たら同じ黒い服着てるっぽいな・・・俺より絵が小さいから完全に同じ服かは微妙だが・・・・髪は後ろで1本に結んでるよ」


「シェイラさんの髪が長いなら、ルジンカの刑の執行が先だったんだろう。状況にもよるけど、主犯の方が後回しになるということは通常ない」


「・・・・俺とそのシェイラさんには共通点があるよな・・」


2人とも禁術に手を染め、重い記憶障害を負っている。


「それがばれて捕まったとか?」


俺の推測をおっさんが否定する。


「どうかなぁ・・・魔法を使った証拠なんて残らないからね。ただ、この図には王族が3人も登場しているし、ロイル様が王太子になってるでしょ。これが外に漏れたら、国を揺るがす罪と言えるかもしれないけど・・・」


「な・・・!?」


言葉を失う俺。

なんつークソスキルなんだよ!

自分が死ぬ予知をしたせいで死ぬって、意味わかんないだろ!


「いや、でも私もベアドも口外するはずないし、それはないと思うよ」


おっさんが慌てて否定する。


「なんで、ウェイド様がいないんだろうな?婚約者も弟も載っているのに」


ベアドがつぶやく。

言われてみればそうかもな。


「・・・僕と父上もいないよな・・・」


親族も刑の対象なら、2人も当然含まれるべきだ。


ベアドは小さくうなりながら、指で3つある黒い丸の部分をなぞる。

俺もほぼ同時に思い当たった。


「なあ、この黒い丸の部分って、もしかして・・・!」


俺の問いに、ベアドが頷く。


「死の運命星だからな・・・ルジンカの死に関わる者が記載されると仮定して、お前が死ぬ時点でこの世にいない者は表示されないのかもしれない。この黒い丸が僕や父上だとしたら、なんらかの事情で先に死んでいる・・・」


俺よりも余命が短い可能性が浮上したベアド。表情は暗い。


「でも、黒丸は3個しかないそ?2つはお兄さん達だとして、3つ目はウェイド王子じゃなくて、俺のママのフーティーナさんなんじゃないか?」


「うーん・・・何年も別居しているしねぇ・・」


おっさんは渋い顔で首をひねる。


「でも、心が幼女になった叔母さんまで捕まってるんですよね?」


「3つ目の丸だけ離れているな。ロイル様とネレッサ嬢の間だ。位置的には、この丸はウェイド様を表しているような気がするが。フーティーナ様の分だとしたら、3つ一緒に描かれそうだ」


「・・・丸も別居してるんじゃないか?」


「やめてよ!ルジンカちゃん!」


俺の呟きに、おっさんが泣きそうな声を出す。




「クラウドさん、なんかやらかしてないですか?バレたら首が飛ぶようなこと」


少々の無礼は承知で聞く。


やっぱり、一番怪しいのはこのおっさんだろ。

侯爵様がなんか事を起こせば、方々への影響はでかそうだからな。

一緒に黒刑を受けるとしても、跡取りのベアド共々、俺より先のはずだ。


「パパだよ、パパ!そんな他人行儀な呼び方はダメだよ」


おっさんが空気を読まない要求をしてくる。


「じゃあ、パパ。正直に答えてくださーい」


「うーん、ここまで重い罪になるようなことはしてないよ。さすがにね」


「ちょっとはやってるんですか?」


「不正をしていない家なんてないよ。バレないようにやるのが私の仕事なの。どこもやってるんだから、やってないのと一緒だよ」


悪びれもなくケロッと言う。

ホントかよ!?


「そう思ってるのは自分だけってことないですか?他の人は実はちゃんとやってたりして」


「いや、いや。どこも一緒。上もその辺はわかってるよ。よほど悪質なことしてなければ調べられもしないし。叩いてホコリが出ないなら、貴族とは言えないからね」


大丈夫かよ、この国。


だが、横でベアドも小さく頷いている。

こいつも貴族の腐敗にしっかり染まってるんだな。


「じゃ、最後の⑦と⑧のクルクミー親子が何かするのか?・・・このリコピナって子かわいいなぁ」


俺はプロジェクターの方の絵にしばし見とれる。

リコピナは高級モンブランのクリームみたいな色の髪に、紫色のぱっちりとした目の可愛らしい美少女だ。

整った顔にはまだあどけなさが残っていて、ニッコリ笑った顔を思わず想像してしまうような、人懐っこそうな雰囲気だ。

無限美ちゃんには遠く及ばないが、充分かわいい。


「クルクミーは治癒の魔法を受けつく一族のトップだよ。うちとは事業の一部がかぶってて、良好な関係とは言い難いね」


治癒の魔法は、自身の生命力を使い、他者や自分を癒すものだという。

代償は内臓機能の低下。食べ物の栄養を吸収することができなくなり、魔法を使いすぎると栄養失調で死ぬ。

癒しに使う生命力は代償ではないが、栄養を吸収しにくくなれば回復も追いつかなくなるからな。


王家のバックアップの下、魔導草を用いた回復薬を生産しており、当人達が魔法を使うことはほぼ無いらしい。

この回復薬は高価だが効き目は抜群で、一族の権威を高めると同時に、収入源の1つになっているという。


一方、おっさんとベアドの父アントシア伯爵は、以前から新しい回復薬の生産に着手しており、すでに完成目前というところまで来ているらしい。


自快草じかいそうと呼ばれる魔草から作り出した新回復薬は、効力は治癒のものに及ばないものの、量産し、安価で販売できる見込みだという。


「この新薬の開発が、連中はいたく気に入らないみたいでね」


おっさんはやれやれ、とため息をつく。

まあ、おもしろくはないだろうな。

俺でもわかるよ。


水蛍石すいけいせきを発売したときも、なかなかの風当たりだったんだけどね」


もともとロウソクに代わる明かりとして、クルクミー侯爵達の作る星落ほしおとしなる植物の種が先に存在していたらしい。


この種は強い輝きを放つため、高値で取引されていたという。

枝から外すと光り始め、2日は光る。

ただし、一度光り始めると光りっぱなしで、温めれば消えるが二度と光らない。

温度管理が難しいうえにカビやすく、あっという間に安価で手軽な水蛍石に市場を奪われたそうだ。


クルクミー侯爵達からは、星落に続いて今度は回復薬かよ!と、かなり恨まれているらしい。


「いや、事業がかぶってるっていうか、かぶせに行ってるでしょ。パパ達が喧嘩売ってるようにしか見えないですけどね」


「たまたまなんだけどねぇ、本当に」


おっさんは首を振って続ける。


「治癒の回復薬頼みの状態はいいことばかりじゃないんだよ。他国に比べて医療の水準も低いし、王宮の地下の泉が枯れたらそれまでだからね。陛下のご理解もいただいているし」


医療レベル向上の支援活動もしてるんだよ、と、侯爵様らしい一面を見せたおっさん。

でも、それも治癒の連中からしたら面白くないだろ。絶対。


「父上とクルクミー侯爵は、フーティーナ様を含む数人の女性を巡って散々もめた犬猿の仲なんだ」


感心していた俺の耳がベアドの囁きを拾う。

納得の理由だな。

くだらねー。


ベアドの声が聞こえたのか、おっさんはそわそわしながら話を続ける。


「このリコピナって娘はゼルセース・・・クルクミー侯爵の庶子だよ。治癒は、とにかく厳

つい男ばっかりで、女性はめったに産まれないんだ。この娘の存在が最近になってわかって、150年ぶりの女の子とかで、クルクミーは大フィーバーなんだよ」


これまでロイル王子の婚約者の最有力候補はルジンカだった。

婚約が成立する前になんとか取って替わらせようと、慌てて同じクラスにねじ込んで来たらしい。


「本当に血の繋がった娘なんですか?」


「そこは怪しいね・・・でも治癒の血筋であることは確かだよ。入学の時に調べるからね」


ロイル王子をめぐる強力なライバルというのはこの娘のことだろう。

確かにすごくかわいいが・・・俺をふってまで選ぶほどか?


治癒の回復薬が国との共同事業だったなら、予知の新薬を認める一方で、クルクミー侯爵へのフォローも必要そうだ。

王族なら政略結婚は当然だからな。


「とにかく、クルクミーに恨まれているのは確かだね」


おっさんはそう言って締めくくる。





「結局、よくわからないな。そもそも、この鉢の予知って当たるのか?」


俺は根本的な疑問を持つ。


「うーん・・・この鉢は死に顔を映すだけのはずなんだよね。なんでこんな絵が出てきたのかね・・・」


おっさんが首をひねる。


「え?こういう仕様の鉢なんじゃないんですか!?」


「いやいや、聞いたことないよ。私、こんなの初めて」


「なんだそりゃ・・・」


こんなに真剣に話し合っちゃったけどさ、予知でもなんでもないんじゃないか?

俺は手を乗せている鉢をジッと見つめる。


「ルジンカ。どんな予知をしたか覚えていないと言ってたな?」


ベアドが問う。


「もしかしたら、ルジンカの予知の情報は、この鉢が吸収したのかもしれない。原因はわからないが、摂取したサキミールを嘔吐したり、血液が付着したりしたからな・・・もともといわく付きの鉢だったし、なんか力が混ざり合った結果じゃないか?」


サキミール自体に、過去の予知の人間達の血液が含まれているらしい。


「仮にそうだとしたら、この予知はルジンカの記憶が変わる前の未来だ。どこまで当たるかわからない」


予知した未来はいくらでも変わる。

記憶障害の影響や、予知を見たことによる行動の変化で。

ベアドはそう言っていた。


この予知の内容がどの時点の未来なのかは、大事なポイントだよな。

以前のルジンカと今の俺。

とる行動が同じになるはずもない。


でも、気になる点があるんだよな。


「この『☆死☆の運命星』ってさ、俺が死ぬ前に買って読もうとしてた本と題名がそっくりなんだよ。☆マークまで入ってるし。少なくとも、俺の記憶の影響を受けている情報に思えるんだが・・・」




押し黙る2人。



「・・・・・これ以上は考えてもわからないな。ルジンカの記憶がどんなものだろうと、変わらない未来というものも当然ある」


ベアドが言った。


少なすぎる情報であれこれ想像するのも限界がある。


続きは、この図の連中の誕生月を調べてから、ということで解散になった。


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