はじめてのおっぱい
俺は今、学校の医務室のベッドに横たわっている。
生まれて初めて卒倒を経験したからだ。
原因は他でも無い、アーニャちゃんの凶悪なおっぱいだよ。
なんてもの胸につけてるんだ、あの娘は。
昼食の後リコピナにを誘い、6人で午後の授業に参加した。
科目は『手芸』。
レース編みとか刺繍とかパッチワークとかだな。
2クラス分の女子が合同で校舎内にある大きなサロンに集まる。
ライバル2人が一緒にいる状況に、溢れんばかりの好奇心が向けられていた。
お友達になりましょう、なんて言ってもな?
記憶喪失の俺以外は色々わだかまりがある。
すぐに感情がついて来るかは別問題だ。
正直、あんまり会話も盛り上がらなかった。
ただ、自分を敵視する派閥が軟化したわけだからな。
リコピナは素直に安堵しているように見えたよ。
誘ってよかったんだと思いたいね。
待ちわびたマッサージタイムは授業の間の休み時間だった。
王子と俺の3Pはよろしくない、という話をリコピナに遠回しにすると、アーニャちゃんが俺の前に立った。
あの説明じゃ言われたリコピナは訳が分かんなかったと思うが、この際どうでもいい。
リコピナには、アーニャちゃんの目を盗んでそのうちマッサージを施すつもりだ。
真正面からは緊張しすぎるからな。
俺は高鳴る胸を押さえ、アーニャちゃんの背後に立った。
キュッとしまった腰に恐る恐る手を伸ばし、触れる。
コルセットで締め上げているので、感触は固い。
でも、温かい。
フワリといい匂いがした。
クリームや香水の香りなのか、アーニャちゃんの体臭なのか。
喘ぐように、その香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
両手をサイドに回し、脇の下に向かって、スーッとさすり上げる。
興奮で自分の呼吸が荒くなっているのに気づいた。
バクバクと心臓の音がうるさい。
手が脇に到達する寸前、大きく張り出した、アーニャちゃんの横乳が手のひらをかすめる。
「あぁ・・く、くすぐったいですわ」
アーニャちゃんの体がビクンと跳ねた。
脇のことか、乳のことはわからない。
その声に、俺の頭の中心がチリチリと焼けた。
「ごめんなさい。でも、これ必要なんです」
言い訳しながら、もう5回ほど繰り返す。
いきなりおっぱいを掴む勇気はないからな。
こうして、心のエンジンを温めるんだ。
くすぐったがりながら耐えるアーニャちゃん。
俺の呼吸は少女達やアーニャちゃんが心配するほど荒くなっていたが、不思議と全然苦しくなかった。
自覚できないくらい興奮してたらしいな。
両手を水平に広げてもらい、ほっそりとした指先を握る。
片手でその手を支え、もう一方の手で、指先から脇までソッと優しくさする。
「こ、これもくすぐったいですわ・・」
「ハアハア、水分を血管に流します・・ハアハア」
適当な説明をする。
何回か両腕に繰り返し、今度は肩甲骨に両手を当てる。
優しく押しながら、背中から脇に滑らせる。
いんちきマッサージのたびに、チラチラと大きな乳の一部が手のひらに当たる。
よし、勇気を出すんだ。
行こう!
「ルジンカさん、大丈夫ですか?もしかして、体調が悪いのではなくて?」
アーニャちゃんが心配して振り返る。
「大丈夫です。全然平気です」
声に感情を込める余裕もない。
期待に胸を焦がしながら、振るえる両手でアーニャちゃんの腹を押さえ、おっぱい目がけてさすり上げる。
ガシ!
俺は確かにつかんだのだ。
温かく、柔らかく、弾力がある、ズッシリしたそれを。
意識がなかったのは、ほんの数分だったらしい。
気付けば俺は床に倒れていた。
「大丈夫ですか?やっぱり具合が悪かったんですのね」
俺のそばにしゃがんだアーニャちゃんの言葉で、自分が卒倒したのだとわかった。
いやー、びっくりしたわ。
意識がなくなるって、本当に時間が飛ぶんだな。
コルセットのせいで卒倒する女生徒は多い。
周囲も本人も慣れている。
頭なんかを打っていない限り、部屋のソファで休む程度らしい。
が、アーニャちゃんは先生に断り、ふらつく俺を医務室へと連れて行った。
俺が靴下を履いてなかったからだそうだ。
部屋のソファで休めば、足が見えて気づく生徒がいるかもしれないという心遣いだった。
靴下履いてないのって、そんなにNGだったんだな。
俺が邪なことしか考えてない時も、俺の心配をしてくれていたわけだ。
今度は俺のおっぱいを揉ませてあげたい。
もちろん、お詫びにな。
医務室は消毒薬の匂いがした。
石の壁にはいくつもの水灯が光っている。
室内には初老の男性医師と、アラサーとおぼしき美人の看護師さん。
俺達の他に生徒はいない。
ベッドは4つあったが、きちんとシーツがかかっているのは2つだけだった。
あとは、必要に応じて用意するのかもな。
「あんまり顔色がよくないわ。貧血もあるのかもしれないわね。しばらくゆっくり寝ていなさい」
看護師さんはそう言って、俺をベッドに座らせた。
慣れた手つきで背中のボタンを外し、コルセットをゆるめてくれる。
この間、俺はほとんど放心状態だった。
生まれて初めて、自分以外のおっぱいに触ったからな。
それも、超巨乳に。
興奮と感動、そして、あまりにもあっという間に終わってしまったことへの喪失感。
頭の芯がボーっとしていた。
手のひらに残るおっぱいの感触や温度、重みをアーニャちゃんの匂いと共に反芻する。
なんで俺は卒倒なんてしちゃったんだ。
一番重要なタイミングで!
激しい後悔に襲われ、酸欠の頭をブンブン振った。
そんな俺の様子を見ていたアーニャちゃんの表情が曇る。
「ルジンカさん・・・私、なんだか心配ですわ。お胸のマッサージもそうですけど、靴下も脱いでしまわれるし、子どもの作り方とかも・・・・いつの間にお知りになったの?」
心配そうに問われる。
記憶喪失になったのに、以前より知識が増えてたら確かに変だよな。
「え?あの・・・この前、オレオンさんが食堂で仰ってたでしょ?卑猥なもののお話を。あれから気になって父に聞きましたの」
「そうですの・・・」
納得しつつも、アーニャちゃんは心配顔のままだ。
「記憶喪失になってからのルジンカさん、すごく危なっかしく見えて・・・なにかご無理をなさっているのではなくて?」
茶色の瞳で、じっと俺の顔をのぞき込む。
「そんな、無理なんてなにも・・」
「本当にロイル様と関係ありませんの?私・・・一言申し上げて参りましょうか?ロイル様に」
俺は慌てる。
マジで王子様は無罪だからね。
「い、いけませんわ!嫌われてしまいますわ!本当にロイル様は関係ないんですよ」
アーニャちゃんスゲーいい子なんだけどな。
ちょっと思い込み激しいとこあるよな。
「でも・・心配ですわ」
「心配ばかりかけてしまってごめんなさい・・でも、本当にちょっと具合が悪くなっただけですので。休めば大丈夫です・・・もしよろしければ、マッサージも、ぜひ日を改めて続きを・・・!」
あんな一瞬じゃ、全然納得できないからな。
触ったうちに入らねーよ。
「マッサージなんて気にしなくて大丈夫ですわ。困ったことがあったら、必ず相談して下さいね?」
アーニャちゃんが念を押す。
マッサージが最重要案件なんだがな。
「ええ。ありがとうございます」
と頷いた。
「フラボワーノさんはこちらで見ておくから大丈夫よ。あなたは授業に戻って」
看護師に促され、アーニャちゃんは授業に戻って行った。
「靴下は絶対にお履きになってね」と言い置いて。
アーニャちゃんが授業に戻ってすぐ、医務室の入口がザワザワと騒がしくなった。
複数の生徒がドカドカと入室してくる気配があり、土と雨と汗の匂いがブワッと流れ込んでくる。
「どうしました?怪我人?」
看護師さんの声がする。
「ロイル様が・・・多分、脳震盪です」
「たいしたことない・・もう大丈夫だ」
「頭は心配ですよ。ちゃんと診てもらわないと!」
「オレオンとまともに衝突したからな」
「本当に申し訳ございません・・」
「お前のせいじゃない。あれは私が悪い」
「とにかく、ここにかけて。付き添いはこんなにいらないから、他の人は授業に戻って」
「自分は付き添います」
「問題ない。オレオンも戻れ」
「いいえ。心配なので・・」
会話から察するに、ロイルが授業で怪我かなにかしたようだ。
医者や看護師が動きまわる気配がする。
「ずぶ濡れね。着替えはある?」
「更衣室に」
「自分がお持ちしましょう」
オレオンが出ていく音がする。
処置が終わり、オレオンが戻ってくると、着替えを済ませたロイルが隣のベッドに入る気配がする。
カーテンもあるし、距離もすごく近いわけじゃない。
でも、シカトするほど遠くもない。
これは、声をかけるべきなのかね?
怪我してるみたいだしな。
「もう、あと30分もないし、授業の終わりまで休んでいてください。君は授業に戻って」
オレオンに退出を促し、看護師さんが片づけのため離れていく。
「私は平気だ。お前ももう戻れ」
「はい・・では・・・」
ロイルにも戻るよう言われ、ぐずぐずしていたオレオンがカーテンの前を横切り、出口に向かう。
と、
「ん?なんだこれ?」
「どうした?」
急に立ち止まったオレオンに、ロイルが問う。
「いえ、何か落ちて・・・・・・・・・ん?・・・・・・・・こ、これは!!!」
「なんだ?」
ドスドスと音を立て、オレオンの足音が戻ってくる。
小さく息を飲む音が聞こえた。
「・・・・お前のか!?」
「そんなバカな!」
「女物だ」
「なんでこんなところに・・」
ボソボソ話している。
なんだ?
女物って・・・・?
カーテンのすき間から、そっと窺う。
オレオンの手に、白く細長い布が握られていた。
ヒョロッと伸びたレースのリボンに見覚えがある。
・・・あれ?もしかして。
俺は左右のポケットに手をつっこみ、男達の動揺の理由を悟った。
入れておいた、靴下が片方無い。
おそらく、フラフラ歩いてるときに落としたのを、オレオンが拾ったのだろう。
クッソ!
スケベ野郎が!
汚ねえ手で触ってんじゃねーぞ。
レースのリボンの靴下止めがついた、純白の俺の靴下ちゃん。
オレオンの邪悪な手から今すぐ奪還してやりたい。
ただ、どうするかな?
落ちてた場所が悪い。
ベッドのすぐ下にならともかく、けっこう離れているようだった。
今ベッドにいる奴が持ち主だとすれば、医務室に入る前から靴下を履いてなかったことになる。
靴下は俺の想像を超えるエロアイテムだったらしいからな。
アーニャちゃんなんて、同じ女生徒にすら裸足を知られないよう気を使ってくれたのだ。
うかつに「私の靴下です」なんて出ていくのは賢くない。
オレオンに強力な攻撃材料を与えちゃうからな。
痴女の噂でも流されたら、ロイルの結婚相手の資格なしと判断されそうだ。
ここは素知らぬふりを決めこんで、靴下は諦めるべきだろう。
ただなぁ・・・
そうなると、別の問題が出てくる。
帰りの馬車だ。
脱いだ当初は、裸足で帰る気満々だった。
ちょっと足が見えるくらい別にいいだろと、軽く考えてたからな。
だが、アーニャちゃん達やこいつらの反応を見るに、シャレにならないかもしれん。
昨日の今日だし、ベアドを刺激するのはまずい。
あの靴下はやはり必要だ。
俺は悩んだ末、決心する。
白魚のような美しい手を、ソーッとカーテンのすき間から伸ばした。
手のひらを上にして指を広げ、返してくれとアピールする。
「・・・え?」
オレオン達が伸ばした俺の手に気づいた。
「・・・・こ、これは、あなたのか?」
「・・・・・」
オレオンの問いはシカトする。
声でバレるかもしれないからな。
「お、落ちてましたよ・・・」
伸ばした手のひらに、ひんやりと冷たく、なめらかで柔らかい布の感触が生まれた。
返却された靴下を握り、静かに手をひっこめる。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
誰も何も言わない。
気まずい沈黙が訪れた。
息を殺していると、ロイルが口を開く。
「とにかく、もう戻れ。せっかくだから昼寝でもしている」
「あ、は、はい。では。授業が終わったらお迎えに参ります」
「別にいい。もうなんともないからな」
「で、では・・・」
オレオンの足音がカーテンの前を通り過ぎ、遠ざかっていく。
しかし、靴下を落としたことが悔やまれるな。
たまたま同時に医務室に来て、隣同士のベッドに寝てるのだ。
ロイルと会話してみるチャンスだったろう。
まあ、しょうがないな。
ベアドにも今日は追うなと言われてたし。
靴下は後で履くとして、俺も昼寝するか。
ゴロリと転がった時、ふと思った。
・・・・・待てよ?
授業が終わったらアーニャちゃんが来るかもしれない。
あの様子なら、多分来る。
その時ロイルがまだいたら、靴下落としたのが俺だとバレるじゃねーか。
オレオンまで来たら最悪だ。
今のうちに出るか?
でも、看護師さん達がいるからな。
「フラボワーノさん帰るの?」とか言われたら困る。
あと、背中のボタンとかコルセットとか、一人じゃ無理だ。
クソ!
やっぱ、靴下なんてほっとけばよかったな。
自分の判断ミスにイラついたときだった。
「履かないのか?」
カーテン越しに、ロイルが話かけてきた。
「・・・・・・」
向こうからくると思ってなかったからな。
普通に驚く俺。
「女子の足は意外と見えている。階段や、馬車の乗り降りの瞬間は特に」
淡々と語る。
チェックしすぎだろ。
別に言われなくても履くが。
ただ、脱ぐより履くのが大変なんだよ。
ペティコートもパンツも脱いで、ドレスを思いっきり捲り上げないと、コルセットのサイドの輪に靴下留めのリボンを結ぶことができない。
まだ慣れてないしな。
しかも、こいつが着替えを覗くんじゃないかと気になる。
俺のピカピカボディはお安くねーぞ!
「別にのぞいたりしない」
こちらの心の声を読んだように、たたみかける。
エスパーみたいだな。
「昨日の散歩中も足が丸見えだった。履いておいた方がいい」
・・・・?
あれ?
俺だってバレてんのんか?
「飾り袖でわかった」
マジのエスパーだった。
・・まあ、履くか。
履かなきゃしょーがねーからな。
俺は重い腰をあげてスカートを捲り、ペティコートの紐をほどき始める。
衣擦れの音をもって、ロイルへ了承の返事とした。
10分もしないうちに、靴下を履き終える。
意外と簡単だったな。
でも、これを狭いトイレの個室でやるのは大変なんだよ。
しかし、これは大収穫だ。
カーテンの向こう側の美少女の生着替え。
ロイルは全神経をこちらへ飛ばしていたことだろう。
高貴な生まれだからって、頭の中まで高貴じゃないことはベアドが証明済みだからな。
王子様だって御多分に漏れないだろう。
この状況でムラムラしてなかったとは言わせないぜ?少年!
これまでのルジンカちゃんがどんなアピールしてたのかは知らんがね。
強烈な一撃になったのは間違いないだろ!
千の言葉より、1本の靴下だな!
「なぜ脱いだ?」
衣擦れの音がやむと、ロイルが尋ねてきた。
「暑かったので・・・」
どうせバレてるみたいなので、声を出し返答する。
「なぜここにいる?」
長い間の後、再び問われた。
「倒れましたの。もう平気ですわ」
「そうか」
それっきりロイルは口をつぐんだ。
窓を叩く雨音の向こうで、医者と看護師の話声が聞こえる。
何を話しているかまでは聞き取れない。
こちらの会話もきっと同じだろう。
「そういえば、お詫びしておかなければならないことがあります」
俺はこう切り出した。
ロイルからの返事はなかったが、かまわず続けた。
「アーニャさんが、リコピナさんへのお胸のマッサージの件で、ちょっとした誤解をしていますの。
もしかしたら、ロイル様に何かお話をしにうかがうかもしれませんが、本当に誤解なので・・・その時は聞き流していただければと・・・」
アーニャちゃんのあの様子は不安だからな。
一応、耳に入れておいた方がいいだろう。
「どんな誤解だ?」
ようやく反応があった。
「その・・・本当にちょっとした誤解なんです。マッサージが、ロイル様のご指示だと勘違いされてしまって・・・」
カーテンの向こうでロイルの動く音がした。
「・・・それは・・・訂正すべきだろ」
急に声がクリアになった。
こっち側を向いたようだ。
「しました」
「・・・・話が見えん・・・・なぜ、そんな誤解を・・・」
なんでだっけ?
「一言で説明するのは難しいですわ。お昼に子づくりのお話をしたり、靴下を脱いだりしたので、そういのが色々と・・・とにかく、一応お耳にお入れておいた方がよろしいかと思いまして」
「・・・・・」
「今日はマッサージの途中で倒れてしまったんですけど、後日きちんとやり直しますわ。マッサージが変なものでないとわかっていただければ、誤解も解けると思います」
俺はリベンジの決意を胸に、言い訳を締めくっくた。
「リコピナと仲良くするのはそんなに負担だったか?」
ロイルが予想外の問いを口にした。
「え?そんなことはありませんが」
「だが、倒れたんだろう?」
どうやら、リコピナへのマッサージが苦痛で倒れたと思われているようだ。
「倒れたのはアーニャさんのおっぱいを揉んでいた時です」
ヤベー。
焦っておっぱいって言っちゃったよ。
まあ、いいか。
「・・・・・・・・・・・マッサージじゃなかったのか?・・しかも、なぜアリアニアを・・」
戸惑いつつも、「まあ、一番必要そうではあるが」と口走るロイル。
「マッサージです。私がアーニャさんをお揉みして、アーニャさんがリコピナさんをお揉みすることになりましたの。私はお2人とも揉んで差し上げたかったんですけど、アーニャさんがそれだけはダメだと・・・」
む?
これだとアーニャちゃんがリコピナをのけ者にしたように聞こえるな。
急いで補足する。
「別に意地悪ではなく。アーニャさんが胸揉みをロイル様のご指示だと勘違いしていたので」
「・・・・ならば、なおさらルジンカがリコピナを・・・・揉むべきではないのか」
いや、まったくその通りなんだけどな。
「子づくりの一環としてとらえていたようです。だから、私がリコピナさんを揉むと・・・」
「・・・揉むと?」
「ロイル様がご参加なさるかもしれないと・・・・」
なんでこんな話してんだろうな?
これでアーニャちゃんが怒られたら可哀想だ。
余計な気をまわすんじゃなかったな。
「・・・・・お前が何を言っているのかわからない・・」
だよな。
ロイルが小さくため息をつき、静かに告げた。
「・・・・マッサージが諸悪の根源なんだろう。もうするな」
そのまま寝返りを打つ音が聞こえた。
俺はベッドから飛び起きる。
ふざけんなよ!
クソ王子!!
人の唯一の楽しみ奪う気かよ!
「そんな!いやらしいですわ!!」
猛抗議する。
「!!??」
おそらく寝返りで反対側を向いたであろうロイルが、再びこちらを向く音がした。
「・・・なに!?」
「エッチですわ!エッチですわ!エッチですわ!」
俺はロイルの動揺をあおる。
「・・・・・・・・な、なんだ?」
明らかにうろたえているロイル。
今、この手の非難は胸に刺さるだろ?
俺の生着替えにギンギンだったろうからな!
「だって、そんなご命令・・・!お2人のおっぱいの所有権がロイル様にあると公言したも同然です!」
「!!!!」
カーテンの向こう側で、絶句している気配がする。
「アーニャさんの誤解は真実だったんですか!?・・まさか・・まさか、本当に私とリコピナさんの3人で子づくりを・・・・・?」
声を震わせ、囁くように問う。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・誤解だ・・・」
声に動揺をにじませたロイルが低く訴えた。
「・・・今の言葉は取り消す・・・よくわからないが、アリアニアが来たら私の指示ではないと否定しておこう。それでいいんだな?」
さっきよりも大きなため息をつき、そう述べた。
意外と物分かりいいな。
俺はホッと息をついてみせる。
「ええ・・・よかったですわ」
ロイルはもう返事をしなかった。
ゴソゴソとベッドから抜け出る音がする。
まだ授業が終わるまで時間があったが、上着を着てさっさと医務室を出て行った。
おっぱいマッサージの危機だったからな。
つい、熱くなってしまった。
これは、好感度的にどうだったんだ?
生着替えで稼いだ分が残っていることを祈るばかりだな。




