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未分類の短編小説

鑑定した結果、種族は盥でした

作者: 魚の涙

 名称:ワv;1

 種族:盥

 年齢:未来

 状態:色文字


 能力・

 点の形より堅い

 線の光より強い

 丸い色より善良

 白い青より高価

 厚い蔭より知的

 鑑定。

 初級・中級・上級の三段階の熟練度が存在し、稀少とも大衆的とも言い難い数の習得者が存在している。


 例えば辺境の集落では一人存在するかしないかといった程度だが、外壁が存在する程度の街を一日散策していれば一人はすれ違っているし、各ギルドの支店や二桁近い馬車が参加する商隊や街門や関所に必ず一人は所属している。

 但し、それは初級技能者を含めた場合に限り、中級以上は内壁が複数枚存在する街の中心近くに行かなければ出会えないだろう。


 因みに上級にもなれば対面するだけで全ての情報を抜かれるため、大抵の国では行動制限がかけられ二重盲検法を用いた厳重な管理体制が敷かれている。

 その上級技能者の主な仕事が、中級技能者が上級に到達していないかを定期的に確認する事であるのは何の皮肉であろうか。


 とは言え鑑定持ちのほとんどが初級のままその生涯を終えると言われており、中級以上に到達するのは数千人に一人いれば多い方だとも言われている。

 そして初級技能者が鑑定出来る事柄は少なく、その精度も荒い。

 例えば上級技能者ともあれば体力や知力と言った項目を絶対的な数量として知覚する事が可能だが、初級技能者に可能なのは何かとの比較がいい所である。

 経験豊富な者であればおぼろげでおおまかな判断を下す事も出来るが、まあその程度だ。


 とは言えその程度が果たす役割は非常に大きい。

 商品であれば価値の大きさを比較する事で粗悪品を避けられるし、街門や関所では行列の中から悪そうな奴を的確に発見する事が可能だし、各ギルドでは加入希望者の技量を大まかに判断する事が可能だ。

 そして日常生活においては新鮮な食物を的確に判断できるのが強みである。


 因みに、初級技能者の仕事は楽だが賃金は安い。

 掃いて捨てる程とまでは言わないが、替えが効くのだ。

体力も筋力もあまり必要としない職業であるために死ぬかボケるまで現役で、人口比の割に競争率が高い。

 大半の鑑定持ちは貧困と無縁だが、かと言って富や権力とも縁が薄いのだ。


 だから、ロタの街門に勤める初級鑑定技能者であるシアンは居心地の悪さにもじもじと身体を揺すっていた。


 場所は一番外側の内壁の中に造られた部屋。

 そこは一生立ち入る事も無い者が多い程度には上流社会の末端であり、同時に上級鑑定技能者が移動できる最外縁でもある。


「……間違いない。そこの下級者達の判定は正しい」


 紫色のローブに身を包んだ禿頭の老人、ロタ所属の上級鑑定技能者であるカッパのその言葉に、シアンと一括りにされた中級鑑定技能者が顔に不快感を滲ませた。

 衛兵が態度のなっていない中級技能者をシアン諸共睨み付ける。

 シアンは空気の悪さと鋭い視線により一層もじもじと揺れた。


「だが、これはどう見てもヒトだ……ですぞ?」


 衛兵の一人、一人だけ胸当ての色が異なる事から恐らく上役であろうその男が声を荒げかけた。

 中級以下の鑑定技能者は大抵の場合役職持ちの衛兵以下の存在だが、上級技能者相手となるとそうもいかないのだ。


「儂も納得はいかん。いかんが、こいつは確かに盥だ!」


 盥。たらい。

 水をいれる平たい容器。洗濯や行水に用いる。桶よりは大きい。

 それが盥だ。


 そんな事は知っている。知ってはいるが、盥が人の形をしている事があるなんて事は知らなかった。

 いや、そんな事があってたまるか。

 そんな益体も無い思考がシアンの頭の中をぐるりと駆け回って、そのまま何度目かの周回に突入しようとしていた。


 あーだこーだと話し合いを始めたカッパと役職持ちの衛兵から視線を逸らし、問題となっているモノに目を向ける。


 ソレの見た目は女である。

 中肉中背で藍色のローブに身を包んだ女である。

 緩やかに波打つ肩口程までの髪を指に巻き付けて、酷く退屈そうな顔をして俯いている。

 瞳は薄い灰色で、髪はやや赤味がかった黒。肌は白くその下に張り巡らされた青く細い血管が薄っすらと見える。

 歳の頃はシアンより少し下に見えるが、シアンはその項目を有意に判定出来ななかった。

 肌の色は白っぽいので北側の出だと目算をつけているが、それらの情報はシアンの鑑定では元から判別不可能だ。

 カッパがソレの情報に一切言及しない事から、ひょっとしたら上級鑑定をもってしても殆どの情報が不明瞭なままなのかも知れないと、そうシアンは考えていた。


 もしそうなら、異常な事態である。

 そして異常の中で唯一シアンが言語化出来たのがソレの種族なのである。


 初級技能者でしかないシアンは判別出来ない事ではあるのだが、人間には無数の種族が存在している。

 細かな分類は秘匿されているが、白色種や黒色種と言った外見的要因で区分される基準は広く知られている。


 例えばシアンの公的人種区分は十五門六網二目三科二属人種となっている。

 この中で属に当たる部分は外見からも大まかに判別可能である区分で、シアンに鑑定出来るのは属と人である部分だけである。因みに二属人は俗に言う白色人種の事だ。

 そしてシアンは科より上の区分を鑑定出来ないため、それ以上の区分を知る権利が無い。


 だから、ソレを鑑定した際に予想される結果は白色人種だった。

 にもかかわらず、鑑定結果は盥だったのだ。


「盥ってなんだよって話だよな……」


 思わず口をついて出た言葉は、シアン以外の誰も聞いてはいなかった。

 気が付けば名も知らない中級鑑定技能者が話し合いと言う名の口論に加わっていた。


 度胸のある奴だとシアンは思った。

 その直後に馬鹿なんじゃないかなとも思ったが。


 そんな三人を尻目に、シアンはここに来てから何度目かになる鑑定を発動させる。


――――――――――――――――

 名称:ワv;1

 種族:盥

 年齢:未来

 状態:色文字


 能力・

 点の形より堅い

 線の光より強い

 丸い色より善良

 白い青より高価

 厚い蔭より知的


 技能・

 認識不定物

 重複反響節

 伝播性構造

 反共有性文化

 投影型連続体

 局所順列逆転

 被観測情報歪曲

 界溝間斥力無効

 因果水平置換網


 祝福・

 下位五次元内移動限定/準拘束中

――――――――――――――――


 意味不明だ。

 シアンは今日何度目かになる感想を溜息にして吐き出した。

 カッパが盥だとしか言わない――言えない理由はこれだろう。

 実際、シアンが唯一説明出来たのは種族が盥であると言う所だけなのだ。

 カッパや名も知らない中級鑑定技能者はシアンより細かい情報が見えているのだろうが、シアンが思うにコレは詳しく見えた方が分からなくなる存在だ。

 或いは、ひょっとしたら鑑定結果は変わらないのではないだろうとも思っていた。


 そもそもナニなのだろうかアレは。

 見た目はヒトだ。不審な点は見られないし、意思の疎通も出来た。

 少なくとも、門の中で会話は成立していたのだ。


 その事実が一層恐怖と嫌悪感を引き立てる。


 街を歩いていても、隣に立たれても、話をしても違和感のない存在がヒトでは無いと言う事実。


 そんなシアンの思いを余所に、退屈そうにしていたソレが不意に顔を持ち上げた。

 視線がシアンを見据え、小首を傾げて薄い唇を開いた。


「危険ですので白線の内側までお下がりください」


 何度聞いても綺麗な声だと思った。同時に少しだけ恐怖と嫌悪感が去った。


「いつまでって、僕にそんな事言われても……」


 シアンは加熱する三人にちらりと視線を向ける。

 少なくともしばらくの間状況が変わる事は無い様に思えた。

 三人の向こうに立つ衛兵が欠伸を堪えている。


「あれは長引きそうだよ? のんびり待つしかないんじゃない?」


 シアンの言葉に、ソレはあからさまに不機嫌になる。

 呆れた様な恨みがましいような見下すような視線を口論する三人に向けた。

 ソレは隠そうともしない舌打ちをして、腕を組む。

 その視線がついと上を向く。

 つられてシアンもソレの見る先に視線を向けたが、そこには天井の染みがあるだけだった。


「ただ今緊急降下中。マスクを強く引いてつけてください」

「はあ」


 呆れた様な声で吐き捨てられたソレの言葉に、シアンは間抜けな声を漏らす。

 魔王や勇者なんて、ちょっとだけ現実離れした単語が混じっていたからだ。

 少なくともこの二百年、どちらも出現していない。

 来年だ五年以内だ十年以内だと教団が予測を立てていたのも十年程前までの話で、各国家が剣聖を選出していたのはほとんどが五十年程前までだ。

 唯一ベルト公国が毎年選定大会と任命式を行っているが、剣聖に選ばれたからと言って義務も無ければ特権も無い。


 一言でいえば、魔王も勇者も時代遅れの話題なのだ。

 過去に確かに存在したが、今では魔物がその忘れ形見の様に発生するだけだ。

 そして極一部の危険な魔物以外は、外壁の内側に限り全く害にならない。


 シアンの乗り気でない態度にソレは再び舌打ちをすると、すっと表情を消した。


 艶の消えた瞳が虚空を見据える。

 シアンの背中に冷たい線が走り、ぶるりと身体を震えさせた。


「證題協縺励>荳句ヵ蜈ア縲∫ァ√?轤コ縺ォ鬥ャ霆企ヲャ縺ョ讒倥↓蜒阪¢」

「え? なんて?」


 ソレの口から呪文の様な言葉が紡がれた。

 言葉の意味は不明だ。

 鑑定で見えたモノ以上に意味不明だ。

 シアンは怖いと思った。同時にやはり声は綺麗だとも思った。


「四階へまいります。恐れ入りますが四階もう少々お待ちくださいませ」


 ソレの言葉に、シアンは反応する事を止めた。

 教団に応援要請したなんて驚いたが、何に驚いたかと言えばそれを心のどこかで信じてしまっている自分自身に驚いているのだから。


 これは鑑定持ち特有の思考だが、鑑定持ちは目に見える事柄を心底信じてはいない。

 見た目と鑑定結果が乖離しているのは良くある事だし、基本的には鑑定結果が正しい。

 そもそも鑑定結果が間違っていた場合というのは、鑑定結果の解釈を間違えたか相手が鑑定持ちを騙すような策を講じていた場合だからだ。

 それはシアンも同様で、だからシアンは目の前にあるソレがヒトだなんて思ってはいない。


 ヒトか盥かどちらだと言えば躊躇いながらも盥だと結論付けるだろう。

 実際に盥なのかと問われれば違うかも知れないと答えるだろうが、それはソレが盥には見えないからではなく、ソレが自身を盥だと誤認させるような何かを行っていると考えているからだ。


 最早シアンにとってソレは異質なモノにしか見えていない。

 女に見えるヒトだと言う感覚もあてにはならないとも思っている。


 ソレは何故か勝ち誇った様な顔をしていた。

 シアンは本当にそんな顔をしているのか疑っていた。

 三人の口論は止まらない。

 佇む衛兵はもう欠伸を噛み殺してはいない。


「帰りたい」


 思わずシアンの口から本音が漏れた。

 何故ならシアンは初級鑑定技能者でしかないからだ。

 本来初級鑑定技能者でしかないシアンが内壁の内側――正確には内壁内だが――に来る事なんて無いのだ。

 来たからと言って得な事は何もない。

 むしろ面倒なだけである。


「ご来場の皆様にお願い申し上げます」

「……お前が言うな」


 思わず半眼でそう言いかえしてしまったシアンは、ソレから視線を逸らした。

 話している間はそれ程でもないが、後からじわじわと嫌悪感が湧き出てくるからだ。


 視線を逸らしたシアンをソレはしばらくじっと見詰めていたが、やがて口論を続ける三人に注目は移った。

 それを視界の端で見ていたシアンはそっと安堵の溜息を吐いた。


 佇む衛兵は何度目かになる大欠伸をしていた。


 しばらくすると、にわかに外が騒がしくなる。

 誰かが誰かを諌めるような声と、抗議するような声。

 そうした声が徐々に近づいて来て、当然それに伴って内容も聞こえて来るようになる。


 辛うじて聞き取れる単語から教団関係者と衛兵の会話だと判断したシアンは、心の中で祈った。


 これ以上の面倒事は御免ですよと。


 しかし願いも虚しく騒がしい声は部屋の前で止まってしまった。

 だが、部屋の扉には内側から閂がかけられている。

 外からは開けられないのだ。

 扉ががたがたと揺れる。

 外から誰かが開けようとしている。

 だが、開く筈も無い。

 そう高を括っていたシアンの視界で、扉が弾けた。


 硬い木材が砕ける音に金属の割れる音が混じった轟音に、口論を続けていた三人も黙る。


「司祭様!?」


 開放的になった部屋の入口からは何人かの顔が見えた。

 衛兵数人と、両腕を露わにする意匠の祭服をまとった女が二人。

 

 その内の一人、筋骨隆々とした女が扉を破壊した犯人であるようだ。何故ならその両手に変形したドアノブが握られているからだ。


「筋肉教団……」


 誰かが小さく呟いた。

 それは正式名称ではない。正しくは聖勇者教団。

 最初に魔王を討伐したと伝えられる勇者が信仰した女神を祀る教団だ。

 その教義は「汗と信仰心」と言う言葉に集約される。


「おお……! 我等が神よ……!」


 唐突に滂沱する筋肉女が両手の金属塊を投げ捨てて、祈りの姿勢になる。

 手の甲を合わせる様に両腕で菱形を作るその姿勢は、露出した両腕の筋肉を女神に捧げると言う意味がある。

 女の両腕の筋肉がめりめりと隆起し、皮膚に血管が模様を描く。

 その後ろでもう一人の祭服が同じ姿勢を取るが、その女の筋肉は一般人の範疇に……まあ収まっていた。


「女神様! 天啓に導かれて馳せ参じました!」


 細い方の筋肉が叫ぶ。

 部屋の内外の衛兵が皆引いていた。口論していた鑑定持ち二人も引いていた。

 ただ一人、ソレと話す事で少しだけ達観していたシアンだけは引き攣った笑いを浮かべた。


「谺。縺ッ繧ゅ▲縺ィ譌ゥ縺乗擂縺」


 ソレが呪文のような言葉で筋肉達に言い放つ。

 同時に細い方の筋肉が血の涙を流して片手と膝を床に着いた。


 太い筋肉以外の全員が動揺した。

 細い筋肉は一瞬苦しげに顔を歪めたが、次の瞬間には恍惚の表情で立ち上がった。


「天啓を得ました!」

「おお! なんと!?」

「走る筋肉が足りないと!」


 筋肉が煩い。シアンはそう思った。

 そして、その視線をソレに向ける。

 話の流れから言ってコレは女神なのだろうかと、そう思って再度鑑定するが結果は変わらない。

 種族は神でも女神でもなく、盥である。


 ソレはシアンに僅かに困惑したような視線を向けた。


 私筋肉なんて一言もいってないよ?

 視線はそう言っているようにも見えた。

 少しだけ、親近感が湧いた。


「ファールボールにご注意ください」


 シアンを見詰めたままのソレが、にやりと笑った。

 勇者を造ると言う不穏当な言葉に、シアンは途轍もなく嫌な予感がした。


「遘√′譁ー縺励>闍ア髮?r莉慕ォ九※縺ゅ£繧」


 ソレが綺麗な声で言うのと同時に、シアンは頭を殴られたような衝撃を感じた。

 いつの間にか、ソレが目と鼻の先に立ちシアンの頭を掴んでいた。


 びちびちと液体が飛び散る音がシアンの耳に飛び込んで来た。

 シアンの中の冷静な部分が、細い筋肉が吐血したのだと思った。

 冷静で無い部分はソレの手を振りほどこうと掴んだ。

 見た目に反して筋肉質な腕だった。


「天啓を得ました!」

「おお! なんと!?」


 後ろで筋肉達が煩い。


「聞こえていますか?」


 ソレが耳元で囁いた。その声は先程までより明瞭に聞こえた気がした。


「先程も言いましたが、魔王発生の兆しがあるにもかかわらず勇者発生の兆しがありません。なので、貴方には私の力を一つ与えて繋ぎの勇者になっていただきます」

「なんで俺が……!」


 シアンは必死に抵抗しながら言葉を絞り出す。

 ソレは笑みを深めてシアンを抱きしめた。

 それは石に抱かれている様な感触だった。


「ここにいる者達の中で、貴方は唯一私の発する言葉から意味を汲み取れたからです。他の方々は私の声を聞きとる事はおろか、私と貴方が会話している事自体を認識していませんでしたよ?」


 そう言われたシアンは、思い当たる事があった。

 不審者であるソレとシアンが会話している間、ソレはもちろんの事シアンにも誰一人注意を払っていなかった。

 更に思い返せば、街門で鑑定を頼まれた時もそうだった。

 シアンとソレの会話は短いものではあったが、誰一人口を挟む事も記録を取る事もしていなかった。


「女神はこの男に勇者を探す筋肉を一つ与えると!」

「おお!?」


 そして筋肉達が煩い。


「そこの聖女も素質はあるのですけど……誤訳が多くてですね。何故か毎回筋肉という単語が混ざるのよね? その上である程度意味が通じているのが理解不能ですわ」


 どこか遠い目でそう溢すそれが、シアンを解放する。

 シアンは膝を着いて胸を押さえ、湧き上がる吐き気を解放した。

 涙目でソレを見上げると、それはやり遂げた笑顔で優雅に手を振っていた。


「またのご来場をお待ちしております」


 にこやかにそう告げたソレの身体がぐにゃりと横に歪み、次の瞬間には上下から圧縮されたように灰色と黒の線になって、ぶつりと消えた。


 しばらくの間、筋肉達以外の誰もが動けずにいた。シアンもまた茫然としていた。

 筋肉達は祈りの姿勢で女神へ祝詞を捧げていた。煩かった。


 その喧噪の中で、カッパが眉根を寄せてシアンに近寄った。

 そして、困惑した声でシアンに起きた変化を告げた。


「妙な技能があるが、よもや最初から持っていた物ではあるまいな?」

「本当だ。……その技能、アレが持っていた奴の一つじゃないか?」


 名も知らない中級鑑定技能者にもそう言われて、シアンは自身を鑑定した。


――――――――――――――――

 名称:シアン

 種族:白色人種

 年齢:22

 状態:混乱


 能力・

 豆腐より堅い

 子犬より強い

 ある程度善良

 勇者より安価

 筋肉より知的


 技能・

 初級鑑定

 因果水平置換網(簡易版)←New!


 祝福・

 繋ぎの勇者←New!

――――――――――――――――


「なんだこれは……」


 この後にシアンは「悪夢の鑑定持ち」の二つ名で呼ばれる事になる。


「ああ! 我等が神よ!!」


 そして血反吐を撒き散らしながら滂沱する細い筋肉が、後の「慈愛の聖女」である。

 シアンが二つ名の格差に嘆くのはそう遠い未来ではない。

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