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短し夏の夢  作者: なつむらしいか
7/7

妖精モドキとの遭遇

2000文字足らずの短編。

「あと、半…年ですね。多分」


 ここ最近、体の調子がどうにも悪く。病院はあまり好きではないが体調不良が極まってどうしようもなくなってきたので、重い腰をあげて漸く来た病院。検査からいくらかの日が経って、言い渡された結果がこれである。


 伸ばしっぱなしの髪を後ろで適当に結んでいて、黒縁のメガネ。歳は30代後半といったところか。どうにも自信なさげで頼りなく見えるこの人こそ、私を診てくれた医者である。


 いや、まぁ、あの、その。確かに、ね。検査の時も、とーっても不安になるような感じではあったのだけれども。曲がりなりにもね、人の命を預かる立場である医者先生がこんなんで良いのかと。しかし、看護師さん曰く。「頼りなさそうに見えるけど、本気を出すと結構すごいのよ?」と、笑っていた。いや、その本気、今、出しましょう? いや、私だけを特別扱いしろとか、そういうことじゃないんだけど。お医者様もね、人間だし。完璧なんてね、あり得ないってことは重々承知の上ですよ。で、も、さ、百歩譲って毎回本気出さないとしても。患者の不安を煽るような態度はやめよう?


 しかし、そんな動揺と衝撃のせいか。何を言われたのかも、何を言ったのかもロクに記憶することができず。余命半年って言われたことだけは、しっかり記憶されてますけど。どこが悪くて、何故死ぬに至るのか、とか。そう言った細かいことは忘却の彼方です。


 具体的な治療法もない上に、入院する意義もほぼ無いので、帰れそうな体調なら、とりあえず帰れ的なことを言われ病院から追い出された私は当てもないままにぼんやりと歩いていた。いや、歩いていたというより彷徨うと言った方が正しいかもしれない。体調の面でも悲鳴をあげかけていたので、そろそろ家に帰ろう、そう思ってずっと足元に向けていた顔を上げる。現在地を確認するようにぐるりと辺りを見回す。私は気付かぬうちに見知らぬ森の中にいた。何故。


 えぇ。嘘でしょう。え、ここどこ。もしかして、まさかだけど。私、迷子? この歳で迷子とかちょっと悲しすぎて立ち直れないんですけど。


 そんな現実に耐えきれず、私はその場に蹲る。どうしたものか、と。うんうん唸りながら悩んでいると背後からパキッと枝が折れる音が聞こえた。


 振り返ってみると、そこには誰もいなかった。今のは何だったんだ? と首を傾げていると下の方から小さな声が聞こえてくる。


「こっち、こっちや!」


 え、こっちってどっちよ。と思いながら地面を見下ろす、とそこにいたのは。ミニミニサイズの何だかよく分からない生物だった。多分手のひらに乗るくらいのサイズです、はい。


 しかし何だ、その妖精っぽい羽と、狐っぽい尻尾と耳は……


「なんや、その珍妙なもんを見る目は」


 いやだって、珍妙じゃないですか、と思う私は正常だと思う。


「ねぇちゃん、どっから来たんや? この世界のモンとちゃうやろ?」


 ていうかさ。何で関西弁風の言葉を喋ってんのかな、この妖精モドキは。


「おーい、きいてんのかコラァ!」


 しかも口悪いし。私は思わず溜息をつく。ついに頭までおかしくなってしまったのか、と。そんな風に足下にいる妖精モドキを無視していたら、背中の羽をハタハタとはばたかせて宙に浮いていた。そして、私の前髪を掴んでいた。そして私のおでこに頭突きをした。しかし、それは痛くも痒くも何ともない。小さな小さな衝撃とも言えない接触であった。


「無視すんなや!」


 そうキレ気味に言った妖精モドキはよくよく見ると無駄に顔が整っていて…妖精モドキのくせに美形とか。


「何か、ムカつくな……」


 妖精モドキに遭遇してから初めて出た言葉がこれだった。それを聞いた妖精モドキは「なんでやねーん!」と芸人ばりのツッコミを披露してくれたが、ふと空を見上げた拍子に妖精モドキは何かを思い出した様子で。


「って、アカーン! こんなとこでのんびり油売ってる場合とちゃうんやった。ねぇちゃんも早くせな、巻き込まれるで」


 巻き込まれる、とは何にだろう。と、その時。森がザワザワと揺れ始める。風で木々が揺れる、というような感じではなく森全体が揺れているといった感じで。


「ウソやろ! もう、そこまで来とるやんけ!」


 そう言うと妖精モドキは、ものすごい勢いで飛び去っていた。効果音をつけるなら、ビューンって感じ。そして、私はひとり。取り残されたのである。


 どうせ、もうすぐ死ぬ身だ。何も怖いことは無い。あの妖精モドキ、忠告するだけして私を置いていくなんて薄情だな、とか。一人ってどうしてこんなに恐怖を感じるんだろうなとか。そんな感情は、抱く訳がない。


 木々が空を覆う。道が塞がれる。私の行き場は何処にもない。そんな薄闇のなか、一筋の光が差したような気がしたけれど。それも不安に思っている私が見せた幻だったのかもしれない。


続きそうで続かない。


うっすら何となく何かは見えたような気もするけど、それを書く気力はありませんでした。


関西弁風は、本当に、関西弁風です。何となくのエセです。申し訳ありません。


病気のことも詳しいことは何も考えていません。何となくぼんやり書いてます故、何の病、と問われても不治の病、としかお答えできませぬ。

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