明るい闇、澄んだ空。
700文字足らずの掌編。
規則的な時計の針の音、そして私が本のページをめくる音。そんな静かで穏やかな空間。その静かな時間は彼女の言葉によって破られる。
「明日、隕石でも落ちて地球が滅亡すればいいのに……」
藪から棒に物騒なことを言い出したのは、友人の清香である。見た目だけは名前に違わぬ清楚系美少女だというのに、口を開けばコレだ。名前負けと言うより名前詐欺という感じである。しかし、そんな真っ黒ダークな清香はいつも通り。なので、私も適当に肯定とも否定とも取れないような曖昧な反応を返す。
「いや、隕石とかよりも大地震とか。火山が噴火…とかの方が現実的、かなぁ……」
いや、そういう問題じゃないと思う。と内心でツッコミつつも私はパラリと本のページをめくる。
「ま、どうでもいいんだけどねぇ。」
これは彼女の口癖である。色々と怖いことを言いつつも最終的にこの言葉を吐いて話は終わる。その言葉を合図にするように本を閉じる。腕時計を確認すると長針は真上を指していた。
「さぁて、と。行きますか」
さっきの闇発言は何処へやら。爽やかな笑顔で彼女は歩き出す。私も立ち上がって、歩き始める。ふっ、と空を見ればやけに透き通った水色の綺麗な空で。
何となく、後ろを振り向くと彼女も空を見上げていて。同じことを思っているんだろうな、と思うと少し可笑しくて。小さく笑った後、目をギュッと瞑ってから、カッと開く。
随分前に、覚悟は決めた。だから迷わない。その思いを胸に、私は今日も明るい闇を行く。
私も彼女も道は違えど、同じ世界の住人。次がいつかは分からないけど。次に会うときは上手い返しを思いついていたらいいな、と思う。
笑えるギャグを書きたかったはずなのに、気が付いたら無駄にシリアスな代物に…何故。