こたつ
600文字程度の掌編。
誰かが言った。
"一度入ると出ることが難しくなる。
それがコタツという魔物である。"
本当、その通り。コタツは人を堕落させる。少しばかりしかなかった私のやる気を根こそぎ奪い取る。
が、しかし。それを許さぬ者が訪れ、容赦なく私をコタツから引き剥がそうとする。私のささやかで、か弱い抵抗も虚しく、遂に私はコタツから引きずり出される。
「いたたたたっ! ちょっ、引っ張んないでってば! 髪抜けるって!」
私の悲鳴など何処吹く風、幼馴染であり腐れ縁のミズキは今日も涼しげな顔。そして今日は知人の結婚式である。ほんと何でこんな寒い時期に式挙げようと思ったのかな。理解に苦しむよ。
「……お前なぁ。いくら、あいつらが結婚するの見たくないからって引きこもるなよ」
「いや、別に知らないし。見たくないとかじゃなくて巻き込まれたくないだけだし」
スッと目線を逸らして私が逃げようとしてもミズキは容赦がない。
「まぁ、確かにあいつらには迷惑かけられたし。俺も別に行きたかねぇけどさ。でも……」
ミズキは言葉を切る。そして私が目を離せぬように両手で顔を固定する。少し茶色がかった目がこちらを睨んでいる。
「けじめつけろよ。でないと引きずるぞ」
それは誰の話だ。まるでミズキは同じことがあったみたいだ。
「フッ…。ばっかじゃないの」
私は鼻で笑う。確かにミズキは引きずったのかもしれない。でも私は大丈夫だ。けじめをつける必要なんてない。引きずるも何も、もう。
何もかも、終わっているのだから。
私の諦め混じりの嘲笑をミズキはとても悲しそうな目で見つめていた。
こたつ、マジ魔物だよねー。と、思いながら書いていた話。タイトルと内容が微妙に合ってない気もするけど、他にいいのが浮かばなかったので…とりあえず。