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犯人は誰だ?(2)

連載中の別作品と間違って投稿しておりました。

お手数ですが改めてご覧ください。

…………………


「ベントゥーラが逮捕された!?」


 私たちが行った“捜査”によってベントゥーラと禿大男──キニートという名前らしい──は首都ハルハの都市警察によって逮捕された。容疑は殺人未遂、殺人教唆、エトセトラ、エトセトラ。


「そうだ。ベントゥーラは逮捕された。私を暗殺しようとしたことでね」


 私は集まった連合議会の有力者たちを前にそう告げる。


「ベントゥーラがアラクネアの女王を暗殺だ? いったい何を考えてたんだ?」

「簡単な話だ。彼はアラクネアと組むぐらいなら、ニルナール帝国と手を結んだ方がマシだと考えたんだよ」


 私は獄中のベントゥーラと話してきた。


 彼曰く、アラクネアとの同盟は必ず破綻する。人間とそうでない魔物の国家の同盟など成立しえない。破綻した瞬間にニルナール帝国によって占領される。そうなるぐらいなら、最初からニルナール帝国の同盟者としての立ち位置を握っておいた方がいい。


 なるほど。確かにアラクネアは異形の蟲による集団だ。国家ですらない。それと同盟することに不安を覚えることは当然だろう。だが、ならば言葉で反対すればよかったのだ。そうしなかったということには理由があるはずだ。


 そう考えて彼の屋敷を調査したところ、ニルナール帝国からの書状が見つかった。彼が処理し忘れた分だ。それによれば、ベントゥーラはアラクネアの女王──私を暗殺することに成功すれば、ニルナール帝国による東部商業連合の統治において有利な立場に置かれるということだった。


 つまりは地位に目が眩んで、私の暗殺に踏み入ったのだ。


「なんて野郎だ! ニルナール帝国に東部商業連合を売り渡すつもりだったのか!」

「彼のことは信じていたのですが」


 コンラードとケラルトがそう告げ合う。


 最初私は犯人はケラルトではないかと疑っていた。彼女は同盟には渋々という具合に応じていたし、彼女の冒険者ギルドの冒険者はアラクネアを探る際に犠牲になっているはずだ。その恨みを晴らそうと考えてもおかしくはなかった。


 だが、疑いすぎだったようだ。ケラルトには申し訳ない。


「さて、これでようやく初めましてだな、ホナサン・アルフテル」

「初めましてだ、アラクネアの女王」


 ホナサンはベントゥーラと同じようにドワーフだ。見事な髭が生えている。


 アルフテル銀行という大銀行を運営する銀行家で、連合議会でもかなりの影響力を有していると聞いている。コンラードとケラルトがアラクネアとの同盟に賛同した今、このホナサンが同盟に賛同すれば連合議会は同盟を可決するだろう。


「ホナサン。聞きたいことは? 私たちについてはいろいろと疑問を抱いているだろう。どのような存在なのか、と」


「確かに聞きたいことはいろいろとある。私はこう見えても読書家でね。昆虫の生態系について知るされた本についても読んだことがある。それによれば昆虫たちはカースト制度のような社会で生きていると聞く。アラクネアもそうなのか?」


「まあ、ある意味ではそうだな。女王である私を中心に各種の役割に応じて生きている。ものを作るスワーム。戦うスワーム。そういう役割分担をしている。カースト制とこれを呼ぶかは疑問だがな」


 ホナサンが尋ねるのに、私がそう告げて返す。


「職業選択の自由がない。それだけでかなりのカースト制だ。自由なき臣民を率いる女王か。どのように接したものだろうか」


 ホナサンはそう告げて首を傾げる。


「我々のスワームは最初からそうあるべきとして生まれてきたものたちだ。決して将来の可能性を奪っているわけではない。我々も使えるものは使えるように使っている。アラクネアは自由を否定するものではない」


 そうだ。アラクネアはその性質にあった職業を与えているだけだ。決して他の未来あるものたちから、その未来を奪ったりはしていない。ただ、ゲーム時代の役割分担に応じて任務を割り振っているだけだ。


「その言葉を信じたいが、どうやって証明する?」


「ライサという少女がいる。アラクネアにとっては新入りだが、その能力故に重宝されている。彼女が目を覚ませばアラクネアがカーストをそこまで重視しているとは思わないだろう」


 ホナサンが尋ねるのに、私がそう告げて返す。


 アラクネアは確かにカースト制に似た政治形態を持っているだろう。だが、完璧な自由というものではない。スワームたちに不満はないものの職業の自由は制限されているのだから。


「その言葉を信じさせてもらいましょう。今は信じる以外に他に方法はない。そのライサという少女が目覚めてから判断してもいいが、そのような時間的余裕はないように思われる。先ほど国境線でニルナール帝国軍の動きがあるとの報告を受けた」


「ニルナール帝国、か」


 ニルナール帝国はいよいよこの国を征服するためにやってきたようだ。


「私は同盟に異論はない。だが、代価としてアラクネアの女王は何を求められるか?」

「領内の通行許可と商業取引を。それだけで結構」


 ホナサンが尋ねるのに、私はそう告げて返す。


「ほう。商業取引を求められるか。意外だな。そちらは何か売買するものがあるというのか? 征服した国々から略奪した品々かな?」


「それもあるが、我々には新しくものを作るということもできる。このドレスなどは我々が独自に作ったものだ」


 ホナサンが興味深そうに尋ねるのに、私はそう告げて返した。


 私の纏っているドレスはワーカースワームがその糸で作ったものだ。絹のように滑らかであり、かつ強靭だ。そう簡単には破れたりはしない。これはリーンの街でもよく売れた。ここでも売れることだろう。


 それにワーカースワームには最近木工の技術を取得してもらった。


 私の使う家具を作ってもらうことが目的だったが、出来栄えはかなり立派だ。正直なところこういうものも売り物になるのではないかと思っている。


 それから大陸各地で採掘した宝石の加工技術もなかなかだ。牙を使って美しく仕上げてくれる。これもまたビジネスチャンスを思わせてくる。


 平和になったら蛮族経済をやめなければならない。そのためには自分たちで何か商品価値のあるものを生み出せるようにしておかなければ、ね。


「実に興味深い。投資させていただけるか?」

「考えておこう。今のところ資金的問題は抱えていないが、流通などを考えるとそちらの投資が必要になってくるだろう」


 商品を売買するには店舗も必要になるし、他の商人たちとのコネクションも必要になる。そういうものを得るにはそれなりの額の資金が必要になるだろう。今、私たちは金を建物のアンロックに注いでいるため、資金に余裕はあまりない。


「実に実りある投資になるそうだ」

「それで、あなたは我々との同盟に賛成か?」


 ホナサンが満足そうに頷くのに、私が肝心なことを尋ねた。


「もちろん賛成だ。社会構造が少々気になっていたが、それも問題はなさそうだ。では、我々は怪物──いや、スワームたちと手を結んで、繁栄していこうではないか。ニルナール帝国と手を結ぶよりましだろう」


 ホナサンは小さく笑うとそう告げた。


「これで同盟は決定ですね」

「本当に俺たちを食べないでくれよ? 冗談じゃないからな?」


 ケラルトがそう告げ、コンラードが冗談と本気混じりにそう告げる。


「君たちを食べはしないよ。私たちが貪るのは敵だけだ。そして、今の敵はニルナール帝国のみ。ニルナール帝国を滅ぼせば、何も貪る必要はなくなる。私以外のスワームは食事を必要としないのだからな」


 私はようやく同盟が成立しそうなことに安堵する。


「ベントゥーラの後任の議長は?」

「副議長のポールだ。あいつはただの会議の進行役に徹するだろう。同盟は決まったも同然だ」


 よし。いいぞ。これでニルナール帝国までの進撃路を確保した。


「大変です!」


 突如としてケラルトの冒険者ギルドの所属らしい冒険者が飛び込んできた。


「何があった?」


「ニルナール帝国の侵攻です! ニルナール帝国軍が国境を突破して、我が国に攻め込んできています! 既に国境線の警備は突破され、確認された限りでは岩石峠まで突破したようです!」


 ケラルトの言葉に冒険者が告げる。


「いよいよ戦争がおっぱじまったぞ」

「同盟が間に合ってよかったというところか」


 コンラードとホナサンが立ち上がってそう告げた。


「もちろん力を貸していただけるか、同盟者殿?」

「当然だ。アラクネアはニルナール帝国の侵攻を許すつもりはない。この国を守ってみせよう。それが同盟内容だったのだからな」


 コンラードの言葉に私はそう告げて返す。


「さあ、では戦争を始めましょう。もはやそれは避けられないのだから」


 ケラルトも立ち上がってそう告げる。


「傭兵団を纏めるのは俺に任せろ。そう簡単には東部商業連合は落ちないと教えてやる。俺は何度もニルナール帝国のクソ野郎どもとは戦ってきた。今更負けはしない」


「私は冒険者ギルドの冒険者を臨時に傭兵団に組み込みます。冒険者ギルドの条項に定められた臨時措置です。冒険者たちは対人戦には向いていませんが、偵察などの活動ではその実力を発揮するはずです」


「私は資金援助を。軍費を供出しようではないか。どのみちニルナール帝国に占領されてしまっては富は押収されるのだから」


 コンラード、ケラルト、ホナサンが相次いでそう告げる。


「心強い国だな、貴国は」

「そちらもな、アラクネアの女王陛下。援軍を期待しているぞ」


 私が思わず笑みを浮かべて告げるのに、コンラードがそう告げて二ッと笑った。


 さあ、ついに東部商業連合を舞台に戦争になった。


 いろいろあったが私はこの国に愛着を感じている。ニルナール帝国に滅ぼされてほしくはない。だから、戦力で戦おうじゃないか。


「セリニアン。戦いだ。行くぞ」

「はい、女王陛下」


 来るなら来い、ニルナール帝国。尻を蹴り上げて叩き出してやる。


…………………

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