七話 お役所仕事の暴走ですか?
長らく放置してしまったorz
宜しければお目をお通しくださいませ。
目の前の子供の見た目をした生命体? でいいのだろうか、彼の出現に戸惑う二人。何やら愛嬌のある笑顔で挨拶してくる子供(暫定)。周囲がガラリと変わった事に関しては、転移などと言うモノを体験したばかりなので問題としない……実際は大有りだが。
驚き行動が停止していたのは時間にして数秒と言ったところだろう。その数秒の間に空は何時もの状態に入っていく。無意識の内にデータを収集して、ソレを元に思考の海に潜っていく。
ゲームプレイヤーなら理解できる人も居ると思われる……ゲームをプレイする時の楽しみ方の内の一つに、様々なトライアンドエラーを繰り返して、バグを探したり、ある意味技とも言えるモーションキャンセルでの技能連発等の発掘等。空はこのタイプのプレイヤーで、バグを発見しては運営に叩きつけると言ったスタイルを突き進む、ある意味有りがた迷惑なプレイヤーだっただろう。常日頃の行動とは恐ろしいもので、こういった物の発見の為に五感全てを意識せずレーダー化と言う、変態技術の境地に達していた。
同時刻、咲はテンパっていた。子供みたいなのがシルクハットを被って、ステッキを持ち、ソレに合う服を着こなし……お空を飛んでいる、最早お目々がグルグルである。ただ一般的な反応は恐らく咲の方だろう。一つ上げるなら、叫んだりしなかっただけ及第点と言いたい。
『ふむ、中々に面白い反応をする。二人とも半ば固まっているように見えて、中身が正反対の思考ではないか』
思考を読んだのか、ケラケラと笑いながら二人の様子を揶揄う子供。二人は反応が違う表情を浮かべる、咲は驚愕と言ったところだろうか。空に関しては思考が読まれるならと開き直り、意を決して声をかける。
「始めまして、私の名前はソラ。こっちの娘はサキ。宜しければお名前と此処がどのような場所か教えていただけませんか?」
『うむ、挨拶は大切なものだからな。うんうんそうだな、私の事は〝みなかさん〟とでも呼ぶが良い〝ぬしさん〟でも構わんがな。ソレで私の事は大体理解できるだろう? 後はコレ以降声に出さずともよい、思考は読めるからな。時間もさほどある訳じゃない、故に私の言いたい事を告げるので聞き漏らす事の無いように』
〝みなか〟と〝ぬし〟と来たら古事記だろうと予想する空。実績がない等、諸説はあるが世界が生まれた時の始まりの一柱とあれば、実績なんてものではない。古事記の一柱そのものではないが似た様な存在とあれば……力が強すぎて世界に干渉した時、何が起こるかワカラナイと言う事ではなかろうか?
『ふむふむ、仮の名で其処まで思考するとは……まったくもって愉快。まぁ、大凡その通りと言っておこうか。それ故に今この状態もギリギリの干渉という訳だ。私が丹精込めて造り出したものを自分で破壊しては意味がないからな……という訳で色々と説明して置こう』
時間が無いという割りには丁寧な説明を受ける。〝みなかさん〟の纏う空気も重々しいものに変わる。
どうやらこの召喚もとい学級拉致事件は、ある地区を担当する管理者が何を狂ったのか、自分こそが最高神であると勘違いをした為に起きたという事。
空と咲に対しては、特に使命等は無い。有るとすれば時が来るまで生きていてくれれば良い。ソレ自体が勘違い管理者の構想に対しての歪になり、付け入る隙と言える。そしてその管理者に対しては監視者達が何とかする。それ故に、この世界を旅行感覚で歩いてくれれば良い。
教会関連の施設には近づくな、阿呆が気がつく可能性がある。
『大体この様な所だろうか。まぁ、先にも言ったが君達はこの世界を楽しんでくれれば良い。予期せぬとは言え、異世界から来た来訪者なのだから、私が創り上げた世界を堪能してもらい、ついでに自慢させてもらおう』
何やら楽しげに話す〝みなかさん〟に、空と咲もシリアスが去ったのだと肩の力を抜く。
『そうそう魔法についてだが大方、君の考えてる通りではあるが多少捕捉しよう。君達にわかりやすく説明するとなると、神の加護が無ければ魔法は使えない。これは簡単に言うなれば加護はソフトやアプリであり、君達はパソコンや携帯といったハードと考えて欲しい。元々君達は魔法を使えるハードでは有ったが、君達の故郷には使うためのプログラムが無かった。恐らくでは有るが君達の世界の管理者が魔のモノを使えないように世界全体からデータを抜いたのだろう』
「という事は、加護がない現状どうがんばっても使えないと?」
『であるな。まぁ君達には私から加護を与えるので使えるようにはなる』
「使えるように〝は〟ですか」
『言っただろう? 大方予想通りだと。長ったらしく中ニ臭い詠唱をしなければ為らないのだよ。詠唱とは言わば口頭契約であり、正しく契約をしなければ魔法は発動せぬと言う事だ。まぁ加護とは言っているが、私達管理人との繋がりであり詠唱は管理者に対して、自らの魔力と管理者の管理下にある魔力の使用及び、ソレによる様々な変化の許可及び助力等といったものだからな』
絶望である。詠唱破棄だの無詠唱がトレンドの時代において、中ニ全快の詠唱をシナクテハイケナイ。なんて残酷なのだろうか。しかしあるキーワードでもしや? と思う空。
『中々ユニークな思考をしているようだが、色々と試してみると良い。私は私の名の元に君に許可しよう
』
「ありがとうございます?」
『よいよい、君達は思う存分楽しんでくれれば良いのだから。一ついうなら古の魔法は加護など無くても使っていた者達がいる。ソレは言うなれば自ら専用のソフトを持っていたという事だが。まぁ色々と大変でもある、調べてみると良いだろう』
二人が図書館で調べた事が、詠唱等が余りにも地球産ぽいのだ。という事は転移者もしくは転生者が管理者にコンタクトを取って、現状の魔法の雛形を作ったのではなかろうか?
『さてそろそろ時間だ、元の世界に戻った時は時間は一切進んでないから気にせずとも良い。……それでは良い旅をしてくれる事を祈る』
言うが早いか消えるが早いか、世界への影響を少なくする為なのだろう、颯爽と消える主様である。
そうして、監視者との対話を終えギルドの一室に戻る二人であった。
パラレルな日本出身の空君達。その世界の神はまぁ似たような名前です?
きっと同じ名前でも違う事してる柱もいっぱいいるはず。