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十七話  テンプレは此方の人々 そのニ

 空達のクラスメイト……彼等は既にやらかした後であった。

 以前、オタ達が火薬は無しだなと自重していたのだが、全てのクラスメイトがそう言う思考をして居る訳では無い。

 とは言え、やらかしたと言っても火薬の製法を話したのでは無く、空がやってくれるなよ……と祈った、卵を使ったマヨネーズ作りだ。


 事の始まりは、味が薄すぎる事で苛立ちを覚えた一人の女子生徒だった。

 彼女は少しでも濃い味が欲しいと、この世界で今手に入る材料を確認し何が作れるかを考えた。

 しかし、残念な事にこの世界の調味料どころか、原材料の名前を見たところで解るわけが無い。日本語や英語などで書かれている物など無く、そもそも同じような物だとしても名前自体が違う。むしろ、全く同じ物など無いと言っても良い。

 そこで目に付けたのが、塩と油と砂糖と酢だ。しかしこれで何を作れるんだろう? と彼女は悩んだ。

 そして、出された卵料理。ただ焼かれて塩を掛けた物だったが、間違いなく卵と思われるそれ。


「マヨネーズを作れば良いじゃない!」


 天啓だ! とでも言わんばかりに、彼女はクラスメイト達がいる中、大声を出してそう言ってしまった。

 結果、彼女と同様で味に飢えていたクラスメイト達が一致団結(オタ達を除く)し、マヨネーズ製作が始まった。


「やめるでござるよ!」


「卵は使い方を間違えるとやばいぞ!」


 などとオタ達は考え直すように迫るが……もう既に遅い。クラスメイト達は絶賛暴走中だ。

 そして、クラスメイトは作り上げてしまう。手作りマヨネーズを。


 手作り、出来立て、この言葉は実に魔力を秘めている。しかも、クラスメイトの女子が作ったともなれば、姫といちゃこらしている天野 翔以外の男子からすれば、血で涙を流す勢いだった。

 味に飢えていたと言うのもあるし、目の前で毎日のように広げられる、天野と姫のフィールドにイラついていたのもある。


 兎に角、男子は様々な物に飢えていた。それは、オタ達がどれだけ言っても止る気配は無い。

 

 そして、異世界の調味料という事で興味を持った者達が、クラスメイト達と共に……マヨネーズを食してしまった。……ただ、ここで救いだったのは貴族の者や姫達の口に入らなかった事だろうか。


 よく考えて欲しい。手作りの出来たてマヨネーズだ。

 なんの処理もしていない卵を使用して作り上げたマヨネーズだ。


 もし、殺菌処理などがされた卵であれば……もし、数日置いた後であったのならば……。

 しかし彼等は出来てすぐのマヨネーズを、野菜につけてガブリ! と勢い良く食べてしまった。


 結果……死滅せず元気なサルモネラ菌が大暴れし、彼等は死者こそ出なかった物のベッドの上へと伏せる事になってしまった。

 この危険性を知っていたオタ達は、だから止めろと言ったのにと思っただろう。


 そして、彼等が止めていた事を知っていた国の者達が、彼等に理由を「卵を生で使ってはいけないなど常識ですぞ」と、当たり前の答えが帰ってきた。

 其れもそのはずで、この世界においても卵の生食は死者が出る可能性もあるので、禁じられた行為である。しかし、もしかして勇者達の世界での卵は生でも大丈夫なのか? と疑問におもっての質問だったのだが……帰ってきた言葉は、普通は生卵なんて駄目だろうと言ったモノ。

 だが、他の勇者達は生卵を食べたり飲んだりするし、調味料にもすると言っている。ますますもって訳が解らない話でしかない。


「しかし……よかったでござるな。これで罰せられたクラスメイトは皆無でござったし、話が良い方向に転がったでござる」


「確かに。まさか国の方針が、勇者達の文化を取り入れるのは危険では? と言う方向で話が進むとはな」


「これで、火薬の話が漏れても大丈夫でありますな。下手に手を出せば死者が出ると考えるでありましょうし、我々も自爆すると言う方向で煽れば」


「全く……怪我の功名と言ったところだな。それにしても、この国は何を考えているんだろうか。実に甘い対応じゃないか」


 普通に考えれば、毒を盛った! という事で罰せられる可能性が高いだろう。まぁ、その毒を作った物が自分で食べて自爆して居るので……そうとも言えない所はあるが。

 だが、こう言った場合、強権で物を言わせられる世界なのだから、誰かに対してこじ付けで首を刎ねるぐらいはやっても可笑しくない。

 なのに、全てのモノがお咎め無しだ。


 他のクラスメイトにとっては、「何て寛大な処置を!」と思って居る者が多いが、オタ達にとっては疑惑を深める……そんな材料になるだけであった。




――其の頃の空達――


「はっ! 何だか馬鹿をしそうな奴等が馬鹿を回避したと思ったら、違う奴が馬鹿をやった気配を感じた」


「……何その妙に具体的のようで全く具体的じゃない感覚」


「うーん……火薬でも作ろうとしたのかな? いやいや、作りそうな奴が回避して、違う奴が……火薬で自爆した? まぁそんな感じじゃないかな」


「え……それって大丈夫なの!?」


「いや、何と無くそんな気配がしただけだから。まぁ、大丈夫だろ」


 謎の電波を受け取ったのか、空が突拍子も無い事を言い咲が反応したが、嫌な予感突如しただけだと言う事にした二人。

 ただ、その感覚は丁度出来たてマヨネーズにより、腹痛でうなされていたクラスメイト達がいた時間帯であり……強ちこの感覚は間違っていなかったりする。

 ただし、それを確認する術がないので、空達には如何する事も出来ない。故に彼等が出した答えである「まぁ、嫌な予感がした程度だけど、とりあえず気をつけるか」と言うのは、ある意味正しいだろう。

生マヨネーズは気をつけましょう。とは言っても、日本の卵はしっかりと処理されて居るので安全なんですけどね。

海外に旅行に行った時ぐらいでしょうか? 後は異世界。

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