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十六話 食べ物!

久々の更新です!

 地球……それも日本の食文化に慣れ親しんだ二人にとって、異世界の食と言うのはどうしても口に合わない。というよりも、薄味すぎて食べた気にならない。

 某県は薄味だ……などと言う話もあるが、異世界の薄味からしてみれば「は? 何言ってるの」と言いたくなるぐらい差があるだろう。


「うーん。味が恋しいよー。何かこうラノベ恒例の食文化テロとかやらないの?」


「桜井さん……流石にそれは難しいと思うよ? 確かにラノベではお決まりだけどさ、あれは色々な意味で無理があると思うんだ」


「えー!? だって、美味しいのは正義でしょう? それに私達も食べれてハッピーじゃない?」


 咲が塩か酢しかないような食べ物に対して何とかしたいようだが、空はそれに対して無理があると咲にストップを掛ける。

 そして、その空のストップに納得が行かない咲は、どうしても美味しいと感じる物を食べたいからか、空に対して食って掛かった。


「先ず第一に、素材が流通していないという事。これでは肉や魚に調味料も満足に手に入らない」


「うぐ! 確かに……輸送方法がないと腐ったりしちゃうもんね」


「次に、衛生などの違い。一番簡単なのだと卵を例にだすけど、間違ってもこの世界でマヨネーズやタマゴ掛けご飯はやったらだめだ。菌や寄生虫といった概念がないからな。バイオテロになる」


「あ……サルモネラ菌! 確かに、地球だと卵以外にも、魚は生と謳っても一度は冷凍されてたりするし! そっかぁ……色々と問題点が多いね」


「それ以外にも、慣れ親しんだ味と言うのも壁だね。むしろ日本食なんて味が濃すぎて吃驚しちゃうかもしれないし、美味しいとすら感じない可能性もあるんじゃないかな?」


「……確かに。国によっては甘すぎたり辛すぎたりする料理を平然と食べてるけど、私には合わないなっての沢山あったよ」


「そう言う事。もしこれで、日本に戻れないと言うのが確定したのなら別だけど、現状で食を何とかする方向は無しかな。まぁ、適度に良さそうな素材を見つけたら、俺達だけで楽しむのは有りだと思うけどね」


 食と言うのは難しい物で、提供する相手次第では「毒を盛ったな! 濃い味で上手く隠そうとしやがって!」なんて、とんでもない論法で因縁をつけてくる奴も出てくるだろう。

 それに食文化と言うのも、また生活する場所によって違ってくるし、それに誇りすら感じている者も居るだろう。

 しかも、地球と同じ食材や調味料が取れる……なんて事は中々に難しい話だ。何せモンスターが居る世界だ。全く同じ動植物が居るなどあるはずも無い。有ったとしても似た物と言った所だろうか。

 故に、形が同じでも直に口にする事は避けるべきだ。見た目が同じでこちらの世界では毒でした! 何て事はありえるのだから。


「まぁ、こう言った点から食文化チートは無理だと思ったほうが良いよ」


「はぁ……カレー……うどん……お寿司……うー、お味噌汁も飲みたいよー」


「それはこっちも同じだよ。だけど、素材も無いし……醗酵系の物なんて作ってる暇もないし、我慢するしかないよ」


 そう、無いのだから仕方ないのだ。二人とも我慢するしかない。

 そして、空が言った通りで、帰れない事が発覚したのならば生産に手を出すのも手だろう。しかし、今は帰れる可能性は否定されていない。信頼するかどうか別として、神と思わしき存在である〝みなかさん〟が言うには日本に帰る事が出来るらしい。

 ならば、今は生き残る為にも自らを強化しつつも、ソレとは別で元の世界に戻る方法を探すべきだろう。

 なので彼等には、食を如何にかする等と言った時間は無い。


「……帰ったら一杯食べれば良いじゃないか。美味しいケーキ屋さんとか教えちゃうよ?」


「……ケーキ? 何処のケーキ!? 学校の近くにある所じゃないよね!」


「違う違う。家の近くにあるお店だから」


 ケーキ。その一言で復帰した咲。彼女も女の子というだけあって、甘い物に目が無いのだろう。

 その豹変ぶりに空は驚いたが、そう言えば学校の女子達はケーキやらクレープのお店の話題で盛り上がってた事を思い出し、そしてまた、咲も女子高生だったと今更ながら思い出していた。

 とは言え、学生であった事を考えていられる暇も無かったのだから仕方ないだろう。日々、強くなる為に努力し学んでいる最中なのだから。


「とは言え……戻る事が出来たとして、食べ物を楽しむのは良いけど、勉強のやり直しかな?」


「いーやーーーー! 折角……折角覚えた歴史の内容が!! 丸暗記だったら頭から抜けちゃうかも!!」


「……まぁ、テスト前だったからね。丸暗記を頑張ってた人多いだろうなぁ」


「甘い物が無いと頭が回らないよー……」


「いやいや、テスト勉強するとなれば、日本に戻った後だろうから……ケーキでも食べながらテスト勉強をやればいいでしょ」


「うー……ケーキ……」


 二人は美味しい物に飢えている。

 別にこの世界の食べ物は消して不味いと言う訳では無い。ただ……日本食に慣れ親しんだ二人には全く合わないというだけだ。

 それを裏付けるかの様に、現地の人達は美味しそうに食べ物を食べ酒を飲んでいる。


 しかし空は思った。絶対クラスメイトの中に食文化向上だ! と言って、色々と作ろうとする奴がいるだろうなと。

 そして、安易に手を出したが為に、腐った物や菌の処理が出来てない物を出して……これは、なるべく早くクラスメイトを助けに行く理由が増えたなと感じる空。しかし、まだまだ自らの戦力が足りてないと感じてもいる。

 だからこそ祈る。クラスメイト……馬鹿な事をするなよ……と。その祈りが通じるかどうかは別の話ではあるが。

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