十五話 特訓特訓また特訓
二十三層にて強化訓練をする二人。丁度良い具合に少し上の強さを持った相手との戦闘だ。二人の技術も良い感じで向上していくだろう。
「これで何匹目かな? 『ふぁいあぼーる!』」
「何匹というよりは、四十三戦目だね。 っとそこ!」
「そろそろ休みたいな!」
咲が魔法を放ち、隙を埋めるように空が大身槍で突く、更に咲が魔法の撃ち洩らしで遠い敵に弓を放つ。
三十五戦目以降辺りから、このやり方に切り替えている。序にと言わんばかりに、二人は色々な戦い方を検証しているようだ。それでも続けての戦闘を繰り返してきたのか疲労が激しくなっている。
「とりあえず、少し休むか」
「そうだね、あー水分補給しないと……その前に汗拭かないと!」
最初の内は、恥ずかしいなどの気持ちもあったが、そんな事で一々恥ずかしがっていたら命が危ないと言う経験をしてからか、空が居ようが気にしない様にして汗を拭いたりしている。役得と思う無かれ、ガン見しようものなら、信頼関係が一気に無くなるだろう。空は無意識に試されている!
「休憩後はどうする? 先に進む? もう少し此処で訓練する? 私達だいぶ動けるようになったと思うんだけど? 今なら二十四層で訓練しても良い気がするよ」
「そうだね……いや、もう少し二十三層で連携訓練の方をしよう。幾つかのパターンだけじゃダメだと思う。もっとこう、お互いに臨機応変? に動きつつ連携できるようにした方が良い」
「あー……確かに、今は決められた型通りに動いてるような感じだよね。予想外の事が起きたら其れだけで危ないって事かな?」
「うん、その認識であってる。だから此処からはどんな状態でも、対処できるようにする方針で訓練しようか」
徹底的に安全策を取って行く心算らしい。此処まで快進撃を繰り広げた程の進行速度は何処へ行ったのか。
「そうそう、魔法なんだけど詠唱魔法だったら面白いのできたよ」
「え!? どんなの?」
急にそんな事を言い出す空。咲としては自分が攻撃魔法ベースで戦っているから気になるのだろう。
「詠唱はちょっと長いんだけどね……『汝等は円を作り踊るもの也、踊りの主役は円の外に礫を投げ次の主役に交代する。投げられた礫は飛び荒れながら火を纏う、火を纏いし礫は魔鳥の速さを越え、只管に先に向かい駆け抜ける フレイムガトリング!』」
空の詠唱が終わると同時に前方に向かって、火の礫が大量ばら撒かれる。戦闘機の機銃を思い出させるような魔法だ。其の為か、前方の木々がなぎ払われ燃えている。自然破壊もいい所だ。
「うわぁ……これひどすぎない?」
「ふぅ……ジョーカーの一つだよ。ただ之使ったら魔力がすっからかん」
「うん? ちょっとまって? 今使ったって事は?」
「魔力が空っぽだね」
「休憩の意味がないじゃない! なに考えてるの!」
ふと思い出して使っただけの空だったりする。まぁ休憩は延長になるだろう。咲のお説教も延長のようだ。
とは言え、切り札が咲にも出来るようになったのは悪い事ではない。一度の戦闘に一回の切り札で更に休憩でかなりの時間を使う事を省けばではあるが。
「はぁ……とりあえず、切り札なのは解ったよ。他にはあるの?」
「まぁ、切り札ではないけど有るのはある……ただ使えません! 魔力ないし!」
「まぁ追々聞くことにするよ」
まだ色々考えているらしい。詠唱が恥ずかしいと言っていたのに詠唱について考える空。本当に恥ずかしいのだろうか? 本当は中ニ心満載な詠唱が大好きなんだろと問いただしたいものである。
休憩を追え、訓練を再開する事にした二人、擬似ピンチを演出して其処から脱出する、なんて事もやっているみたいだが、しかし、擬似だと意味があるのだろうか? あるいは避難訓練的な考えならば、多少は?
「しかし、やはりと言うべきかな? 槍を使いながら二人で並んでの戦闘はダメだね」
「うん、何度か私のスタッフとぶつかってたよね」
「まぁ武器同士の接触だから良いんだけど、之が武器と人だと思うとね」
「問題だよね、狭い場所で並ぶ時もあるから本当要注意だね。この世界で最初の武器選びの説明受けた時、パッとしなかったけど今なら解るよ」
「色んな状況での戦闘をした場合って感じで試してよかったね。此処なら如何とでも対処できるし」
「本当……先に進まなくて良かったよ」
咲がその危険性を実感した事により、之まで以上に立ち居地や動き方といったものが上手くなっていき、連携についても更に向上したものになるだろう。
むしろ今まで上手く事が進んできたのは、空の判断か咲の運なのか……身体能力でごり押したというのもあるのだろう。
「とりあえず今日は一日特訓だ!」
「其の方がよさそうだね……目的の為にも、危険は冒せないし!」
「そうそう、危険な行為は勇者に任せて、こっちは地道に行くよ」
「そうだね……って、勇者はクラスメイトの誰かでしょ! 現状どうしようもないけど、任せるようなものじゃないでしょ!」
「おっと……キガツイテシマッタカ」
「片言で誤魔化さない!」
「はい!」
「ポケットから、胡麻を出さない! 誰も貸してなんていってないから!」
「そんなー」
何はともあれ、今日一日、訓練と休憩を繰り返し徹底的に動きや判断力に磨きを掛けていく二人だった。
夜のお宿にて、咲が空にはい寄る。
「そういえば、聞きたいんだけど……他の魔法ってどんなの?」
どうしても魔法が気になって仕方なかったようだ。きっとクラスの男子なら違う期待をしただろう。しかしそこは空である。魔法について聞かれるの何時だろうなと思っていた。
「そうだね、まぁガトリングの属性派生は別にするとして、詠唱は言わないよ? 内容だけなんだけど、落とし穴の魔法やこう地面がつるつるする魔法は鉄板でしょ? こう大型の敵の突進を止める壁魔法に、窒息する魔法、底なし沼を作るやつとか色々?」
「なんだか聞いてるだけでも反則的な気がするけど……其れだけ多く作ったの?」
「まぁ簡単だったよ? 構文を作るだけだし、意味が通じれば良いみたいな所があったからね。実際は違うのを考えてたんだけど……詠唱作るのが面白くてね。あーこういう詠唱にしたら、桜井さんが恥ずかしがるだろうなーとか思ってたら、予想以上に出来上がったよ」
「……私が恥ずかしがる前提なの!?」
「素に戻った時、未だに顔を赤くしてる人は誰かな?」
「……ダレダロウネ?」
「片言になってるよ?」
「ひ、一つ気になったんだけど! 大型の突進すら止める壁魔法って?」
「露骨に話題そらした……、まぁ壁魔法は基本ぶち壊されるから止めれないだろう? って事だよね? そんなの壁=縦に構えるって考えるから駄目何だよ。 なんで斜めに突き出さないのさ?」
「あ……」
そんな魔法談話を交わしながら、夜が更けていく。
言わずもがな、余り寝れなかった二人を向えるのはお宿の看板娘の一言。
「昨夜はお楽しみでしたね!」
だった。お約束と言うのは、どの世界も共通と言う事らしい。
そして、そんな言葉を受けた二人は……楽しかったのは魔法議論だ! と叫んだが、ニヤニヤされるだけで、余り意味が無かったようだ。




