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十四話 ダンジョンは不思議空間だった

 確りと準備を整えた二人。空は武器を咲は使える魔法の種類を、更には消耗品や飲食品を買い漁り、忘れ物は無いかと朝から何度も点検している。遠足前の子供だろうか?


「ねぇ、忘れ物は無いよね?」


「うん、大丈夫だよ? てか朝から何度このやり取りを?」


「でも、心配なんだよ……」


「旅行前には準備してても、眠れずに朝まで起きて朝になったら準備がーって慌てるタイプでしょ?」


「何で解るの!? 岩本君はエスパーなの!?」


「いやいや、今の行動みたら誰でも解ると思うよ」


 この後だが、部屋から出た時、朝食を食べた終わった時、宿から出た時、街から出た時、ダンジョン前にてと合計五回の確認作業をする咲だった。きっと彼女は家から出た後、何度か鍵の閉め忘れが気になるタイプだろう。


「大丈夫だから、ダンジョンに入るよ? ギルドで言われた事覚えてる? 大丈夫? お……ちつこうね?」


「うん、ギルドで言われた事だよね……うん、確か五層まではチュートリアルでさくさく進める、六層目から環境が変るんだっけ」


「そうそう、だから六層目まで突っ走るよ? 武器も防具も揃えたんだから確実に進めば問題ないよ」


「スーハー……よし! いけるよ!」


 そんなこんなで、ダンジョンに入っていく二人。武器が良いのか加護が良いのか、魔法を使うことも無く縦横無尽に進んでいく。そもそも身体能力が高すぎる二人だ。モンスターがトレインされる事も無く、引き離されていく訳で、正面に居ても一閃の元切り捨てられていく。

 さくさくと進み、五層のボスに。此処は、ダンジョンの試練を司る精霊が、モンスターの姿で現れるとの事だ。


「……君ラ二人ハスルーシテイイヨ。実力モ加護モ強スギル。コレデハ試練ニナラナイ」


 試練に出会って早々この発言である。


「え? 戦わなくて良いの?」


「ソモソモダ、我等ハチュートリアルヲ終エル実力ニ相応シイカヲ、見テイルニスギナイ」


「それで、僕等は戦わなくても合格と?」


「当然ダ。一体何処ニ、ダンジョンニ入ッテ早々数十分デ此処マデ来レル、初心者ガ居ルノカ逆ニ聞キタイ」


「あー……なんだか仕事を奪ったようで」


「構ワン、見テ許可ヲ与エルノガ仕事ダ、別ニ戦闘ガ必要デハナイ」


 ダンジョン初心者は必ず試練に躓くと聞いていた二人は何だか申し訳なくなる。最上級といえる監視者から加護を貰い、魔鏡入り口で戦闘訓練と言う名の、狩りをしてきた二人だから仕方ないとも言える。


「それではお言葉に甘えまして……」


「ウム、良キダンジョンライフヲ祈ッテオルゾ」


 そんな訳で六層にさっくりと入っていく二人。

 六層はどうやら森林となっており、木々が視界を防いでくる。天然のトラップが沢山ありそうなマップだ。


「ふむ……森林マップだな」


「そうだね、んー……さくっと行きたいし、やっちゃう?」


「何をと聞かなくても解るけど、燃やすのは無し。他の人居るかもしれないし、ダンジョン産の美味しい果物とかもあるみたいだし?」


「はっ! 味が薄いこの世界で、美味しい果物とかは貴重だった! ふむ……知られてないだけで、香辛料とかも有るかも知れないから、燃やすのは止めよう!」


「うん……何だか最近魔法覚えてからか少し過激になってるよね?」


「そんな事は……ないとおもうよ?」


 無いと言うも、少し火力主義的な思考になってる咲である。魔法の魅力に魅入られていると言っても良いだろう。空の軌道修正に色々かかっていそうだ。

 そんなこんなで、果物を回収しつつ調味料は無いなぁと、彷徨う二人を向える此処のモンスターは、基本植物系で食人植物だったりトレントだったりと、攻撃が実にいやらしい敵ばっかりだ。きっと咲が捕まったら、色々と期待するクラスメイト達が目に浮ぶ。女子はそんな彼等を白い目で見るだろう。

 空に関してはそんな余裕など無い、ペアの相棒のピンチを喜ぶ馬鹿じゃない死活問題でもあるし、咲が切れて炎系の魔法を乱発したら一体どうなるのか……考えるのも放棄したくなるぐらいに恐怖である。

 其れ故に空は前にでて、纏わり捕獲してこようとする蔦を切裂く。


「んー……美味しい果物もあるし、此処の魔物は倒せば花蜜や良質な木材や、更に高額な果物が手に入るんだけど、めんどくさいな!」


「そうだね、本当一思いに燃ヤシ尽クナルヨ」


「どうどう落ち着いて、火魔法は使っても単体系で延焼しないようにね?」


「はぁーい」


 ドロップアイテムに関しては、覚えた空間魔法で収納するが、便利だけど大量のMPを使う。ある程度溜めてから収納というサイクルでMPを節約。基本この魔法は、前にでて戦闘をする空が荷物持ち替わりに使っている。


 さくさく進むダンジョン、それでも難易度が上がっていっている。階層を降りると共に二人の動きに隙が出来る様になる。


「うん……ここはきついかな? 今二十四層だっけ?」


「うん、合ってるよ。焼き払えないのが辛い」


「氷系は?」


「両極端、凍るか生き生きとするかどっちかだよ」


「ふむ、此処はまだ早いかな? 一旦戻って二十三層で訓練しようか?」


「そうだね、二十三層なら丁度良い感じの難易度だと思うよ」


 そんな訳で撤退を決める二人。きっと勇者ならば此処で帰ったりしないだろう。巻き込まれる同行者に同情である。

 それでも、勇者とは違う二人は基本、命大事に世界を楽しむを前提として動いている訳で。二人にとって撤退するのは負けた事にはならない。

 まぁそもそもな話、誰が一日で二十四層まで突破すると言うのか……きっとダンジョンの試練が此の事を知ったら、壮絶に頭を抱える事になるだろう。寧ろ頭を抑えゴロゴロとのた打ち回るかもしれない。ご愁傷様である。

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連載中:世界にダンジョンが産まれた様ですが、ひっそりと生活したいです?

纏めた物:帰還者の宴
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