十話 テンプレは此方の人々
空と咲が独自路線を暴走している最中。先に正しく召喚されたクラスメイト達は全力でテンプレートを突っ走っていた。
おお勇者様! うんたらかんたらー、と言われれば。クラスメイトの反対意見すら出さずに、勇者と言われた男子学生の天野 翔君が俺達に任せろと啖呵を切る。ソレに同調するように彼の友達や彼女候補達という名の取巻きが賛成と大声を出す。完全に反対意見を殺すやり口だ。
また、騎士でも一番強い人に訓練を受けるのもテンプレだろう。負けては挑み負けては挑み、謎の友情っぽい空気を作り出す。
当然不満に思っているクラスメイトもいるが……表に出せずにいる。色々な所から睨まれたら右往左往すら、させて貰えないだろうと判断しているからだ。
「勇者様! 今日も異世界のお話を聞かせてくださいませ!」
「あーお姫ちゃんか、うん、何の話が聞きたい?」
なんて甘酸っぱく見えるような会話。草葉のかg……じゃなくて柱の陰からは彼の取巻きをしていた女の子達がハンカチを噛んでキーーーーーとしている。男子はソレを見て引いている。
国の思惑を一切出さずにその様な対応を受け、天にも昇るような気分のクラスメイトが大半だ。表向きは理想の異世界転移だろう。
当然、森やダンジョンに入っては戦闘訓練と言うもやっていく。こっそり篩いに掛けられる生徒達。
ランク訳され、上位PTや下位PT等と分けられる。色々理由を捏ね繰り回され適当に話を反らされて納得させられるというPT分け。何事も無ければ良いのだが。
「はぁ……如何する心算なんだろうね?」
元の世界ではオタク等と言われてたタイプの生徒達が秘密の会話をしている。
「理想の異世界転移だと思えるけど……なんか穴がありそうだよね」
「穴はタップリあるだろうなぁ……」
「エロい穴なら歓迎でござるが」
「今はソッチに走るのやめたまえ」
ヲタ達は怪しんでいるようだ。まぁ色々読んでればそうなるだろう。国は隠しているようだが怪しい空気は隠しきれていない。現代学生を舐めすぎである。
「空殿がいれば、もっとやり様があった気がするのですが」
「空氏か……だが彼はこちら側じゃないだろう?」
「いやいや、あーみえてかなりのゲーマーでござるよ? 此方に来る少し前に知り得た情報でござるが、如何もあの伝説のVRMMOのトップランカーでござった」
「なんと! あのゲームは重課金してもTOPになれぬと有名なアレでありますか。ゲーム内で知識を集め技術を突き詰めなければならぬと言う」
「そうそう、ソレでござるよ。某もプレイしてはいるが、中堅も良い所でござる」
「なんと、貴公がか。ぐぬぬ……空氏が居てくれれば」
「言っても仕方ないさ。今はどう立ち回るかだけど……火薬は無しだな?」
「空殿であれば、手を出さぬだろうな。手を出したとしても誰も知らぬ所でだ」
「内政チートは無しでござろう? 国の思惑がはっきりとシナイ状態ゆえ」
「そうだな。では現状はこのまま伏せておくと言う事で?」
「ソレが一番であろうな」
ヲタ達は伏せる事に。国が信用できないから仕方ないだろう。その国にどっぷり浸かっている勇者パーティーもだ。
それでも、勇者達のテンプレプレイは止まらない。止められない。
「どうだ? 俺の剣の上達は!」
「さすが勇者に御座います。コレであればもっと上も……いえ、魔王を倒す事も早いうちに出来るようになるでしょう。元の世界に帰るのも遠くない未来ですよ」
「そうか! よしもっとがんばるぞ!」
煽てられる勇者。ソレに乗っかる取巻き達。怪しむヲタ達。国の暗部が監視する中、果たしてこのメンバー達は無事に帰還できるのだろうか?
そんな現状を見てほくそ笑む女神、自称だが。彼女もまた……監視者にマークされている事には気がついていない。
――其の頃の空達――
「カバーよろ!」
「かくかくしかじか……ふぁいあーぼーる!」
「グッジョブ! 良い詠唱だったね!」
「だーかーらー、詠唱聞いてにやにやしないでー!」
こっちは実に平和である。




