一話 最初のテンプレを全力回避
「どうしようか……」
つい口にだしてしまった愚痴を吐く男、名前は岩本 空。身長約百五十五センチと小柄であり、顔を前髪で隠し眼鏡をしている(この格好には理由があるのだが)、何を考えてるか判らない根暗君という印象を持つ人もいるだろう。
そんな彼だが昨晩やっと完成させたゲームでの技術を学校から帰宅したら試すんだと、朝から割りと高いテンションで学校に登校し、いつもの様に授業中に惰眠を貪りお昼になればコンビニで購入した昼食を楽しむはずだった。
それが現状、建物など無く周囲は自然の中、お隣には気持ちよさそうに眠っているクラスメイトが一人。
「とりあえず、この幸せそうに寝てるのを起こすか」
問答無用で頬をペチペチと軽く叩き声をかける、起きたら殴られるか?と思ったりもしたが現状起きてもらわないと先に進めない。
「う、うん……」
少々悩ましげな声が聞こえると共にそのクラスメイトが目を覚ました。
「オハヨウ、現状を理解できるか?」
「……おはよ、此処は?」
「自然の中だな、こうなった理由を覚えてるか?」
超常的な状態で此処にいる以上、ある程度の情報整理をするべきだろう学校で起きたことを確認しあうことにした。
事の始まりはお昼のチャイムが鳴った時に起きた。光りだす教室、床には見たことの無い文字の羅列。 サブカルチャーが好きな人物なら何と無く理解したであろう、魔法陣と言える物が突如現れ光を発している状況だ。
ゲーム以外にもラノベ等を読んだりしていた彼の思考が弾き出したのが。
「(コレ、所謂クラス転移じゃね?)」
此処で巻き込まれたらたまった物じゃないと判断し、魔法陣からでるための行動をする。
「全員後ろに飛べ!」
自分だけ教室に残された場合面倒になると思い声を張り上げ、そのまま魔法陣からでようとするが目の前で動けなくなってる女子生徒と目が合ってしまう。
切り捨てるべきだ、一瞬そう考えてしまうが一時期あったCMの子犬のような目で見つめられてしまい最初の考えをゴミ箱に捨て、その娘に体当たりする勢いで跳躍し怪我をしない様に抱き寄せその勢いで魔法陣から出る瞬間、陣から発せられてる光が周囲の人間を飲み込むように輝き現状に至る。
起きた事を確認した後は現状を確認する。
「(声はかけたが魔法陣の中にはまだ人が居た、だけど此処には二人しかいない。となると、俺達だけ別の場所に飛ばされた? それは何故? あの時半分魔法陣から出掛かってたから? それとも……)」
もはや癖となっている行動”次々と思考を加速させる”が発動する中、放置されてしまった女子生徒が必死に声をかけてくるのをスルーしていた。