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九十一話

お待たせしました!



 夜、多くの馬車が王城へと入っていく。今宵は降嫁の舞踏会。綺麗なドレスを身に纏い踊る淑女達。それと踊る紳士諸君。


 王家、御用音楽家達が甘美な音階を会場に響かせ、専属料理人達は美味なる料理の数々を会場に送り出す。


 ああ、素晴らしきかな舞踏会。この場で新たな恋が始まるのも少なくない。舞踏会と言うのは一種のお見合いパーティーの側面もあるからだ。


 そんな舞踏会の主役の一人たるルドガーは窓の花の一つたなっていた。一通りの挨拶も終えやっと束の間の休息。この次はダンスが待っている。この日主役には休みと言うのは殆どない。



「ルドガー様。お飲み物をお持ちしました」


 そんな彼の為に守孝は給仕からワインを貰い、彼に手渡す。


「ありがとう他の人達は?」


 一口飲みにフゥッと人心地。思えば朝から今までで初めて飲み物を飲むことができた。


「リンクスとお……カーラ様は彼処に控えております。セカンドとフィーネ様は……彼方に」


 見るとすこし離れた所にセカンドことソフィアと、フィーネがいた。どうやら王立学校の同窓達に捕まったらしい。ソフィアはフィーネの所有物(という設定)の為、離れる事は出来ない。


 何か……貴族として獣人を連れてくるなどあり得ないなど言われているのかと思ったら。どうやら違うらしい。何やら“可愛らしい”とか“私も飼おうかしら”と言う話が聞こえてくる。なんだが“愛玩動物”を見る感じだ。


「ルドガー様少し風に当たってきます」


 何を思ったか、女騎士ことカーラは前髪を弄りベランダへと出ていく。


「……少し私も失礼します」


 すると今度はルドガーもベランダへと出ていった。そうえば前にもこんな事があったことを思い出す。


「成る程ね……」


 どこぞの貴族との会食後。彼女が庭を見に行くと行って出ていき、その後に彼も出ていった。その時も彼女は髪を弄っていたのだ。


 特定の行動の合図……ベランダを見ると仲睦まじい両者が見える。つまりはそう言うことだ。


「……おや?此方に我が夫となる殿方はおりませんか?」






 私が初めてヴィトゲンシュタイン家を訪れたのは5歳になった時だった。


 父上に連れられ王都のヴィトゲンシュタイン邸を訪れゴトフリート様に挨拶をした。その時、父上の後ろに隠れていたのを良く覚えている。


 初めて会う強面の父親以外の男性。小さな少女に無理もないとゴトフリート様はにこやかに笑っていた。


『やぁはじめましてフロイライン。ワシはゴトフリート。君のお父さんの友人だよ。フロイライン、君の名前を教えてくれるかな?』


『カーラ……カーラ・フォン・メルカリッツです』


『カーラちゃんかいい名前だ。そうだフロイラインが自己紹介したのだから我が息子を紹介しなくてはな。おーいルドガー!』


 彼はそう言うとパンパンッと手をならす。


『お呼びですか?お父上』


『ルドガーよワシの友人が訪ねて来た。挨拶をせい』


 ハイッ!と元気に返事をし私と同じ年ぐらいの男の子はにこやかに笑った。


『はじめまして。私はヴィトゲンシュタイン家嫡男のルドガー・フォン・ヴィトゲンシュタインです』


 それが彼との初めての出会いだった。



「……貴方様に会ってからもう十五年も経ちましたね」


 時は戻り王城のベランダ。


「ああ、そうだね。あれから十五年か」


 初めての出会いから十五年。あの時父上に連れられてあの屋敷を訪れたのは、ただ遊びに行った訳ではないと気づいたのはもう少し後の事だった。


 後に父上には同年代の貴族の顔合わせと言われたが。勿論、それもあっただろう。ただ本当の目的は護衛と……恋人候補だ。


 まぁ、それも無理な話。家格が違う。護衛として差し出すのが本命に近かった。だがそれでも……


「私は15年前から貴方様を愛しております」


 家格が釣り合わなくても、彼に婚約者がいたとしても。


「すまない君の気持ちは分かっているが……」


「わかっております。ですので……せめて貴方様の片隅に居させて下さい……」


 彼女は目をつむり彼の唇にゆっくりと唇を近づけてそして……


「失礼致します。ルドガーにお会いしたい方がそこに」


 守孝がぬっと現れた。


「うひゃぁ!?」


「……どうしましたか?出来れば後にして欲しいのですが」


 顔を真っ赤にするカーラと不機嫌なルドガー。守孝自身もこんな雰囲気の中に割って入りたいとは微塵も思っている。


「そうもいかないからお呼びしてるんです……殿下が会いたいと申しております。今はリンクスが対応しておりますが、それとも会わないと殿下に仰りますか?」


 しかし仕事は仕事。やらなければならないのがサラリーを貰っている者の辛いところだ。


「……無理ですね分かりました。そちらに向かいますからちょっと待ってください」


 身なりを整え、我が妻へと元へ向かう寸前。ルドガーは彼女の手の甲にキスをした。


「カーラまた後でしっかり話しましょう」


 彼は立ち去り彼女はギュッと手の甲を押さえた。


「若様も中々に隅には置けませんな」


 ニヤニヤしながら彼の後ろを着いて行く。何となく分かっていたが、やはりそう言う事である。


「もう私は既婚になる身ですよ迷惑とは言いませんがOKとは口が裂けても言えません」


 本音は?


「……嫌ではないですよ」


「まぁ我が夫は妻たる私を差し置いて他の方に粉をかけていらっしゃるの?」


 デデデッ目の前に王国王女殿下が現れた。後ろにはリンクスことインがいる。


「では楽しい一時を」


 守孝はお辞儀をし道を開ける。


「ルドガー様ベランダに行きましょう。カーラも交えて楽しい会話がしたいわ」


 残念、ルドガーは王女に連れ去られてしまった。何やらベランダでは『妾は一人までなら許してもいい……』等と聞こえてくる。


「リンクス。周囲の状況はどうだ?」


「今の所問題ない……いや待ってください。何やら怪しい集団がこの大広間に……」


 その言葉を遮る様に大広間に怒号が響き渡った。


 さぁ、鮮血の夜の始まりだ。



どうでしたか?面白かったなら幸いです!

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