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八十八話

お待たせしました!



 雪積もる街道から少し離れた森の中、そこに守孝達はいた。全身を白い冬季迷彩に身を包み、白くカラーリングされたHK416Dを手に持つ。


「綺麗な場所だね」


 雪は降るが多く積雪しない地域、積もらないと言ってもそこは森の中。街道沿いより多く雪が積もっている。更に日を遮る木々によって森の中はまるで氷室の様に冷えきっていた。


 しかし木々の隙間から落ちる日の光は雪に反射し、なんとも幻想的な一種の風景画のようである。


「こっちだ。正面を迂回したから分からんだろうが、この先は街道に面している。そこが襲撃地点となっている」


 守孝達三人の他一人、先頭を歩き案内する者がいた。その者は鼻を怪我している様で鼻の周りをグルリと包帯で巻いている。


「ちゃんと案内しろよ。もし此方を罠に嵌めようと言うのなら……分かってるな?」


 そう、ルドガー襲撃を密告したあの暗殺者だ。


「そんなマネはしねぇさ。俺は強い方に付くのを信条にしてるんだ」


 独自の情報網を調べたら……中々の金額を払ったが判明したのは、彼等はヴィトゲンシュタイン家が雇っていた護衛だった。しかも凄腕の。


 少し前に起きたとある商会が潰された事件、それに関与していると言う噂話さえある。


(そんな奴らと敵対するのは良くねぇ……すまんな名も知らぬ同業者達)


 来る筈もない標的を今か今かと待つ哀れな暗殺者達に花でも供えてやろうかと思うぐらい。まあ、今は冬なので花なんてそうそう咲いてないが。


「この先が襲撃ポイントだ。ほらあそこに足跡があるだろう?」


 裏切り者は足を止め指さす。そこには雪の中を一筋、道ができていた。獣や人が歩いた道だ。


「……いますね。ですが上手く隠れてる様で視覚では視認できません」


 生体生物の場所が分かるインだが、それは大雑把に分かる程度だ。近づけば更に詳細に分かるだろうが、不用意に近づくのは危険。敵も馬鹿ではない、おそらく白い布か何かを被って隠れているのだ。


 守孝は全員に物陰に隠れる様に指示し、ユーティリティポーチから小型の双眼鏡を取り出して観察する。


 事前情報では数は約15名前後。しかも猟師や斥候の様なその道のプロと言うわけではない筈。仮にプロの者が居たとしても全員ではないだろう。


 必ず何か兆候を見せる。それを見逃してはならない。


「……居たな彼処か」


 一筋上がった白い空気……敵がいる印だ。彼は双眼鏡をしまい、背中にあるHK416Dを構え狙いを定め……引き金を引く。決められた動作、正確な頬付け、統制された呼吸。


 何回も何百回も何千回も繰り返した動作に狂いは無い。サプレッサーによって減ぜられた銃声、はまるで膨らませた袋を手で割った様な、そんな音が森の中に少しだけ響く。


 それと同時に白い雪の中にパッと赤い鮮血が舞う。そして悲鳴。野太い悲鳴が森の中に響き渡った。戦闘の始まりの合図が鳴る。


「リンクス、セカンド!オープンファイアだ!敵を殲滅しろ!」


 二人からも射撃音が響く。因みにリンクスことインは、今回M61を使用するのを禁止されたためM240汎用機関銃を、セカンドことソフィアは、前回使用して気に入ったのかHK416Cを使用している。両銃ともにサプレッサーは装着済み。


 暗殺者達は堪ったもんじゃなかった。抹殺対象を今か今かと寒い雪の中で待っていたら、いきなり一人また一人とどこからか攻撃を受けて死んでいく。だがその攻撃が見えないのだ


「くそっ!どこからだ!?どこから攻撃を……ギャッ!」


 攻撃場所を確かめようと立ち上がった仲間の一人が、何か風を切る音とともに全身から血を流して倒れた。


「畜生!奴らは魔法使いか何かか!?」


 だがしかし死んだ仲間のお陰で敵の位置がなんとなく分かった。



「西だ!西から何かを射っている!弓でもなんでも撃ちまくれ!」


 大声を上げ生き残りに指示をだす。すると生き残りの何人かが弓やボウガンで西の方に向けて矢やボルトを放つ。


 まばらで当てずっぽうに射っているために矢玉は彼らの周囲に少し落ち後は大きく外れて落ちる。


「リンクスはそのまま制圧射撃を続けろ。セカンドは俺と共に前進する……お前も一緒に来てもらうぞ」


 木の根本に隠れるこの裏切り者を無理矢理立たせようとするが、木にしがみついて離れない。仕方がないないのでM19を抜くと裏切り者に向けた。


「立て!貴様には義務を遂行してもらう……俺達はお前がここで死んでも別に構わないんだぞ!」


 グリグリと頭に銃口を押し付ける。


「ひ、ひぃ!?分かったから止めてくれ!」


 やっとこさ起き上がったので移動を開始する。インの制圧射撃で動けない敵を側面から接近して叩く。


 姿勢を低くしゆっくりと側面に回る。正面に敵の意識を釘付けにし側面から攻撃を仕掛ける。なんて事はない戦闘の基本だ。


 側面に回りスリングで肩から掛けていたM320グレネードランチャーを構える。単体で使用可能な単発グレネード発射機である。弾薬は高性能炸薬弾。


 敵との距離約80m。このグレネードには短い位の距離。少しだけ仰角をとって……ほぼ直射に近い状態で撃つ。


 ポンッ!となんとも気の抜けた音が鳴り、敵の陣地で腹のそこに響く爆発音と共に黒煙が上がった。彼は続けて二、三発グレネード弾を敵に撃ち込む。撃つ分だけ助けを求める悲鳴は上がった。


「前進して敵の残敵掃討とボディカウントをとる。『リンクス!お前も前進して俺たちと合流だ』」


 無線でインに指示し合流をする。そして敵が潜んでいたところまで向かう。


「気をつけて下さい、まだ生体反応はあります」


 敵が潜んでいた所に向かうと……そこは死屍累々なあり様だった。グレネード弾や汎用機関銃の7.62×51mm弾、アサルトライフルの5.56×45mmによって打ち砕かれた体から臓物が零れ出している。


 それでもまだ息がある奴はいる様で、呻き声は彼方此方から聞こえてきた。


「一人一人生きてるか確認しろ。虫の息の奴にはトドメをさしてやれ」


 彼はHK416を背中にまわしM19を抜く。倒れている一人に近付き、油断なく足で敵を二、三度踏み、確認する。


 ……返事がないただの屍の様だ。


 そんな感じで生きてるのか死んでるのかを確認していく。言うまでもなく生きていたら躊躇なく鉛玉で脳天をぶち抜いた。


 銃声は四、五回鳴った。


「次はこいつか」


 弾を装填しまた確認をしにいく。こいつは比較的形が残っている。近付いて確認しようとした瞬間……いきなりソレは起き上がった!


 だがしかし警戒を解いてない彼は冷静に腹に一発弾丸を撃ち込む……反応がない。


「……チィッ!ブラフか!」


 それに気付いた瞬間、右視界の端ギリギリを動く影が一つ。それに対して彼は反射的にM19を持つ右手を横薙ぎに振った。


 振った右手のM19は上手いことグリップエンドが敵のこめかみに当たり敵は動きが止まる。こめかみからは血が流れる。


「くそったれが!お前を殺して逃げてやる!」


 暗殺者の男はショートソードを抜く。


「そうか無理だな」


 彼はM19を撃った。


 火薬の力によって音速を越えるスピードで放たれた.357マグナム弾は頭をザクロの実のように爆ぜさせた。男は痙攣しながら崩れ落ちる。


「こっちは終わりだ」


 二人に声をかけると、二人とも此方も終わっていると声が返ってきた。


 死体はそのまま放置……と言う訳にもいかず、穴を掘りそこに棄ててテルミットと油で燃やす。そして土で埋める。


 これが一番時間が掛かる。人を十数人を埋める穴を掘るのは時間が掛かる。スコップで穴が掘る方が人を撃ち殺すよりも時間が掛かるとはなんとも不可思議な話だ。


 (彼方も始める頃合いか)


 四人で穴を掘りながら、彼は王都の方にいるルドガー達のこれからの動向を思い出す。そろそろ王都の方にでもひと悶着起こる時刻。


 まぁ問題はなく終わるだろう……フラグかな?


 ……早めに終わらせようと彼は全員に指示を出した。



どうでしたか?生暖かい目で見てくださると幸いです!

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