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八十七話

お待たせしました!



 時間は進み守孝はヴィトゲンシュタイン邸に帰還していた。あの後は特になにもない。季節の話をしたり、結婚式が楽しみだ、などそれぐらいだった。


「お帰りなさいませマスター」


 彼は正面……ではなく裏口から入るとインがその場で待っていた。


「中々疲れたよ。イン、ソフィアが連れてくるって言ってた奴等は来てるのか?」


 その場にいると言うだけで疲れた。属に言う場の雰囲気に飲まれてたと言うのだろうか。


「ええ来てますよ。人には見えない所で待っています。案内しますね」


 そう言われ彼女の後に続く。場所は邸宅の裏手で少しばかり木々が生えており、人目に付くことはない。


「あ、師匠待ってたよー」


 木にもたれ掛かっていたソフィアが彼に気付き此方にやって来た。その後ろには六人の子供が其々、自由に座っている。


「それがお前が呼んできた子達か」


 ソフィアに指示を出し彼は己の前に並ばせる。そこは正に人種の堝と言った様相だった。獣人に人間、それと混じり。


「お前がソフィアの師匠って奴か」


 彼の前に一人の青年が立つ。年齢は15~17位だろうか。背は彼よりも高く180程。青みがかった髪、犬の様な耳に尻尾……


「いや……狼かお前は」


 ナイフを喉元に突きつけられているかの様な雰囲気、此方を値踏みしている。


「お前はソフィアを、俺の仲間達をどうするきだ?」


 単刀直入、真っ正面に彼は聞いてきた。仲間を、群れの一員をどうするか? 群れに対して害するモノは今すぐにでも排除するそんな感情が、ひしひしと伝わってくる。


「貴方なにをっ!」


 それに気付いたインが丁度持っていたグロック19を構えようとするのを手で抑えた。


「お前……名前は?」


 この抜き身の刀身のような狼に名を聞く。名を知らなければ何も始まらない。


「……ガレリアだ」


 どこか何時もの人間達とは違うのに不審に思いながらも彼は答えた。


「オーライガレリア、まず安心して欲しい。俺は異郷の人間でな、獣人と言うのを見たのはこの国が初めてだ。更に言うと我が国では奴隷制度と言うのは存在しない……と言ってもお前には関係ないな」


 彼のおかれた状況をこと細かく説明したって彼には関係ない事だ。意味不明な事を捲し立てているのに過ぎない。


「俺はソフィアを部下……仲間と思っている。だからこそアイツに『お前の信頼できる奴を連れてこい』って言ったんだ。それに俺がお前らからは悪どい人間に見えるとして、態々ソフィアを治す為の薬を獲ってくるか?」


 確かにと狼は納得しかける。ソフィア自身から自分はこの人たちによって助けられたと聞いた。ならば我々にも手をさしのべてくれるのでは?と……


「信じていいのか……?」


 彼は首を振る。


「いいや俺の事は信じるな、俺の事を利用しろ。俺もお前達を利用する。俺はお前達の力を貸り、お前達は此方から金や食い物を貰う。ビジネステイクといこうや」


 そして彼はニヤリと笑った。


「まずはそれからだ……そしてお互いに契約を遂行したら、そしたら改めて……信じてくれ」


 彼は手を差し出す。


「俺の名前は鴉羽守孝。だが仕事の時はレイヴンと呼んでくれ」


「ああ、分かったよレイヴンさんよ。これからよろしく頼みます」


 二人は確りと握手をした。


 と言うわけでガレリア含めた六人の子供達は守孝達の指揮下……いや彼等と協力体制をとることになった。彼等は情報を集めてくる引き換えとして金や食料が渡される。


 武器は希望があれば渡すが短刀やナイフなど此方の世界の得物のみ。流石に銃を渡すほどお人好しでもない。


 情報を得るためには手段を選ぶ必要はない。それは元々彼等が生きるためにしてきた事でもあった。貧民窟に流れる噂を集める。そして重要そうな情報があれば実際にそこに赴く。


 情報がなければ危険をおかしてどこぞの邸宅に忍び込むのさえ彼は許容した……と言っても流石に無茶な事はさせないが。


 そしてこうして枝を伸ばしていると自然と寄ってくる者もいる。




「今日はいい天気になったな。良い遠乗り日和になるはずだった」


 その日は冬の合間の綺麗な晴天だった。寒い風の中、空は綺麗に透けているかのように青々していた。


「はいその通りです……ですがよろしいのですか?」


 ルトガーの側に仕えるカーラは不安を隠しきれない様子で己の主人を見る。この前日、あの護衛が新たに作った諜報部隊……貧民窟の孤児達の集まりだが。


 それがある男を連れて屋敷にやって来たのだ。その男は鼻を怪我していた。


「既に彼等が掃討に向かってる手筈だ。何も問題はない」


 彼等は三時間も前に襲撃ポイントに向かっている。既にもう終わっているかもしれない。


「さて我々も向かおう。とるべき手続きは沢山だ」


 ルドガーは馬に跨がり彼女もそれに続く。そして彼はある目的地に向けて王都を歩き始めた。



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