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八十六話

お待たせしました。今回は少し短めです



 長い廊下を王城の女中女官に案内されながら歩いていく。無駄な所作なくしかしながら美しい。完成された人の機能美とはこの事かと守孝は思う。


 そんな女中女官もどこぞの侯爵家の令嬢と言う話だ。ちらっと見えた、大きなエメラルドをあしらったブローチを見え、納得した。美しささえ醸し出す礼儀作法も当たり前の話だろう。


 因みに彼は案内されている位置は先頭を歩く女中女官を除いて、先頭は王国伯爵家嫡男ルドガー、次に王国騎士家の息女であるカーラ。そして彼は最後、列の一番最後尾を歩いている。


 護衛としては前を歩き安全を確保したいが、ここは王城の中。早々に襲撃を受けることもない。


 それに表向きは伯爵家の家令であり、裏は護衛、しかも傭兵崩れの冒険者(異世界人)などが前を歩ける状況ではない。要は身分の差というものだ。


 どんな世界でもどんな時代でもそれは付いて回る。反発するのも人として当たり前であり、受け入れる……郷に入れば郷に従うのは当たり前だ。


 廊下を歩く内に左側に美しい庭園が見えた。


 これが春ならば色とりどりの花々が咲き誇り、夏ならば真緑が清々しい。秋は深紅や橘色に葉が変わるだろう。ならば現在の季節の冬は?


 庭園は雪で一面真っ白だった……いや白い景色の中に厳しい寒さの中で緑をつける低木に赤い花が咲いている。


 季節毎に景色を変える。季節毎の美しさを庭園に実現させようするのは、どこの世界どこの時代でも変わらない。


「少しお待ちください……姫様!ルドガー・フォン・ヴィトゲンシュタイン様をお連れしました!」


 そんな内、庭園に隣接されたテラスに通された。そこには机と三つの椅子が置かれている。いや一人既に座っている人がいた。


「これはこれはお待ちしておりましたよルドガー様」


 それは美しい女性だった。磨き抜かれた白磁の様な肌、まるで金糸の様な髪、そしてルビーの様な緋色の目。


「殿下、本日はお招きありがとうございます」


 一同深々と頭を下げる。


「あらあらルドガー様。殿下なんて他人行儀でなくてもよろしいのですよ。マルグリット……それで良いのです。私は貴方様の妻になるんですから」


 彼女は顔を赤らめる。その一言はまるで蜜の様に甘く万人を魅了するだろう。


「はははっでは今のところはマルグリット様で」


 世が世ならそれは希代の独裁者かはたまた世紀の聖人か。そんな人物がこの世界にいるのかと彼は戦慄を覚える。と同時にそんなのを嫁にする彼の胆力に称賛を送りたかった。


 そんな良くある社交辞令の後、二人は席に座る。


「あら、そちらの家令さんは見たことありませんね。何時もの方はどうされたんですか?」


 と王女は此方に顔を向ける。咄嗟に何時もの癖……と言うよりも軍人として鍛えられた命令実行力と言うのだろうか。


 上官に対する振る舞いそれをしようとして……寸での所で声を出すのを止めた。


 それは彼に対する問いではなかったからだ。彼に対してではなくルドガーに対しての問い。許可なく答える訳にはいかない。下級の者がでしゃばる場面ではないのだ。


「前の家令は少し怪我で仕事から離れているんだ。彼は父の伝で雇っている者でねレイヴンと言う名前なんだよ。さ、レイヴン挨拶を」


 お許しが出たので彼は一歩前に出て頭を下げる。全て事前に決めていたカバーストーリー。雇用的にも三年前に雇っている事になっている。


「ご紹介に預かりましたレイヴンと申します。私の名前を殿下の頭の片隅に覚えて頂ければ終世の誉れと致します」


 彼の言葉は全くもっての本心でもあった。


「ふふっ覚えておきますね」


 もう一度彼は深く頭を下げ後ろに下がる。三人は喋りはじめ彼の出る幕は既にない。彼は護衛、裏方の人間だ。彼が表に出ない方がよい。


 しかし彼が表に出てきた時、その時は盛大に暴れる事になるだろう。



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