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七十二話

お待たせしました今回は冒険者ギルドの日常?です



 冒険者ギルド職員の朝は早い。


 間もなく日が上ろうかと言う時間にギルドに出勤し、朝、昨日の夜に吟味した朝貼り出される依頼書の最終チェックをおこなう。


 依頼を受けるのが1秒遅くなれば直ぐに誰かの死に繋がるために気が抜けない。整理がつけば直ぐにボードに依頼書が貼り出され、カウンターで受付が開始される。


 朝貼り出される依頼書はどれも危険度が高いのだが、それに比例して報酬も多い。その日暮しが多いと冒険者達にとってはその日の生活に直結する為、貼り出された依頼書は瞬く間にボードから消え失せ、受付は長蛇の列となるのだ。


 様々な膨大な量である依頼の手続き書を捌き終えたら一休憩……とはいかずに、依頼を出しに来た人達の対応や長期の依頼で帰ってきた冒険者達への対応。書類作成……etc……etc……


 そうしてやっとお昼頃に一段落がつく。だがのんびりしている暇はない。素早くお昼を食すと直ぐに午後の部の始まりだ。


 午後は主に依頼から帰ってきた冒険者達への対応が主である。達成していたら書類に達成と書き報酬を渡し、失敗していたら失敗と書類を書く。そしてまた依頼書を作成するのだ。


 夕方になれば受付は終了するが業務はまだ残っている。様々な申請書や懇願書を精査し明日の貼り出す依頼書の吟味と作成と職員達が家路につくのは夜になってからだった。


 書類を書き報酬を渡して、書類を書いて、依頼書を作成して、依頼書を受理して、書類を書き報酬を渡して、書類を書いて書類を書く。


 そんな書類がゲシュタルト崩壊しそうな程書類を職員達は作成している。書類と言うのは則ち文書を作成しているのだ。全ての物事は文書に書かれ、保存される。


 これは所謂、文書主義が形態化していると言えるのだ。文書によって記録される事によって責任の明確化がされ、契約の正確性を生むのだ。


 こうすることで依頼者、仲介者(ギルド)、受注者(冒険者)への権利、義務、事実を証明している。


 そも、冒険者ギルドはこの世界各地に存在し、冒険者達は各地のギルドで自由に活動することができるが、冒険者ギルドの母体は各地によって異なっている。


 例えば守孝やイン達が滞在しているサンマリア王国ではその運営母体は名目上は民間であるが、ギルド運営の約50%がサンマリアの役人が出向しているのだ。


 表向きは民間だがその実態は半民半官、事実上の国が運営している。他の国も似たり寄ったりである。


 そもそも冒険者達はその殆どが一山幾らのゴロツキの集団であるのは自明の理であると思う。そんな彼等には信用と言うものが全く無く、信用が無い者に依頼をさせようと思う依頼者はいない。


 だからその信用を王国が保証しているのだ。国が保証しているからこそ依頼者は冒険者を信用し依頼を出し、冒険者達は国の信用の元に依頼を受ける事ができる。


 そのため冒険者ギルドは多くの文書を作成し一冒険者、個人個人を評価している。信用が低い者に依頼を任せ失敗されると、ギルドの信用、ひいては王国の信用に響きかねない。だから職員達は責任を持って仕事をしているのだ。


 因みに他国の冒険者ギルドで依頼を受ける事ができる冒険者達は、所属している国のギルド本部から認可を得ている者達しかすることが出来ない。


 下手をしたら国家間の問題に発展しかねないからである。


 さて、話を戻すとして。そんな激務が毎日の様に続くサンマリア王国、王都ミッシエ、冒険者ギルド本部なのだが最近新しい受付嬢が入った。名をフィーネと言う。


 正確には地方のギルドから所用で王都に来たらそのままギルド本部で働かされているなのだが……(地方のギルドには通達済み)


 本来なら唯の地方事務所勤務のOLさんがいきなり本社の花形部署に抜擢される位摩訶不思議な話なのだが、ちゃんとした理由はある。まあ今は関係無い話なので割愛しよう。


 で、そんなフィーネなのだが。する仕事は同じといえ仕事量が桁違いだから直ぐにダウンすると同僚の皆様は思っていたら、そんなことは無くなんなら他の人達よりも多くの案件を捌き、上申書や報告書を文句の付けようがないぐらい完璧に仕上げている。


 お前絶対一般枠で採用された受付嬢じゃなくてどこぞやのお貴族様だろ……と同僚の受付の人達は戦々恐々なのだが、当の本人はどこ吹く風と何時も通り仕事をしていた。


 そんなこんなで王都での生活に慣れてきて位の時だろうか、思いがけない人物と再開する事となる。そう謎の自称元傭兵と名乗るカラスバ・モリタカと謎の自称美少女メイド、インだ。


 かれこれ一ヶ月以上前の話なのだが、前?の職場であったパックルの冒険者ギルドで彼女が冒険者登録をした人物達である。


 傭兵を自称する食い詰め者は数多くいるが、それにしては妙に礼儀正しく身なりも整っていた。それで次の日には何故かこの世の者とは思えないまるでガラス細工に生命をを吹き込んだ様な美少女を連れてきてコンビを組むと……


 数日後には赤竜を討伐すると言う冒険者の中でも数少ない偉業を成し遂げたのだ!


 そんな凄い冒険者なのだが一般的な冒険者達とは違い、俗に言う飲む打つ買うを全くしない。いや酒は飲むには飲むのだが、身を崩す程ではない。


 更には王都で再会したら新しい今度は少女を連れていた。何でも弟子らしいが彼女は恐らく獣人だろうと彼女は当たりを付けていた。口には出さなかった。


 良くある話だ。食い詰めた獣人の子供を食事を与える代わりに囮や肉盾に使う。残酷な話だと思うが、冒険者ギルド側は黙認している。フィーネ個人の感情は異なるが。


 やっぱり冒険者がすることは変わらないか……と彼女は彼等に対する評価が結構下に堕ちたが良く観察してみるとどうやら違うようだと彼女は気付いた。


 と言うのもどうやら彼女の待遇がそこそこ良さそうなのだ。毎日清潔な衣服を着てるし、ちゃんと体を拭いているか特徴的な獣臭が少ない。


 また受ける依頼が少ないのだ。いや正格に言えばに大型モンスターの討伐はしているのだが、専ら依頼と言えば市井の警邏巡回や荷物の配達と言う地味なものばかり。


 後は休息か王都の外で何やら訓練をしていると他の冒険者から情報が寄せられた。


 あの青髪の獣人の少女が酷いことされて無いのは一女性としてホッとしている。


 とは言え冒険者ギルドからすれば大型モンスターを簡単に討伐できる者達を一応の利益を追い求める者達として、また王国の猟区の保護を任せられている者達として、遊ばせているのは良くない。


 と言うことでフィーネは守孝やイン達に対してお願いと言う形で依頼を出してみた。


『今この依頼を遂行出来るのは貴方達しかいないのです。どうにか出来ないでしょうか?』


 そしたらどうだろうか。二つ返事で彼等は了承した。


『ええ良いですよ。他ならぬフィーネさんのお願いだやってやりましょう』


 そんなに信頼される程交友があるわけではないのだが、と彼女は思ったが意外な程信用されていて、彼女の良心は痛んだ。


 で、出した依頼と言うのが、ある湖を中心とした猟区で暴れている大型モンスターの討伐。そのモンスターと言うのが魚類の様で蜥蜴の様な生物で、名をアイアンヘッドとと言う。


 そのアイアンヘッドと言うのが名前の意味通りまるで鉄のような鱗で頭部が覆われている。更には泳ぎが上手く淡水、海水の両方で棲息している。対して陸での動きはそこまで上手くない。


 なので大抵の討伐は水から上がってきた所を狙うのが正攻法とされているのだ。


 フィーネは当初往復含めて十日以上位は掛かると思っていた。行くのに三日、帰るのに三日。そして討伐は四日以上は掛かるだろうと。


 だがその予想は大幅に裏切られる事となる。


 それは彼等が王都を出発してから四日経った時であった。昼頃に彼等は王都に帰還したのだ。


 何故まだ四日しか経っていないのに帰ってきたのかとフィーネが聞くと傭兵の男、モリタカは衝撃的な言葉を放つ。


『いや……もう討伐して帰ってきたんだが……何か不味かったですかね?あ、これ討伐証明書です』


 後ろにいたメイド服の美少女は妙に上機嫌であった。


 何を馬鹿な事を……と彼女は差し出された書類に目を通すと……


 あれー本物の討伐証明書だぞー?


 ハッと一瞬幼児退行しそうになる己の理性を繋ぎ止め、営業スマイルを崩すこと無く何とか依頼達成を告げることができた。


 内心は別だったが。


 彼等が帰ると先ず猟区の監視小屋に問い合わせした。そしたらちゃんと来て入区許可を出しているし、討伐したアイアンヘッドの遺骸も確認している。


 何でも大きな爆発音がしたと思うと唸り声のような轟音が数分間続いた。そしてその音が鳴り止むと直ぐに討伐したと思わしき狼煙が来た。


 それで見に行けば湖に浮かぶアイアンベットの遺骸を確認した。次いでに周囲には他の水棲生物も浮かんでいた様だ。


 書類も本物遺骸も現在近くの街で解体されていると……彼女は報告書を纏めるが明らかに通常の依頼よりも極端に短い。


 これでは文句を言われそうと悩んだが……まぁ……良いか……!


 と言う事も出来ずに彼女は上司に延々とその報告書は正しいと説明しなければならかったのである。













「……て言うことが有ったんですよ。凄いですよね四日ですよ四日」


 派手さはないが落ち着いた品ではあるがどれも最高級の調度品に囲まれた部屋に三人の男女がそれぞれ椅子に座っていた。


「それは凄いが……儂、フィーネが一般枠で冒険者ギルドの職員に為っとるの知らんかったんだが……一応伯爵家じゃぞ家……」


「まあ良いじゃないですか父上。そのお陰で良い情報が得られたんですから。これで彼等に……」


 その時ドアがノックされ鎧を纏った女性が入室してくる。


「どうした?」


「はっ……閣下、馬車の準備が整いました。既に入口前に待機させております」


「おおそうかありがとう。それではフィーネ、私達は少し用があるから少し出掛けてくる」


 そう言うと二人の男は立ち上り外套を着込む。


「はいお父様、お兄様行ってらっしゃいませ」


「うむ……ああそれと恐らくその者達に何か依頼をさせるようギルド側に……少し口添えするかもしれんその時はフィーネ頼むぞ」


 間もなく馬車は走り出した……王城の方へと。



今回の討伐方法~


「此処に合計約100kgのTNTがあります」


「はい」


「これを湖に投げ込んで高台にいきます」


「誰が投げ込むの師匠?」


「インです」


「はい私です」


「そしたら起爆します。するとプカプカと変な魚蜥蜴が浮かんできます」


「それをM61で掃射して終わり!」


--ダイナマイト漁は止めようね!--


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