七十一話
お待たせしました!今回は少し短めです。
守孝達が夜盗討伐の依頼を達成してから数日後。彼等は王都、冒険者ギルド本部に来ていた。
「今日はどのような依頼をうけるんですか?」
「王都近くで訓練を兼ねてやりたいから手頃な奴にしたいな」
手頃な依頼では報酬は少ないが、別に現在金には困っていない。なんなら余ってる程だ。
王都に居てすることが宿で寝てるか何処かで食事をするか、装備の確認。若しくは筋トレをしているぐらいで金を使う機会がほとんどない。
少しは使うべき、と言うかソフィアやインの息抜きとして街に出掛けるべきとは思ってるが、ちゃんとプランを建てて中々の所に行かなければ、付き合う彼女達も楽しくないだろう。
だから今のところは保留。もう少し王都の地理を知ってからの方が良い……後は面倒だし……。
そんな、妻や子供に出掛けたいと言われるのを、はぐらかす日曜のお父さんみたいな事を考えていると受付の順番となった。
「こんにちは冒険者ギルドにようこそ!本日はどの様なご用件でしょうか?」
「今日は王都かその付近でやれる依頼をしたいのだが……もしかしてフィーネさんですか?」
現在目の前で対応してる受付嬢、守孝は彼女の姿と声に覚えがあった。初めて訪れた町パックルの冒険者ギルドの受付嬢であったフィーネだ間違いない。
「ええと……もしかしてモリタカさんですか?パックルで冒険者ギルドに来た……?」
「そうです久しぶりですね」
彼が久しぶりと手を伸ばす、彼女はそれに応対するかのように手を伸ばし握手をする。
「わぁ!お久しぶりです!王都にはいつ頃来られたんですか?」
「一ヶ月近く前に依頼でね。しかし良く俺達の事を覚えてたな、確か二~三度程しか会ってなかったですよね?」
彼がそう言うとフフッと彼女は笑う。
「いや、まぁへn……冒険者になって間もなくで竜を討伐した人なんて早々忘れませんよ」
強い武力を強調しているが、変な格好の変な装備な中年男とメイド服の銀髪碧眼美少女の二人組とかインパクトは大きい。自覚はある。
「あら、その子は?」
フィーネは久しぶりに会った奇妙な冒険者に新たな連れが居るのに気づく。少女のようであった。その子にニコッと微笑むと少女は彼の後ろに隠れてしまう。
「ああ……ソフィアといいましてね。まあ弟子みたいなもんです」
獣人と言うのは敢えて伏せた。確実に誤解を生むだろうから。
「そうえばフィーネさんはなんでまた王都に?」
「ええと……少し王都で用事が出来まして。それで予定はまだ先なんで久しぶりのお休み思っていたら……ギルド本部の手伝いをすることになりまして」
彼女は先程と同じ様にアハハッと笑っているが目は笑っていない。言ってしまえば夏期休暇かなのに出勤しなければならない社会人と言った所であろうか。
もしかしなくても冒険者ギルドはブラック企業なのでは?(小並感)
「……そ、そんなことよりも!今日はどうしたしますか?王都付近ですと依頼はこのぐらいありますが」
彼の憐愍を感じとったのか取り繕う様に笑顔をつくる。彼はなにかもう申し訳ない気持ちがこみ上げて来たので、さっさと依頼を探そうと……まるで分厚い本の様になっている依頼書の束を持つ。
「……中々の量があるな」
「アハハッ……人口が多いとそれだけ依頼は増えますからねぇ。まだ他にもありますが、その依頼書の束は近日中にして頂きたい依頼ばかりでして」
内容を見ると、城壁の修復手伝いや商会や職人への荷物配達など種類は多岐に渡るがどれも報酬は少ない。多いのでも銀貨2枚程だ。
「こんな依頼料じゃ受けていただけませんよね……」
王都の外でモンスターを倒した方がわりが良いのは事実。しかし。
「ふむ……じゃあ取り合えずこれ受けよう」
そう言う依頼書を束から抜き出す。彼等にとっては好都合だ。
市街地における警戒や注意点の訓練になるし、王都の地理を知ることができる。更には給金を得られると一石二鳥ならぬ、一石三鳥なのだ。
「え!?えーと市井の巡回警邏……コレ本当に報酬が少ないんですけど大丈夫ですか?」
「ええ大丈夫です」
そう言われれば彼女は冒険者ギルドの一職員として依頼を出さない訳にもいかない。
「それでは依頼を頑張ってきてください!」
というわけで彼女は笑顔で奇妙な冒険者達を見送るのだった。




