六十六話
少し短めです
銃火器の利点とはなんなのか?
そう言われて先ず先に思い付くのは破壊力と射程距離が大多数を占めるだろう。
たった直径5.56mmの弾丸でも骨を砕き容易に人命を消し去る威力を持つ。無論12.7mmや20mmクラスになると人体が縦に割れたり血煙になる事例も存在する。確かに自らの手が使うものでここまで破壊力があるのはそうもない。
そしてまた射程距離も特質な点である。
例えば軍隊で使用される一般的なアサルトライフルの有効射程距離は約500mだ。これは威力を保ちつつ届く範囲であり、飛ばすだけならもっと遠くまで届く。
つまりは敵よりも先に捕捉したならば一方的かつ、此方は何も危険なく敵を殲滅出来るということだ。
一方的な惨殺、殲滅は人間が最も得意とする分野である。人間の悪性と言っても良い。誰しも持ちうる一方的な攻撃性だ。
そんな人間が欲しがる二つの特色を持つ銃火器だが、本当の利点は別に有る。
それはどんな武器よりも使いやすいと言う事だ。ピンとこない者もいるだろうから例を挙げるとしよう。
例えば、数十年刀を振り続け、技を研き剣聖と謳われる者が居たとしよう。その者と今日初めて刀を持った者が居て、戦場で戦ったとする。
結果はどうなるだろうか?
勿論100%の確率で初めて刀を持った者が死ぬ。その差は歴然。見るも明らかだ。
だがしかし銃火器は違う。
歴戦の特殊部隊員がまだ銃火器を持って間もない女子供に射殺される事がある。ろくに訓練されてない民兵達が米国海兵隊部隊を特殊部隊を撃退した事例さえある。
古風に言えば、火縄銃を持った農民達が騎馬隊を殺せる。だからこそ戦場から槍や弓は駆逐され、銃火器が戦場の主役となったのだ。
そんな戦場の主役たる銃火器だがある一点において他の武器と同じ欠点がある。それは新兵には誰しも現れる物で、傭兵になる前の守孝も陥った事がある。
今回はそれを彼女に体験してもらう事にする。それはとても辛く苦い経験となるだろう。だがそれは彼女がこの先自らが選んだ道を往く中で必ず必要になる事なのであった。
「おーい、冒険者ギルドの依頼を受けたこれから行くぞ」
一ヶ月以上泊まり込みで保々我が家と貸している宿の居室に帰ってくるなり守孝は言い放った。
「分かりましたマスター」
「いやちょっと待って師匠。いきなり過ぎない?」
急にドアが開いたかと思ったらいきなりの宣言、その反応は両極端である。
彼の従僕(自称)のパーフェクト美少女メイド自動人形(笑)であるインは直ぐに出発の準備を進め、一方弟子入り(仮)のソフィアは困惑して質問をぶつけた。
「これも訓練だ。いきなりの状況でも行動するのはこの先重要になる」
そう言われれば彼女は黙らざる終えない。彼に弟子入りしてから彼が彼女に対して行った事に殆ど無駄はなく全て経験として活きるものであった。
それでもいきなり地雷を解体せよと言われたのは死ぬかと思ったが……
(勿論火薬は抜いてあるが彼女はそれを知らない)
「それでどんな依頼なの?」
決まってしまったものは仕方がないと彼女も覚悟を決め依頼の内容を聞いてみる。師匠の事だからどうせ生半可ないらいではないだろう。
「なに依頼はごく簡単だそう固くなる事もない。ただ単の人狩り、王都から一週間ほど行った所にある峠に屯してる野盗の輩どもを鏖殺するだけさ」
「なんだそれならかん……いやちょっと待って待って。もう一度言って?」
なにやら衝撃的な言動が飛び出して来たような気がして彼女は顔を手で覆いもう一度依頼内容を聞く。
「野盗の討伐だ簡単だぞ?銃を構えて撃つ。それだけで終わるんだからな」
事も無げに話す彼は既に装備を身に付け始めている。彼女の装備も既に用意され綺麗に並べられていた。
「師匠……こう言うのは先ずはモンスターとかで段階を踏むものじゃないの?」
「そんな甘っちょろい事を言ってたら一生人殺しなんて出来ん。俺は前に言ったよな、お前が往く道は薄汚れた道となるってな」
守孝は着替えを終えると装備をソフィアに投げ渡す。既にインは準備万端のようで彼の後ろに、己の位置だと主張するかのように立たずんでいる。
「さあ行くぞソフィア。お前が選んだ道がどういうものか、その身にきっちり教えてやる」




