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五十二話



 その瞬間の一部始終を守孝は双眼鏡越しにその眼で見ていた。インによってGM6 Lynxから放たれた12.7×99mm弾は寸分狂わずに灰染熊の右後頭部に着弾し……ガーンッ!と甲高い金属音の様な音が響き渡った。


 跳弾した弾丸は明後日の方向に跳び岩肌に着弾した。


「嘘だろ……おい」


 流石にこの光景に守孝は唖然としてしまう。彼女が使用した12.7×99mmは過去第二次大戦では航空機銃(M2)に使用したり現代では装甲車に対する機銃(M2)に使用するものだ。


※両者は同一の銃器を使用してます。


 何が言いたいか、つまり灰染熊ホーリビリッスの頭蓋骨は装甲車よりも固いと言うことだ。


 人力で運べる中でトップクラスの破壊力と貫徹力を持つ弾丸。これ以上となると車両や艦船に積むクラス、20mmや30mmではないと通用しない事になる。


 今、彼が持つSCAR-Hの7.62×51mmは勿論歯が立たない。


 ならばと彼は前に赤竜を討伐した時の様に爆殺を考えたが……直ぐに首を振る。


 確かに爆殺であれば灰染熊を確殺できる可能性は高い。だが爆殺したとならば、その体には常人では体が粉々になる程の破壊と衝撃を受ける事になる。


 果たして灰染熊は体が耐えるができるのか?たとえ耐えたとしても無事に熊胆を取り出すことができるのか……彼等はただ灰染熊を殺しに来た訳ではない。王都でいまだ苦しむ獣人の娘ソフィヤを救けるために来たのだ。


 灰染熊を倒しても熊胆が取れずにソフィヤを救ける事ができないなど本末転倒甚だしい。


「マスターちょっと見てください。なんとかなると思います」


 彼が思考の海に水没している中、先程の灰染熊の経過を見ていたインがどうやら熊に関する何かに気付き彼を呼んだ。


 彼が双眼鏡を覗き見る。そこにはのそのそと森の方に向かう灰染熊の姿があった。その足取りは撃った前と然程変わらない。


「マスターが見る前に足取りが不安定でした。血も結構流して右後頭部は白いモノが見えてました」


 彼女がそう言うので彼は熊が歩いていた箇所に目を移すと、いたる所に血痕が付着しており見る限りその量は中々の量だと分かる。


 ふむと彼はまた思考に入る。今度はマイナスの方向ではなくプラスの方向に。


 彼女が言っていた頭部の白い部分は頭蓋骨だろう。やはり貫徹は出来てないが毛や皮膚、脂肪に肉等は貫徹可能なのだ。


 さらに灰染熊は12.7×99mm弾が命中し跳弾した後、前後不覚になっていたとも彼女は言っていた。これは恐らく脳震盪を起こしたのだろう。いくら12.7×99mm弾を弾く固さを持っていても中身への衝撃は和らげる事ができないのだ。


 つまりは灰染熊ホーリビリッスの頭蓋骨は12.7×99mm弾をギリギリ弾ける位の固さを持つと言うことになる。それ以上の弾薬を弾くのなら固さだけでは弾けない。固さに比例する様に柔らかさも重要になってくるのだ。


「今使ってる弾の種類は?」


 ふとあることを思い付き彼女に今の弾丸が何かを言うと、彼女は弾倉を取り外し、弾倉から一発の12.7×99mm弾を取り出した。


「通常弾だな」


 彼女から受け取った弾をマジマジと見て彼は言った。


 何故弾薬を見ただけで分かるかと言うと、弾丸は様々な種類が存在してる、徹甲弾や曳光弾などはよく映画やドラマで出てくるので聞いたことがあるだろう。


 だが弾薬の見た目は保々共通化されておりプロでも区別がつかない。そのため弾薬の弾頭部分に色を塗り見分けがつくようにしてあるのだ。因みに通常弾が緑、徹甲弾が黒、曳光弾がオレンジとなっている。


 それで今彼が持ち彼女が放った12.7×99mm弾の弾頭は緑、則ち通常弾となる。


(これならいけるな)


 いままでの出来事と達成目的、それと灰染熊の性能を組み合わせ一つの作戦を彼は叩き上げる。


 不確定要素が高い作戦ではある。失敗する可能性もあるしかし現在もっとも可能性が高い作戦だと彼は結論づけた。


「イン。これから作戦を説明する」


 彼女に彼は己の作戦を説明する。彼女は何度か頷き言った。


「……その作戦でいきましょう。マスター絶対成功しますよ!」


 両者は早速作戦に取り掛かった。素早く物を片付けこの場を後にする。


「おっと忘れていた。これを持ってけ」


 彼がそう言うと[ピースメイカー]からある弾丸を数発取り出し彼女に渡した。その弾丸は12.7×99mmではあったが弾頭に緑と白が塗られていた。



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