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四十二話



 執務机に押さえられたクリーズは何とか抜け出そうと藻掻いている。だが、頭を押さえつけられ身動きが出来ない。


 守孝はカラテルナイフを取り出すとクリーズの目の前に突き立てた。


「ヒッ!?」


 彼の口から小さな悲鳴が漏れる。月明りに照らされカラテルナイフは妖艶に銀色の光を放つ。


「お前達の裏帳簿や裏の仕事の書類は何処にある?」


「ッ!?……お前まさか[マルクス商会]からの刺客か!?」


「お前に無駄口を吐く権利は無い。さっさと言わないとそのお喋りな舌をズタズタにするぞ……!」


 守孝はクリーズの舌の近くまでカラテルナイフを近付ける。ナイフが歯に当たりカチャカチャと耳障りな金属音が響き、歯茎に当たったのか細い赤色の線が出来る。


「わ、分かった!は、話すからやめてくれ!」


「良いだろう次いでに手も退かしてやる。だが、少しでも変な動きを見せてみろ……分かってるな?」


 そう言うと守孝はクリーズから手を離し一歩離れる。だが、警戒を解くことは無くMP7の照準はクリーズを捉えていた。


 クリーズは自分に向けられる武器?が何かは分からなかったが、こう言う形の武器には覚えがあった。自分の店でも商品として貴族や騎士団に納品しているボウガンだ。彼はそれがナニかを飛ばす武器だと判断した。


「ハァ……ハァ……それで……裏帳簿だったか?何でそんなものを?俺の命を狙いに来たんじゃ?」


「無駄口を叩くな。俺は仕事をしているだけ、それで裏帳簿の場所は何処だ」


「……そこにある本棚の上から二番目、右から三番目の本の奥だ」


 クリーズは正直に裏帳簿の在処を守孝に教えた。この状況で嘘を言うのは、それは死を意味する。


「良し、じゃあお前それをとって俺に渡せ。逃げようとしても無駄だ。外に俺の仲間が待ち構えているし、俺はお前を一瞬で殺せる」


 クリーズは無言で立ち上がると本棚へと裏帳簿を取りに行く。この時彼はどうにかしてこの状況を打破しようと、頭をこねくり回していた。


(何故あの男は俺を殺そうとしない?……いや殺そうとしないんじゃない、"殺さない"だけだ)


 殺ろうと思えば何時だって殺れる。


 しかし違うのだ……守孝達は"殺さない"のではない"殺せない"のだ。


 この状況、店主室に潜入した守孝達は逆に言えば包囲されてると言っても過言ではない。


 勿論守孝とインの二人はこの状況から抜け出す事は出来る。だが、既にクリーズに見つかってる以上大規模な戦闘は避けられない。


 さりとてクリーズを殺るとなると今回の事件が明るみになる事になる。そうなると守孝とインにも捜査の手が伸る。その日の状況が分かればおのずとそうなってしまうのだ。


 その為、彼等はクリーズを殺すことが出来ない。マルクスと決めた"店主は殺さない"と言う決定をあってしてもだ。


 なら警備の人間を殺しても良いのか?と言う話になるのだがこの場合、"下っ端を殺した只の物取りの犯行"と"店主まで殺されたとある店の報復"では捜査の手も変わる。守孝達は出来るだけ跡が残らない様に慎重に事を進めているだった。


 つまり現在、両者の間には奇妙な食い違いが発生しているだ。守孝達はクリーズを殺すことが出来ず。クリーズそれを知らない。


「……これが俺の店の裏の仕事等が載ってる裏帳簿だ」


「これで全部か?」


クリーズは本棚から裏帳簿を持ってくるとそれを執務机に置いた。裏帳簿は先代からの裏の仕事が全て載っており、分厚い裏帳簿の数は四冊を数えていた。


「全てだ……と言ってもその本の殆どは先代のだし、俺の代になってからは関わってない」


 守孝はそれをリュックに詰め背負う。


「……何が言いたい?」


「……今回の件には俺は関わってない。本当だ!信じてくれ!……と、言っても信じてはくれないよな」


 クリーズはそう言うとどっかりと崩れる様に椅子に座る。その顔はある種の達観の相が見えていた。


 それはある種の諦めであった。"ここで殺されなくとも同じこと。自分が関わってなくともこの国で社会的に死ぬ。そして最悪、今までの罪が一身に降りかかり死刑にされるだろう"。


 ならいっそ本当の事を話せば楽になれる。これはそう言う諦めであり……己の身を守るための賭けでもあった。


 自分の身の上を話し……同情を引く、言ってしまえば泣き落しである。


 泣き落しと言っても馬鹿には出来ない。案外、こう言う手は有効であり、何人もの人々がこの手で危機を脱している……しかし。


「……だからどうした?それはお前が部下達を押さえられなかった結果だ。俺には関係ない」


 それを守孝はバッサリと捨て去った。彼にはクリーズの心境など、手に取る様に分かった。何故なら昔のターゲットにこう言う輩が良く居たからだ。


「そ……そんな……」


 クリーズは全てを諦めた様に項垂れる。


 クリーズの心境を理解しているのと同時に、守孝はクリーズが嘘を言ってないのも理解していた。だが、守孝は彼を助ける事はしない。敵対している組織のゴタゴタなど此方が知ったことでは無いからだ。しかし……


「……俺達はこの書類を速やかに"然るべき所に届ける"。それまでに己の無実を証明できる証拠でも集めておくんだな」


 彼はそう言うと部屋の外へと続く扉に手をかけた。


(いまなら殺れる……!)


 クリーズはゆっくりと執務机の棚から小型のボウガンを取り出した。懇意にしている職人からの贈り物で護身用である。


「……止めとけ。お前がそれを取り出す前に俺はお前を殺せる」


「なにを……!」


 彼が言い終わる前に鋭い飛翔音と共にナニかが頬の隣を通り過ぎる。そして保々同時に窓が割れた。


「覚えておけ。もしお前が王都から出ようとするなら、俺達は容赦無くお前を殺す。俺達は影からお前を見張ってる」


 守孝はそう言い残すと部屋から出ていった。別にどうと言う事でも無い。"助かりたければ自分でどうにかしろ"と言う事だった。


 彼が部屋から出ていって数分後クリーズは急いで身仕度を始めた。あの証拠は恐らく朝方には然るべき所に届けられる……ならば今すぐにでも行動を起こさなければならない。


 庭先で大きな爆発が起き部屋を紅色に染めても気にせず色々な証拠を袋に詰める。


「……くそっ!もう、店なんてどうでも良い。また一から始めれば良いからな。だが、命はコレしか無いんだ!捨ててたまるか!……まだ、女も知らないんだぞ!」


 まだ女も知らない26歳童○のクリーズ。これから彼は一から自分の店を持ち、なんやかんやあって小さいながらも幸せな人生を送るのだが……




……それはまた別のお話である。



今回の話。何を言ってるんだお前は(画像ryと思った方。自分でも思いました(おい)。

これはひとえに作者の頭の悪さから来るものです。読んでくださる皆様には大変失礼ではございますが、今回はこれぐらいで勘弁してください。

許してくださいなんでもしますから!(何でもするとは言っていない)



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