三話
体を包んでいた光が消えると、先程までの白い空間ではなく、柔らかな色の葉が生い茂る草原だった。
「うーん……此処がそうなのか?」
まあ、あの女神が言ってたからそうなのだろう。何処か人が住んでいるところ間で歩かなきゃいけないが。一先ずこの"ピース・メイカー"を軽く調べよう。そうえばこの能力には靴も有るのだろうか?流石に素足で歩きたくない。
室内から白い空間そしてこの世界に来たからか、靴は履いて無く格好は家で来ていたユ○クロのジーパンとシャツ、持ち物はこの女神に貰った端末しかない。
靴と言われて"そんなものはいいのでは?"と思うだろう、しかし靴は以外と重要な物だ。歩くときの体に来る衝撃は以外と、馬鹿にならないもので素足や身体に合ってない靴だと、直ぐに疲れたり足を痛める原因になるのだ。
そう言うことで、ピース・メイカーを取り出し調べ始めた。それから10分ほどで、この端末の能力について色々と分かった。
これには大別して四つの種類がある。[軽火器] [重火器] [車両] [装備類] の四つだ。軽く説明すると───
・[軽火器] 文字どおり、小銃や手榴弾等の人が持てる兵器のことで、軽迫撃砲やRPGも此処に含まれる。
・[重火器] 軽火器とは逆に榴弾砲や対地ミサイル等の大型兵器のことだ。
・[車両] これは車だけではなく、航空機や船舶まで含まれている。
・[装備類] これは身体に身に付ける全般の他にライトやナイフも此処に含まれる。靴や迷彩服、防弾チョッキの他に、パーティーで着る様な紳士服や、登山用のピッケルまである。
この四つのリストをスマホを使うように操作し、欲しいものをタップすると目の前に現れるのだ。
リストには強力な兵器が並んでいるが、現在は[重火器]と[車両]全般を選択することが出来ず、[軽火器]の一部、軽迫撃砲等も選べない。そして医薬品や食料は元よりリストに存在しない。だから怪我や病気、空腹には気を付けなければならない。だが、それ以外の兵器は使用可能であり、装備の類には制約はない。
ハッキリと言って、このままでも俺には不満などはない。確かに移動手段が無いのはキツいが、それでも耐えれるキツさだ。重火器も使えないのは当たり前だし。そもそも、あれは一人で使うモノではない。
しかし紳士服が有るのはビックリだ。サラリーマンが着るような普通のスーツから、正装である燕尾服まである。これは社交場は大人の戦場だからか?
まあ、そう言う訳で現在、取り出した装備を身に付けている。
軍用のコンバットブーツと、プレートキャリアを身に付ける。プレートキャリアには既に各種ポーチ類を取り付けてあり、これは機械の中でカスタマイズが出来るのだ。
メインウェポンはAKMを選んだ。この銃はAK47の近代改修モデルであり、多くの国、傭兵、テロリストで使われている銃の一つだ。機関部上部にマウントレールが設けられおり、俺はそこに、三倍の低倍率スコープを取り付けた。
AKにレールシステム?と思うだろうが、最近、ロシア連邦の次期正式小銃に決まった、AK-12にはレールシステムが採用されている。さらに紛争地帯だとAK-47やFAL等の旧世代の銃にレイルシステムをポン付けされているのを良く見かけた。
日本人には少し扱いが難しいが、傭兵時代に良く使っていた銃の一つなので問題ない。それが選んだ理由だが、もう一つは威力の高さとその堅牢性だ。この世界の生物がどれ程の強さが分からない。なので一発の威力を重視し、そして荒く使っても動作する、この銃をえらんだ。
サブウェポンはグロック19にする。この銃はグロック17をコンパクトにしたモデルで、多くの国で軍や政府機関で使用されている。この銃も傭兵時代に良く使っていた。
予備マガジンをそれぞれ三つ、マガジンポーチに入れる。それと手榴弾を破片が二つ、スモークを一つ、グレネードポーチにしまい、ライト等の小物類もポーチにしまう。グロックをレッグホルスターにしまい。カラテルと言う名のコンバットナイフをグロックと同じレッグホルスターに着けておく。そしてAKMのスリングを肩に掛ける。
これの他に、カモフラージュの為にリュックを用意した。これで少しは旅人に見えると思う、中には毛布を入れて、嵩ましをしておく。
これで全ての準備は終了した。
「さて、これからどうするか」
代わり映えの無い平原、左の方を見ると丘の上に一本、木が生えてるのが見えた。考えても仕方ない、ひとまずあの丘まで行くことにしよう。
そうして俺は異世界を歩き始めた。




