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一話


2017 9/19 大幅改稿



 その引き金を引く事ができるのは己の意思である

 誰の意思でも無く、己の意思でしか引けない

 では問おう汝がこの引き金を引く時

 その銃口は誰に向け

 何のために引き金を引くのかを……



 ここは日本。季節は夏。さんさんと照りつける太陽とヒートアイランド現象に寄って灼熱地獄となった首都東京。その都心から少し離れた所にあるアパート。その寝室に座りながら電話をかける男がいた。


 見た目は中肉中背だが服の下からでも分かる鍛えられた肉体、そして腕や顔にある傷、特に右頬から右目下にかけて有る傷は見るからに堅気の人間ではないのが分かる。


『なあ……レイヴン。戻ってはくれないか?アフガンで良い仕事があるんだ』


電話から四十代のフランス訛りの英語が耳に入る。


『すまん、俺はもう引退したんだ。それにブランクもある……後、その名はもう捨てた』


その男は元傭兵だった。日夜、戦場を駆け巡り、己を命をそして敵の血を小銭に替える外道の商売……それが傭兵だ。


『……すまんモリタカ。また、連絡しても良いか?今度でも一緒に酒でも飲もう』


『あぁ、そうだな。また連絡してくれ』


俺は通話を切り、ため息をこぼしながら携帯をそこらに放り投げ、そのままベットに倒れこんだ。これでいったい何度目だったか、たしか3~4回目だっただろうか?


「はあ、俺は傭兵は引退したんだよ」


 そう、彼は愚痴を溢す。彼の名は鴉羽守孝。少し前までは傭兵だった男だ。


 高校生の頃、武器と言う物に憧れ、自衛隊に志願したは良いものの、直ぐに辞めてしまった。本人曰く『なんか求めたモノと違う』だそうだ。


守孝は自衛隊を辞めた後。単身、フランスに向かい。フランス外国人部隊に入隊しそこで、実戦と言うものを経験した。そして彼は感じた『こんなもの……か』と。


「しかし、レイヴン……か。久しぶりに呼ばれたな」


 レイヴンとは、彼が傭兵仲間から言われていたアダ名だ。理由は俺の黒髪と苗字の鴉羽かららしい。


 彼はチラリとベットの反対方向に在るパソコンデスクに飾れてる写真を見る。それは彼と数人の白人、黒人らの男女が小銃を持ち笑顔で撮られている。


その写真だけでは無い。色んな地域、色々な戦場。普通の観光地で撮られただろう私服の写真も有った。


 彼はフランス外国人部隊を満期除隊すると、同じ部隊に居た、戦友達とPMC(民間軍事会社)を開き傭兵となった。その写真に写ってるのは、その仲間達である。


 人に話すには憚れる様な仕事も有ったり……逆に現地住民から称えられる仕事も有った。楽しく、やり甲斐が有ったが。今は銃を持つのを止め日本に帰国し、のんびりとその日暮らしをしている。


 そんな遠き懐かしい思い出を切り出した1ピースの写真であるが。全ての写真には共通点が有る。どの写真にもおり彼の隣に立つ一人のロシア人女性。彼女の顔には黒マジックでばつ印が書かれていた。


 その写真の女性が目に入ると、彼は嬉しそうな表情を一瞬浮かべた後、嫌な事を思い出したのか苦虫を噛み潰したような顔に変わる。

 

「さーて、今日の予定はもうないしどうするか……よし!酒でも飲むか!昼から飲む酒は格別だからな~!なんかツマミあったかな?」


彼は在りし日の思い出を追い出すかの様にベットから起き上がり、独り言をこぼす。そして、何か酒が無いかと寝室から居間へと続くドアに手を開けると…………



「…………は?」



扉を開けた先は見慣れた1LDKアパートの居間ではなく。真っ白な何処までも続く空間になっていた。





「はぁ!?どうなっているんだこれは!?」


そこは全てが白だった。地面も白、空も白。世界は水平の果てで空と海の境界は混じるが、ここは地平の果てまで白で境界など存在しなかった。


「くそ、どうなっているんだよ」


この状況に半ば呆然としながらも必死に思考を巡らせる。


 夢……そう思い頬をつねると鈍い痛みが走る。どうやらこれは現実だ。じゃあ何かの幻覚症状の発生……だが彼は、大麻等の薬物は使わない。


そうして考えているとふと後ろから女性の声が聞こえてきた。


【どうやらお悩みのようですね】


「っ!誰だお前は!?」


直ぐ様後ろを振り向くと、そこには先ほどまでに何も無い空間だった場所に、十代後半の少女がたっていた。


 彼女は青色を基調としたドレスを身にまとっていた。金色の髪は長く腰までありとても綺麗で、彼女の髪ととても合っていた。すらりと長い足、整った目立ち……ハッキリと言って、とても美人だった。


 だが彼女は、なんと言ったらいいか……そう、まるで黄昏時の空を見るような、満点と輝く星空を見るようなそんな感覚だった。


そんな彼女が彼の問に微笑みながら答えた。


【私ですか?私は貴方からすれば"神"と呼ばれる存在ですね】


彼女はそう彼に答えたのだった。



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