5回目 傭兵“レイヴン”烏羽守孝
お待たせしました!
さてはて傭兵、烏羽守孝のこれまでのあらすじ。
ひょんな事(死)で異世界に来てしまった烏羽守孝。彼は元傭兵であり数々の戦場を彼が元々所属していたフランス外国人部隊の時の仲間と共に渡り歩いていたのである。
そんな彼は“神”と名乗る美女からあるギフトを貰った。それは[ピースメイカー]……平和の製造者と名付けられた携帯端末である。能力は簡単『現代兵器をとりだす』事ができる。
それで彼は異世界で跳梁跋扈するモンスターを狩る冒険者となった。
彼には仲間がいる。自動人形で自称完璧有能銀髪メイドのイン。彼女にも彼と同じ能力を持っている。だが彼女が扱いのは20mmバルカン砲という桁違いの火力を持っている。まさに人造人形決戦兵器と言った所だろう。
もう一人はこの世界では被差別民族である獣人の少女、ソフィア。彼女にはもう一つの側面を持っている。
それは彼と同じ異世界人であると言うことだ。と言っても彼女にはなにもギフトは与えられていない。だが獣人という種族は総じて身体能力が高く大人でも根を上げる新兵教育課程の訓練や実戦を切り抜けていった。
彼らはサンマリア王国の王都で行われたヴィトゲンシュタイン伯爵家の嫡男ルドガーと国王の娘マルガリットの結婚パレードの夜に行われた夜会にて起きた十字教と名乗るカルト信者達が起こしたクーデター事件……いや彼等から言わせれば革命だろうか。
その際に彼らは国王をはじめ十字教徒囚われていた多くの人質を解放し、十字教徒の革命を阻止したのだ。その事件は[血の大広間事件]と呼ばれ後々までその場所では血の香りがすると伝えられた。
その功により彼は国外での冒険者としての活動を許された。冒険者は他国で活動することはできない。例外は幾つか存在する彼らもその一つだ。
本来ならば爵位を授与され悠々自適な貴族生活を送ることができたであろう。しかし彼は鎖に繫れるのを嫌う烏……ワタリガラスは居場所を求め放浪し各地を旅するものだ。
さてはてこれから始まる物語は[血の大広間事件]から二年後の話である。彼らは一体どこでなにをしているのだろうか?
「師匠!やっぱり山賊に襲われているみたい!」
「ソフィアはそのままキャリバーにつけ民間人には当てるなよ!イン、そのまま突っ込め!人は……山賊以外は轢くなよ」
轟音鳴き大地を蹴る八輪の鉄の箱は猛スピードで丘を下る。麓ではモクモクと黒煙が上がり不気味な戦場音楽も微かに聞こえてきた。
「マスターまもなく村に到着します!敵は約60名!」
その言葉で彼女はキャリバーの槓桿を引き12.7×99mmNATO弾を薬室に送り込み。彼も手に持つHK416のチャージングハンドルを引いて5.56×45mmNATO弾を込める。
「降車三十秒前!」
ガンガンガンッ!と上からキャリバーがデカイ銅鑼をジャンジャン掻き鳴らすかの様に火を吹かせ、戦場音楽をかき消すかの様に轟音を響かせる。キャリバーが一つ音を奏でるとどこかの誰かの命の蝋燭がバリバリッと削り飛ばされているのだ。
近くにつれ悲鳴や怒号を織り交ぜた声が防弾鋼で囲われた車内にも聞こえてくる。いつ聞いても嫌な声だ。人が死に人を殺す音いつもながら悪寒がする………しかしそれが心地よいと思っている自分もまた存在していた。
「マスター後部ドア開けます!」
装甲車は停車し後部ランプドアが開かれ彼は飛び出す。
「な、なんだテm……⁉︎」
目の前にいた山賊に素早く正確に5.56mm弾を数発撃ち込む。彼は声を発する途中で自分に何が起きたかすら分からず死んだ。
山賊共はいきなり現れた動く鉄の箱と、その中から現れた男から放たれる見えない攻撃に大混乱になっていた。
彼は正確に照準を定め引き金を引く。正しい姿勢に正確な構え、そして鍛え抜かれた肉体によって反動は上手く受け流され、次々に敵は倒れていく。
「お、おい!こ、こいつがどうなっても……ギャッ!?」
老夫の首を掴み人質にしようとしていた男を守孝は胴体に数発銃撃を与え倒れたら脳天にとどめの2発を加える。男はもう何も返事がない唯の躯と成り果てた。
逃げる山賊たちにも容赦なく鉛玉の雨は降り注いだ。罪もない村を襲い略奪や暴行を繰り返した者達なのだ慈悲はない。いや降り注ぐ鉛玉が“対物”とまで称される12.7×99mmNATO弾なのだ。当たれば殆ど確率で即死できる。その事を考えればそれは慈悲と言えよう。下手に死にきれなかった者は悲惨だが。
腕や脚が吹っ飛んでいたりその両方だったり、腹に受けて腹圧によって臓物が外に零れ落ちる者。上半身と下半身がまるで小枝の様に真っ二つにされた者もいる。
幸か不幸かそんな彼等はまだ生きている。もう助かり様がないのに、だが彼等の行く末は先行ったお仲間たちと同じだ。ただそれが速いか遅いかの違いでしかない。
もっともその差によって永遠と思える程の苦痛を味わうのだが。
「あぁ……くそったれ!あれは“レイヴン”だ!死を運んでくる死神の鴉だ!」
その叫びも銃声の中に消えていく。鉛の塊はどんな命も平等に刈り取っていく。そこになんら不思議なものはない。ただ純粋な運動エネルギーを持った鉛の弾が人体構造を破壊していくだけの話なのだ。ただそのことを刈り取られている立場の者達は知る由もない。
銃声が止んだのはそれから数十分後のことだった。
どうでしたか?面白かったなら幸いです!
次回から書き溜めが無くなったので更新は遅くなります。




