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Guns Smoke Raven [傭兵は異世界でも武器をとるようです]  作者: 神無月 郁
第二部 第一章 傭兵と勇者として招ばれた少年
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四回目 出立の準備と王国の蛮業

お待たせしました!



 俺の目が覚めたのは湖から帰った後だった。すっかり夜が更け食事が用意されていた。


「本日はお疲れ様でした勇者様」


 俺は無言で席につき夕食を取り始める。あの美味しいミルクスープもあった。食事は美味しかった。ミルクスープを飲むと全てがどうでも良くなってくる。しかし自分の中でモヤモヤが滞留していた昼の力試しだ。


(俺ってそんなに強くないのか?)


 あんなに囃し立ててくれているが、結局湖を割って気絶した。これでこれから先やっていけるのだろうか?


 いやそもそも俺が異世界転生にしたのが間違いだったのでは?もしかしたら俺は勇者じゃないのかもしれないだってそうだこんな程度で勇者なんてありえない。きっと間違っているんだ物語でもよくある話だ。勇者として召喚された者が本当は違くて、別のところに召喚された者が本当の勇者である。もしかしたらそれかも知れない。だって此処には他にもこの世界にやって来た同郷の異世界人もいるし……だったら本当は他の所に召喚されたであろう人物が勇者なのか……?


「勇者様どうなされました?」


「ひっ!?……いや何でもないです」


 と言ったものの小さな悲鳴が漏れてる上に顔に完全に出ている。


「勇者様こちらにおいで下さい」


 言われるがままに彼女の元に行くと彼女は俺をふわりと俺を包み込んだ。


「な、なにを……!?」


「勇者様…大丈夫ですよ。貴方様はまだまだ此方に来たばかり何も問題はございませんよ」


 彼女は柔らかく、そしていい匂いがした。



 いつの間にか彼女の唇が彼のと重なっていた。ゆっくりとそして長く、小鳥の啄み様に唇を重ねる。



「……君とはまだ会った。ばかりだろう?」


「愛というのは時間ではありませんよ」


 ダメだと分かっていても抗えない。甘い香りにすごく良い雰囲気。こんなの抗える訳がないだって男の子だもん。


「勇者様……一緒に何もかもも忘れて溶け合いましょう?」


 その言葉でもうダメだった。まるで誘蛾灯に誘われる一匹の羽虫の様にフラフラと彼女の唇へ自らの唇が伸び近づく。


 それはからは記憶はほぼない。ただ浅ましい獣欲と溢れ出る程の快感が身を駆け抜けて行ったのは覚えている。










 翌日起きたら彼女はいつも通りだった。だけど妙に自分との距離感は前よりも近い様な気がした。


 ゆっくりとこちらの世界の事を学び強くなってと言うことになった。自分自身もその事を痛感した俺は異世界に来て増長していたのかも。もう少し慎重にやっていっても良いかもしれない。


 とりあえず三ヶ月この教皇国内を馬車や歩くなど旅の仕方や基本的な剣の戦い方などを学ぶこととなる。野営の仕方や戦い方を知らずに外に出てしまえばあっという間にやれてしまうだろうとの事だ。


 全くもってその通り。俺はそういうものはズブの素人だ。1から学んだ方が良い。


 昨夜までの向こう見ずな行動が嘘のようだと我ながら思う。これも一つ大人になった証拠なのだろうか。


 それから3ヶ月間俺とメリスは教皇国内を二人旅をした。と言っても毎日という訳ではなく、一週間ほど旅をしたら街に戻り座学や剣の修錬をするそれを三ヶ月間行った。


 安息日もあったがそれでもハードな日々だった。それでも行えたのはメリスが側にいてくれたからだった。彼女とは……まぁそういう関係は続いた。


 彼女なのかと言われれば……どうなのだろうか?


 告白したかと言われれば否だし彼女から好きと言われた訳でもない。それでも彼女は『愛に時間は関係ない』と言っていた。なら付き合っているのだろう。聞く事は恐くてしたくなかった。


 あっという間の三ヶ月間だった。高校の何もない日々と比べ物にならない程に充実していた。


 成長もした。直ぐにへばっていた足腰体力は一日歩いても大丈夫になり、剣も前より格段に鋭く振れる様になっている。


 そろそろ旅立ちかなと思っていたある日ジブさんに呼び出された。


「状況が変わりました。勇者様の出立はもう少し後にしましょう」


 何でもとある王国で十字教の信者らが弾圧され処刑されたそうである。それは惨たらしく数百人規模で火刑に処され死体は吊るされ鳥獣の餌にされたというのだ。


 聞くには十字教徒は無抵抗で何も罪を犯してないそうだ。なんて蛮行が行われているのだろうか!


 無抵抗の者達を惨たらしく殺すなど狂気の沙汰だ。俺はこの3ヶ月間教皇国を旅し十字教徒の人達と関わってきた。とても優しく暖かみの深い人達だそんな人達を……


 許せない俺の心はその気持ちで一杯だった。


「勇者様どうか御心をお鎮め下さい」


 その心を沈めてくれたのはメリスだった。ギュッと俺の手を握り優しく諭してくれた。


「勇者様これもすべて悪逆を尽くす王達と諸悪の根源である魔王が原因です。勇者様にはこれから出発までさらなる修練をお願い致します」


 こんな状況だ。本当なら直ぐに行くべきだがまだまだ力不足を己も感じていた。十数人ならまだしも数百人、数千人とならば恐らく一たまりもない。ましては一国を相手するのは無理だろう。


「出発はそうですね更に三ヶ月後といたしましょう」


 もっと頑張ろうと思った別に十字教の為とかではない。圧政に苦しむ者達を救いたいそれだけだった。


 更に三ヶ月間。俺は一生懸命剣の修錬を行った。体作りも行いご飯もよく食べた。特にあのミルクスープはここにきてからだいこうぶつになった。


 そしたらやっとジブさんから許可が出た。餞別に金貨や馬車まで用意してくれた有り難い。メリスも付いてくる。もう彼女がいないなんてありえない。俺達は教皇国をから旅立った。


 やっと俺の冒険が始まったのだ。
















 さて向こう見ずな青年は旅立った。しかし彼をこのまま見続けるのは正直ダルい。ならこの世界で妙な信念をもって生き足掻いている傭兵に視点を変えようでないか。




どうでしたか?面白かったなら幸いです!


違法ドラッグには服用するとネガティブな感情を呼び起こす副作用がある奴もあるみたいですねぇ此処に書いた理由は特にないです(棒)


 勇者くんのお話は一旦ここで終わります。次の出番……さぁ?次からは傭兵に場面が移ります。




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