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Guns Smoke Raven [傭兵は異世界でも武器をとるようです]  作者: 神無月 郁
第二部 第一章 傭兵と勇者として招ばれた少年
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3回目 勇者の力とは?

お待たせしました!




 目が覚めればそこはベットの上だった。昨日の後半ほとんど記憶がない。


(確かすごく眠たくなって部屋に案内されたんだったな)


 となりの机に置いてあった水瓶から水をコップに注ぎ一息に飲み干す。冷たい水が体を浸すとだんだん頭が冴えてきた。


 そんな時、扉がノックされる。どうぞと声をかければこれからの旅の補佐をするらしいメリスだった。


「おはようございます勇者様、良い朝でございます。朝食の準備は出来ております」


 彼女はそういうとそそくさと俺の衣服を整え始める。寝巻きから今日着る服へと着替えるのさえ俺の手はない。そんな事しなくて良いと言うが彼女は、「これも務めですので」と言って聞かず結局最後まで彼女にまかせた。


(そうえば俺いつ着替えたっけか?)


 昨日着替えたか。はたまた着替えてないのか。答えは霧の中だ。だが現に服は寝巻きだったのだから着替えたのだろう。


 服は俺が着ていたものではなくこちらの世界の衣服だった。元の服はどうやら洗濯してもらっているだという。


 ベットの隣にあったテーブルの席に着くと直ぐに朝食が並べられた。


 パンにミルクスープ、それと何かの肉。聞けば豚の様な生物の様だ。味もそれに近く食べていて嫌悪感がない。


 というかミルクスープが美味すぎる。これまでのどんな料理よりも美味しい。いせかいのりょう理と言ったら粗食と決まっていたか、それもあくまでもにょかたりた。げんじつはこんなにもおいしい。


 なんかいもおかわりをしていまったた。


「本日は勇者様のお力を確かめる予定でございます」


 最後のミルクスープを飲み干したちょうどその時彼女は告げた。要は力量を図ると言うことだろう。今の自分がどれほどの力があるのかあちらも気になっていると言ったところか。


「わかったすぐに準備あしましゅる」


 何やら先ほどから呂律が回ってないが寝起きだからだろうか。いやいやしっかりしなきゃと顔を洗ったりなんやりしていたら元に戻った。





さてこの力どれほどのモノなのか俺も知りたかったその機会が早速来たのだ。カリヴァーンは俺の剣はどこにあるか室内を見渡す。


 すると見事に装飾された鎧なと共にカリヴァーンは安置されていた。


「あちらの鎧は勇者様専用に拵えさせて頂きました」

 

 何時の間に作ったのだろうか、いや此処は異世界なのだすぐに作れるのかも知れない。着込んでみると見事に体に馴染む。まるで羽毛を着込んでいるかの様だ。


「お気に召した様ですね良くお似合いです。ではご案内しますね」


 彼女に先導され部屋から出てそのまま聖堂に通された。どうやら自分が寝ていた部屋はこの大きな教会の一室だったらしい。


 聖堂にはあの修道服の少女が祈りを捧げていたる。美しかったまるで有名な宗教画をそのまま抜き出したかのようであった


「おはようございます勇者様。良い睡眠はできましたか?」


 一通り祈りを捧げ終えるとくるりとこちらを向く。メリスが膝をついて礼をしたのでつられて自分も頭を下げた。


「ふふっ良いのですよ勇者様が私の様なモノに礼などするなんて」


 彼女はクスリと微笑む。銀色に輝く髪がたおやかに揺れ本当に天使かの様だ。


「お陰様でぐっすりでしたよ。それで俺の力が見たいんですね?」


 自分で言っていてなんかとても異世界主人公みたいだなと思ってしまう。実際異世界転生してるし、自分で言ってなんか感動してしまった。


「勇者様もご自分のお力もお知りになりたいでしょう?」


 ごもっともと頷くと聖堂の外へと案内される。思えばこの世界に来てから初めての外だ。彼女が扉に手をかけ開ける瞬間、自分は緊張と興奮が入り混じった心境だった。


 扉を開けて外に踏み出した。


 外は西ヨーロッパの旧市街の様な美しい街並みだった。煉瓦造りで街全体が赤みを帯びている。まるで童話の世界の様だ。


 目の前には馬車が停められていた。これで移動する様だ。自分もメリスと修道服の女性、確かジブと呼ばれていたかな?……この三人が乗り込むと馬車は進み始めた。


「あれ、え〜とディアーチルさんでしたっけあの人は来ないんですか?」


「彼女はお寝坊さんでしてね。昨日もお酒を飲まれていましたし、多分まだ眠っていますよ」


 彼女はやれやれと言った感じだった。何時ものことなのだろう。


そんな他愛も無い雑談をしていると段々と建物が少なくなってきた。どうやら力試しは街の外でやるようだ。ふと車窓から街並みを眺めると何か違和感に襲われる。


 なんと言おうかそこにあるべきものがない。そんな感じだ。それに気づいたのは街を抜けその全貌を遠くから見た時だった。


「この街には……城壁は無いんですね」


 そうだこの街には城壁がない。街を外敵から襲われない様にする為の城壁。その相手はこの世界では敵国だけではなく、魔王という明確な人類の敵が存在するのだ。無い方がおかしい。


「ええ、この街だけではなくこの教皇国には城塞都市はございません。他国では存在する様ですがこの国には必要ありませんからね」


 彼女が言うにはこの地にはモンスターと呼ばれる悪しき生き物はこの国から駆逐され安全が確保されているらしい。故に街をモンスターから守る壁、すなわち城壁は要らないと言うことだ。


「ですが外界からモンスターや他の脅威が来ないとは限りません。そのために国境に壁を建てました。それが約五十年前です。」


 勇者様が話された城塞都市ですが言うならばこの国が一つの大きな城塞に囲まれた国なのです。とメリスが言う。


 たしかに脅威がなければ都市に壁を作る意味はない。魔王の勢力もこの辺まで来てない様だ。元の世界でも城郭都市ってのは侵略者から守るためだったしな。


 そんなこんなで俺たちは聖堂があった街から数時間ほど揺られある湖についた。周囲を森に囲まれ、湖畔の反対側には小高い山がある。ピクニックやキャンプにはうってつけの場所だろう。


「ここでしたら存分にお力を発揮することが出来るでしょう」


 確かにどれほどの力があるか分からない以上、下手に街の近くでやるには危険なのだろう。こういう場所なら人に当たる心配もない。思う存分にやれるという事だ。


 それではとジブはどこからともなく金属甲冑を俺の目の前に安置させた。言葉の通りだ。まるで魔法の様に虚空から金属甲冑を召喚したのだ。


これが魔法と言う奴なんだな……また一つ異世界に来たという実感を持てた。


「先ずはこの鎧を切ってみましょう」


彼女はサラリとそんな事を言うがまず無理だ。そもそもが金属甲冑というのは剣や弓矢を無効化するべく作られる。それを切ろうとするのはまず無理と言って良い……普通では。


「分かったやってみます」


 やれる自信があったこの剣なら必ず両断できる確信があった。


 スゥ……ハァ……ッと大きく深呼吸し剣を振りかぶる。俺は剣の振り方を知らない。だから思いっきりやるこれしかない。


 渾身の力をこめた一刀を振り下ろす。剣術で言えば上段振り下ろし……大きな空斬り音と共に鎧は真っ二つに斬られた。



 まさに一刀両断だ。



 まるで物を切った感覚や手応えはない。まるでとろけたバターを切るかの様な感覚。


「すげぇ……」


 その一言にしか出なかった。この剣のカリヴァーンの切れ味はまさに天下一品だ。


「……成る程その様な力ですか」


 ジブは何か分かった様に呟いた。何が分かったのかそれを聞こうとすると先に彼女は剣先に指を指す。


「そちらをご覧下さい。そこに魔力が溜まっているでしょう?それが剣の切れ味を増幅させているんです」


 と言われても何がなんだかよくわからない。だがジッと見ると何やら青っぽいオーラがほんのりと残留しているのが見えた。


「剣に魔力を纏わせて色々な力を付与する。魔法剣士の技としては初歩ですが、往々として奥義は原点に戻るものです」


 初歩にして奥義……成る程そういうものなのか?いやでも空手でも正拳突きで始まり正拳突きで終わると言われてるらしいしそういう事なんだろう。


「恐らくその魔力を飛ばす事も可能だと思います」


 イメージとしては意識を体の前にある力を外に放出する感覚……


 と言われてもこちとらそんなの一度もやってことがない身いきなりできるわけがない。


「手本とかないですか?」


 俺がそういうとメリスが手をかざす。すると彼女の目の前にボウッと小さな炎が現れそれがみるみるうちに大きな火球となった。


 それを湖に向けて放つ。火球は物凄いスピードで飛翔し湖水に着弾……爆発と大きな水飛沫が湖畔を揺らした。


「これが魔法です彼女は数少ない癒し手の一人でございます」


 こんな力を見せられたらこちらも本気となるものだ。俺もよりも歳の低い女の子がこれほどの力を持っているのだから勇者の俺が持ってない訳がない。


 大きく息を吸いゆっくりと吐くとカリヴァーンを握り直しまた一度振り上げる。


 意識を剣先に集中させる。そうすると剣先に魔力と思われる青いオーラが纏い始めた。


 この感覚か……なんと言うか細長い筆で文字を書くかのような繊細さと根気がいる。だが一度、繋がりだろうか?ができると一気に魔力を剣に送ることができるのだ。


 剣先に溜まっていた魔力は剣全体に纏わり、まるで蒼き炎の様に揺らめいている。


「その魔力を湖に向けて放って下さい!」


 その声と同時に俺は剣を振り抜いた。



 閃光と轟音が俺の体を貫いた。。



 眩い蒼い閃光と共にまるで金切り声を上げる切断機の様な轟音。そしてとてつもない突風が三人に降りかかった。


「うぉぉぉ!?」


 俺は目を瞑り閃光を遮り止むのを待つ。それで薄い目蓋越しに閃光は俺の網膜を焼いた。5秒か10秒程だろうか、俺の斬撃?は治り結果が見えた。


「素晴らしい威力です勇者様」


 湖が真っ二つに割れていた。


 綺麗に湖畔には一筋穿れた後が残りそれは反対側まで続き岸部を超えて森すら穿っていた。その周りの水は蒸発しており今も水煙が立っている。


「すごいです勇者様!」


 メリスの興奮した声が聞こえてきた。俺はそれに応えようと後ろを向こうとして……膝から崩れ落ちた。


「勇者様!?」


 驚いた彼女が急いで駆け寄り肩を貸してくれる……デジャブだ。前にもしてもらった様な気がする。


「急激な魔力の使い過ぎですね。急激に使いすぎると体力などが失われるのです。ちょっと練習すればもっと魔力のを使うことができますよ」


 訳もわからず全力疾走してバテた感じだろうか?段々と眠気が思考に混じってくる。


「今はお休みなさいませ。これから頑張って行きましょう」


 ジブの手が頬に触れるすると急激な眠気と共におれの意識は落ちていった。











「少し期待外れですね」


 魔力の使い過ぎで眠りに落ちた勇者を馬車に置き彼女達は割れた湖畔に立っていた。すでに湖に穿れた跡には水が流れ込み跡形もない。


「もう消えて久しい民間伝承の片翼の白梟と呼ばれた邪神……いえ剣聖は山を切ったとされてます。ですがアレは地面を少し穿っただけ……少し計画の変更が必要ですね。貴女はどう思いますか?」


 これでは各地の蜂起には間に合いそうにない。なればじっくりいくしかない。これは半世紀ごしにこの身にやってきたチャンスなのだ。次は百年後?千年後?


「はい天使様。確かに勇者様のお力はまだまだでございますがあれはまだ魔法剣士の初期段階、もう少しお時間が必要だと思います」


 確かに彼女の言っている通りだ。始めは誰しも文字の使い方を知らない。段々と学び成長するのだ。だがやっぱり間に合いそうにない。


 そうえばと彼女は懐から小さな皮袋を取り出した。


「コレはちゃんと食事に入れたかしら?」


「ええ勿論です。勇者様も気に入った様ですよ」


 なら良いわと袋を懐に戻す。これが回ればもう自由自在だそう焦ることもない。


 今はまだこの手ひらから一度もこぼれ落ちた事がないのだから。



どうでしたか?面白かったなら幸いです。


そうえばなんですが違法性のある薬を急激に服用すると呂律が回らなくなったりするらしいですね。まぁ関係ない話なんですけどね(棒)

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