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九五話

おまたせしました!



「王女とその夫を捕まえた!捕まえたぞ!」


その声は大広間中に響き渡った。賊達は歓声を上げ、貴族達の表情は曇る。死刑執行のカウントダウンが更に縮まったからだ。


(何故!?あの者達がミスをする訳がなかろう……!?)


彼等と共に過ごした数ヶ月。彼等が有能、特に対人対処能力に優れているのは理解していた。それと仕事に対する真摯にな態度も。


「よく見つけましたね」


「へへぇ、東の塔で隠れていたのを見つけたんで、とっ捕まえやした。なんでも護衛が逃げ出したそうで哀れなもんですなぁ」


その言葉に違和感を覚えた者が三人いた。ソフィアとフィーネ、それにゴトフリートだ。


(何故インがおるのにレイヴンが……モリタカがおらん……?)


あの男に対して忠誠……否、信奉すらしている少女が一緒に捕まっている。こんなに可笑しい話はない。


彼一人で逃げたのか。あり得ない。そこらの放浪騎士よりも契約と面子を重んじ、仲間を見捨てる事はしない。護衛している者を置いてくなど言わずもがな。


(考えろ……彼奴らは何かしようとしている)


彼等はスルスルと貴族諸侯が集められている場所へと向かい、彼等の最前列に立つ。


連れてきた賊の二人は直ぐ側に立っていた。


『ソフィアちゃん。フィーネさんを連れて近づいてきて下さい』


無線からの指示に従い彼等の近くへと近づくソフィアとフィーネを見てゴトフリートは確信した。


(絶対なにかする。今は待つとしよう)


我が息子は基本的に慎重な性格だが、時として大胆果敢に行動をする。特にこういった危機的状況では。


「さて揃いましたね……皆様方お初にお目にかかります、私、十字教のシスターをしています。本日はこの国に我等が主の教えを説きに参りました」


「レディ、教えを説くにしては乱暴ですな。それに無理やりとは頂けない」


国王の事など無視し名も無きシスターは言葉を続ける。


「我が主の教えはとても寛容です。豚よりも醜く肥え太ったあなた方も必ず救われるでしょう」


「ワシらは君達を排斥するつもりはない。まずは話し合いから始めないか?」


こちらの話など聞く耳を持たず。されどこちらを光あふれる目で見る。


「主よ我々はこの哀れにも悪魔に憑かれた豚どもに慈悲を与えました。しかし彼等はその慈悲を侮蔑し吐き捨てるのです!」


目の前の貴族の一人の首に刃を突き立てた。喉からゴボゴボッと赤い血が流れる。悲鳴が木霊する。


この時捕まっている者達は気付いたというか理解した。


(あ、コイツやべぇ奴だわ)


狂人の類に此方の言う事など聞くことはないだろう。


「シスターとやら、聞きたい事がある」


「……おやなんでしょうかルドガー・フォン・ヴィトゲンシュタインさん。貴方も我等の主を崇めたくなったのですか?」


グリンっと黒服のシスターは彼のほうを向く。


「考えても良いが……君達の神は他人を傷つけるのを許容するのか?他人の物を奪うのを許容するのか?」


「主は我等にこの地を統べる権利を与えて下さいました。故にこの地のモノは我等のモノなのです」


その言葉を聞いたルドガーは鼻で笑った。


「……なにがおかしいのです?」


「つまりは君達の神は暴力を許容し他人のモノを奪うのを許すのだな。なんとも野蛮な神なのだな」


空気が張り詰めた。シスターから特にシスターから殺意が漏れてきている。


「おいルドガーよこの状況をわかっているのか!?」


「大丈夫です父上。これも作戦の内です」


後ろに来ていたゴトフリートを無視し彼は彼女を見続ける。


「貴方は……死にたいのですね」


「はははっ今日婚姻したばかりですよ」


ジリジリと白ずくめの賊達が近づいてくる。近くの二人の賊も剣を抜く。


この時、違和感を覚えた者が一人いた。ゴトフリートだ。近くの二人の賊が何かおかしい。


(そうだ……剣だ。剣が違う……!)


ちらりと見えた剣の柄。そこにはある紋章が施されている。


その紋章とは国王直轄を意味する剣と蛇。賊がこんなものを持っている訳がない。この紋章が意味する事はこの者達が王国に属する事を意味する。


剣身以外に血汚れは見えない。つまりは奪われたものではない。


「私はこの国を愛している。母なる川も大いなる大地も愛している」


それが何を意味するのか。


「我等は民と生き、この地を守る者達だ。君達の様な者共に屈することはない。天は我等を見放すことはない」


彼は高らかに天井を指さす。つられて皆が上を向いた。


「我等は卑劣な敵に屈することはない。君達の神が許しても我等の大地が川が赦すことはない!さあ……」


クルリと振り返った王女は静か皆に告げる。それは彼が言い終わると一緒だった。


「皆さん目を閉じて伏せなさい」


「鴉が太陽と厄災を掴んで降りてくるぞ」


何処かで窓が割られたと思った瞬間。



大広間は真っ昼間の様な光に包まれた。



光と共に鴉は舞い降りる。



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