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九十四話

おまたせしました!生暖かい目で見てくださると幸いです!



まず始めたのは現状の確認だった。兵力、物資、情報。それを確認しなければ計画は成り立たない。


「兵力は20名足らず物資は殆どなく情報も殆どないですか……」


やはりと言うべきか現状は最悪の一言で決着する。兵は守孝やインなどルドガーの護衛を抜くと18名しか居ない。しかもこれは何とか落ち延びてきた敗残兵。


ここにいる者達で鎮圧するのはまず無理だろう。


「そうえば君達はあの銃?と呼ばれる飛び道具はいま持っているだけなのか?」


「あの時はインに隠し持たせてましたからね。それにこれはまくまで護身用。今回の様な大人数には向いてません」


彼はベルトに挟み込んでいるグロック19を取り出す。本当は取り出したのだが余計な事は言わない。


「では銃はそれだけなんですね…」


「ん?いえ持ってませんがこの部屋には置いてありますよ」


彼がインに目配せをしある大きなカバンを持って来させる。開けるとそこには……


「一応用意しておいたんです。案は少しながら考えてます」


それではと守孝は着替えるために一時的に別室に移動する。


「あー……くそいてぇ。流石に焼いて止血はやり過ぎたか」


別室に移動するなり彼は崩れ落ちる様に膝をつく。右腹が焼ける様に痛む。実際焼いた。


「……モルヒネとは言わないが痛み止めでもあればなぁ」


動くたびに脂汗が身体中から吹き出る。正直歩くだけでやっとな状況である。


「何故……何故マスターはそこまでやるんですか?」


いつの間にかインが部屋に入ってきていた。手に持つタオルで彼の身体を拭く。


「さあな。俺が傭兵でレイヴンだからかな」


彼は自嘲気味に笑う。


「ですが状況が悪くなったら逃げるのも傭兵なのでは?」


戦闘服を着込むのを手伝いながら彼女は問う。スッと彼女の白い細指が首をなぞった。


「そうかも知れんな。俺も状況が状況なら直ぐに逃げてたさ。だがあそこにはソフィアが仲間がいる」


タクティカルベストを着込み装備を身につけていく。


「気分はどうですか?」


「葉巻の一本でも吸いたいぐらいさ」


彼女がM19を渡す。彼は使い心地を確認し、ホルスターに収めた。この男はタバコは彼方に放り投げる人種である。


「死んだら許しませんからね。もし死んだら生き返らせて監禁しますからね」


意味が分からないことをと思った瞬間だ。インは守孝の首筋にキスをした。


「はぁ……どこでそんな事を覚えた?」


「さぁ……私は貴方様の従者ですよ?」


手に持つ銃のボルトを引く。初弾が薬室に装弾され今か、今かと引き金が引かれるのを待つ。


「まあ良い話は後でたっぷり聞かせてもらうことにする」













豪華絢爛な舞踏会が行われていた王城の大広間。今そこは白ずくめの集団、十字教というカルト教徒が占拠していた。


その殆どを貧民窟の住人が占める。金と飯、それと貴族という特権階級を打倒できるという高揚感の為にここにいる。


貴族達は地べたに座らせれ一塊に集められていた。屈辱的だと思う者達は賊達を噛み付く様な表情を見せているが動く事は出来なかった。


「王女とその夫のルドガーは見つからないんですね?」


白ずくめの集団の中、黒い衣服を纏った女が指揮を取っていた。


「はい。恐らく逃げ出したのかと」


「……まぁ良いでしょう。仮に王都から脱出できたとしても出来ることはないですからね」


下卑た笑いが大広間に木霊する。絶望感が漂う貴族達の中で一人の男はホッとした表情を見せた。


(ルドガーと殿下は上手く逃げおおせたか。これでワシらが死んでも最悪どうにかなる)


ルドガーの父親であるゴトフリート・フォン・ヴィトゲンシュタイン伯爵だった。あの傭兵達が上手く逃したのだろう。雇ったのは正解だったと確信した。


「伯爵よ我が娘が逃げれたのは君の手の者だな?」


「陛下……アレに付けた家令が上手くやったのでしょう。後は我々の処断がどうなるか」


隣に座る国王、ヴィルベルト・フォン・サンマリア。ヴィルベルト二世である。


二人は久方ぶりの再開と縁戚関係になると言うと言うことで、少しばかり昔話に花を咲かせていたら、この状況となった。


「まぁワシたちは助からんだろうな。見せしめに処刑だろうよ」


その言葉はどこか他人事の様に聞こえた。


「陛下は落ち着いていらっしゃいますな」


「この状況じゃあ足掻いてもみっともないだけじゃからな。国王として最後まで毅然としていたい」


チラリと横を見ると無様にもメソメソ泣く貴族が何人か見えた。メソメソと泣いているのな面白のか賊に蹴飛ばされている者もいる。ふぅっとため息が漏れた。


「……確かにああはなりたくないですな」




ソフィアは鈍い頭の痛みと共に目覚めた。ミルク粥の様な頭の中から最後の記憶を取り出す。


(ああ、確か私は殴られて……ッ!)


鮮明になった記憶と思考。バッと立ち上がろうとするのを止められた。


「落ち着いてソフィアちゃん。無理に動いてはダメよ」


それはフィーネだった。周りを見ると先程まで楽しく(彼女自身は玩ばれて)いた貴族の婦女達は地べたに座らされている。


「師匠達は?」


「ここには居ないわ。兄様と殿下も居ないから多分あの人達が逃したんだわ」


依頼は達成できていると言う安堵と見捨てられたと言う絶望が半分ずつ心を占めている。


「大丈夫よ必ず助かるわ」


優しく頭を撫でられ少し気持ちが落ち着いてきた。


(師匠が何もしない訳がない……!)


敵に対して情け容赦ないと定評がある己の師匠だ。必ず何かしでかす確信があった。


『……ザザッ……あーあーっ……ソフィア聞こえるか?』


その時だ。耳を叩く電子音が彼女の耳に届く。


『師匠!』


『おっと動くなそのままフィーネさんに頭撫でられてろ』


ガバっと立ち上がろうとした所を止められ、彼女は目だけを動かす。見える範囲に彼は居ない。


『今から救出……いや敵殲滅作戦が始まる。取り敢えずは静かにしていてくれ』


また大きな事をと彼女は苦笑いをしそうになった。と同時に見捨てられてなかったと安堵した。


大広間のドアが開けられ大きな声が響き渡った。白ずくめの男達が四人の男女を連れてきている。その内二人は明らかに身分が高いのが分かる。


「王女とその夫を捕らえましたぜ!」


……しでかす方向が間違ってる気がしてきた。



どうでしたか?面白かったなら幸いです

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