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九話



インとの話し合いも終わり今日の予定を立てる。


「では、マスターこれからどうされますか?」


「そうだな、……一先ずインの冒険者ギルドの登録をしとくか。その後は依頼を受けるぞ。インの実力も知りたいしな」


「かしこまりました」


ウェイターに礼を言い酒場を出る。ギルドの受付に行く前に一度納屋に戻りシーツを回収する。言い忘れていたが、グロック以外の武器と装備は全て[ピースメイカー]の中に戻してある。朝から重い荷物を持ちたくなかったし、納屋に置いとくのは防犯上よろしくない。


回収したシーツを返却し、宿屋のおばちゃんに礼を言った。


「あら~お礼なんて良いわよ~これも仕事だから~。今日は納屋でなく部屋の方に泊まるかしら~?それなら今のうちに予約ができるわよ~」


まだ金には余裕が有るし、インの事もある。素直におばちゃんの提案に乗ることにしよう。


「じゃあ予約を頼みたい」


「了解よ~。どの部屋かは夕方教えるわ~。それで~その子は誰~?酒場で目立ってたわね~昨日は居なかったわよね~?」


まあ、聞かれるだろうと想像していた。インについてのカバーストーリーは既に考えてある。


「あー、この子な。この子はつい………」


「私はマスターの忠実なる従僕でごさいます。この身、この体の全てはマスターである守孝様の物でごさいます。」


インに言葉を遮られ、そしてインの言葉に固まってしまう俺。


「おま……イン!お前は何を言っているんだ!?」


「うふふっ、モリタカさん分かってるわ。今の言葉はそこのインちゃんでしたっけ?その子の悪ふざけでしょう?でもね、悪ふざけでも女の子にそんな事を言わせちゃ駄目よ?」


さっきまでのほんわかした口調から打って変わって優しげだがしっかりとした口調で話す宿屋のおばちゃんからは、ノー言えない凄みを感じる。


「はい!ごもっともです。すいませんでした!」


「ふふふっ。モリタカさん今後は気を付けて下さいね。そしてインちゃん?軽々しく女の子がそう言う事を言うじゃありませんよ?」


「ですが、今言ったのは事実で………」


「いいですね?」


「……いや、私は本当にマスターの……」


「い い で す ね ?」


「は、はい!わかりました!」


粘っていたインもついに宿屋のおばちゃんの迫力に負けてしまった。あの迫力は何処から来るのだろうか?やはり女は強しか?


「分かれば良いのよ~。じゃあ今日もお仕事頑張って来るのよ~」


おばちゃんに見送られて宿屋を出る。一度インに釘を刺した方が良いな。


「お前なぁ、公衆の面前で何であんな事を言ったんだ?」


詰め寄りながらインに聞く。


「いや、その、私はマスターの物であると言った方が良いと思ったんです」


「何でだ?」


「何ででしょうか?私にも分かりません」


この様子だと自分でも分かってないようだ。自動人形でも分からない事が有るのだろうか?


「……はぁ、気を付けろよ?この街に来てまだ二日目だぞ、変な噂が流れるのも困るからな」


「かしこまりました。次からは気を付けます!」


フリじゃなきゃいいが……と思いながら、インの登録のため冒険者ギルドの受付の列に並ぶ。受付嬢は昨日と同じくフィールさんだった。


「あら、モリタカさん。朝から話題になってますよ。見知らぬ黒髪の男が、銀髪のメイド服を着た美少女と酒場でご飯を食べてるって。やっぱりモリタカさんのことですよね?……それで、そちらの方は?」


宿屋でも言われたから何となく予想していたが、やはりギルドまで伝わっていた。


「はじめまして。私の名前はインと申します。私は守孝様の忠実なるじゅ…………!?」


危険な発言をする寸前に口を塞ぐ。あぶねぇ、こいつまた言いそうになりやがった。


「モリタカさんどうしたのですか?」


「はははっ、何でも無いですよ!こいつはイン。俺も朝出会ったばかりなんです。それで、冒険者ギルドに登録するって聞いたから、依頼を一緒に受けようって話になったんですよ」


俺は早口で説明する。フィーネさんから少し猜疑の視線を感じるが、一応納得してくれたようだ。


「ムグムグム!……ムグゥ!」


インが何か言いたそうに必死にもがいているが、俺の手が邪魔で喋れない様だった。


「イン、お前、さっきの続きを話さないと誓えるなら手を外してやっても良いぞ」


インはコクコクと首を縦に振ったので、手を口から離してやる。


「ぷはぁ!……マスター!何で私がマスターの物であると言っては………むきゅっ!?」



固めた拳でインの頭に拳骨を食らわせる。可愛い声を出しながらインは頭を押さえる。自動人形にも痛覚があるようだった。


「むきゅうっ……痛いですマスター」


「正当な罰だ。失言に気を付けろって言ってるだろ!」


「そう言われましてもー、私は普通の事を言っているだけでー」


頭が痛くなってきた。フリーダム過ぎるだろ自動人形。俺はこの先大丈夫だろうか?ふと、視線を感じて前を見る。そこには、笑い声を出ないように必死に耐えているフィーネさんの顔があった。


「あの?大丈夫ですか?」


「ふふふっ。ご、ごめんなさいね、モリタカさん。貴方とインちゃんのやり取りが面白くって」


「は、ははっ、それは良かった。じゃあインのギルド登録をお願いしますね、はははっ」


そんなこんなで……インの冒険者ギルドへの登録を済ませ、二人で依頼を受けたのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 第二部楽しみです [気になる点] 誤字報告機能を使われていないようなので 今話の序盤にある (←意図せぬ改行が起こっているようです) とは作者様自身でつけたものでしょうか?
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