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追いかけ合い、化かし合い

「……ええ……恐らく……はい……」

 探偵局に電話連絡を行っているアデルを放って、エミルとグレッグは夕食を食べ始めた。

「流石、探偵さんですね。犯人像を絞って、イクトミ氏と突き止めるなんて」

「そこまではいいけどね。問題はそこから先よ。犯人が分かったところで、そいつの居場所が分かんなきゃ話にならないわ」

「……ですね」

 エミルはベーコンを口に放り込みつつ、未だ電話に張り付いたままのアデルを眺める。

「……あー……なるほど……捜査官を……」

 と、アデルがぼそっとつぶやいた言葉を耳にし、エミルはアデルに尋ねる。

「尾行しろって?」

「ぅえ? ……ええ、……ええ、エミルが、……はい」

 アデルは電話口に手を当てつつ、エミルに振り返る。

「『その通りだ』、だとさ」

「分かったわ」

 エミルの返事を聞いて、アデルは再度電話に応じる。

「はい、オーケーです。……ええ、じゃあ」

 電話を切り、アデルが振り返る。

「何で分かった?」

「それしかないでしょ?」

「え? え?」

 きょとんとしているグレッグに、アデルが説明する。

「昼間いた、あのジェンソン・マドックって捜査官。あいつもイクトミを追っていると見て間違いないだろう。

 イクトミはあちこちの州で指名手配されてる、超一級のお尋ね者だからな。捕まえりゃジェンソン刑事の組織には相当の箔がつく。恐らくはあの刑事、そっち方面から捜査してたんだろう。その過程で、ここに来た可能性は高い」

「あたしたちと同じく、黄金銃を探すのが目的ってことも考えられるけどね」

「いや、その線は薄いだろう。

 俺たちが黄金銃を探してるのは、ポートマンJrらの依頼によってだ。特に依頼されたわけでもないのに、わざわざこんなド田舎まで、黄金銃のためだけに来るとは思えない。イクトミを探してるのは、ほぼ間違いないだろう。

 あの刑事もそこそこ有能だって話だし、今日の捜査でイクトミの線が濃いだろうと結論づけたはずだ。となれば連邦ナントカって組織から、奴に関する何らかの情報が提供されてるはずだ。

 非公式とは言え合衆国政府お付きの組織だ。俺たちの知らない情報源をゴロゴロ持っていてもおかしくない」

「なるほどね。それじゃ次の狙いは」

「ジェンソン刑事、だな」




 翌朝、エミルたちは近隣の宿を当たり、早速ジェンソン刑事が泊まっている場所を突き止めた。

 しかも情報によれば、彼は泊まっていた宿を今朝になって突然チェックアウトし、そのまま街を出ようとしているとのことだった。

「そりゃいい。奴さん、早速追ったようだな」

「急ぎましょ。もう列車が来てるわ」

 エミルたち3人は、急いで駅へと向かった。


 それから3分後――グレッグが列車に乗り込んでから一瞬後、あのジェンソン刑事がのそ、と窓から身を乗り出し、かばんを外に投げる。

「よっこいせ、……っと」

 続いてジェンソン刑事自身も窓から降り、ホームに戻る。

「あの、ちょっと」

 声をかけてきた駅員に、ジェンソン刑事は手を振って返す。

「忘れ物だ。気にせず出発してくれや」

「は、……はい」

 駅員は何度もジェンソン刑事の方を振り返りながら、車掌に合図を出す。

 そのまま列車が走り出したところで、ジェンソン刑事は煙草を口にくわえ、クックッと笑い出した。

「アホ探偵共が。尾行に気が付いてねーとでも思ってんのかよ」

 笑いながら、彼はコートのポケットを探る。

「どうぞ」

 と、彼の前にライターが差し出される。

「おっ? 悪い、……な」

 ジェンソン刑事は目の前の二人を見て、口をぽかんと開ける。

 その口から煙草がぽろっと落ちたが、エミルはそれを空中でつかみ、ジェンソン刑事の口に、元通り差し込んだ。

「……畜生め。あのボンボンは囮ってわけか」

「悪いなぁ、刑事さん」

 アデルはライターを向け、彼の煙草に火を点けた。

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