表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

不良刑事

 エミルとアデルはグレッグを伴い、クレイトンフォードのポートマン邸を訪れた。

「ふーん……。いかにもって感じ」

「だな」

 目の前にそびえる建物は欧州風の、西部にはむしろ不釣り合いな洋館だった。

「『ヨーロッパに憧れた成金の田舎紳士、祖先に思いを馳せつつおっ建てました』。……って感じだな」

「あんまり親父の悪口言わないでくださいよ……」

「悪口に聞こえたかしら?」

「そりゃまあ」

 渋い顔をするグレッグに構わず、エミルたちは屋敷内に入る。

「鍵は……、かかってないの?」

「ええ。中には何にも無いですから、もう」

 そのまま中に進み、エントランスに入ったところで、色あせたコートを着た、やはり西部者には見えない男に出くわす。

「何だ、あんたら?」

「あんたこそ誰よ?」

 尋ね返したエミルに、男は面倒臭そうに名乗った。

「ジェンソン・マドック。連邦特務捜査局……、ああ、いや、まあ、刑事みたいなもんだ」

「刑事さんですって?」

 男の役職を聞き、グレッグはきょとんとする。

「ここはもう、警察が捜査して引き上げた後のはずですけど」

「そう聞いてるよ。俺は別管轄でな、再調査に来たんだ。で、あんた方は誰だ?」

「申し遅れました。僕は……」

 名乗りかけたグレッグを制し、アデルが答える。

「俺とそっちのお嬢さんは、パディントン探偵局の者だ。彼は依頼人で、ここの持ち主の息子さんだ」

「と言うことは、グレッグ・ポートマンJrだな。彼については分かった。なるほど、ここにいる権利があるな」

 そう前置きし、ジェンソン刑事はアデルたちをにらみつけた。

「だがお前らにそんな権利は無い。とっとと失せな」

「何よ、それ」

 エミルは口を挟もうとしたが、アデルは「まあまあ」と彼女を制し、ジェンソン刑事に応じる。

「そう邪険にしなさんな。あんたもどうせ、黄金銃事件で来たんだろ?」

「あ?」

「ここの家主が持ってた黄金銃を盗んだ奴。そいつを追ってる。そうだろ?」

「だとしたら何だ?」

 ジェンソン刑事は煙草を口にくわえ、斜に構えてアデルをにらむ。

「あんたらとベタベタ馴れ合いしながら、仲良くみんなで事件解決に向かいましょ、てか?

 ヘッ、寝言は寝てから言ってくれんかねぇ?」

「……まあ、なんだ」

 アデルも多少、頬をひくつかせてはいたが、それでも穏便に済ませようと言い繕う。

「悪い話じゃ無いはずだろ? 双方情報を出し合えば、事件の早期解決に……」

 アデルの言葉を遮るように、エントランスにパン、と音が鳴り響く。

 ジェンソン刑事は絶句したアデルの鼻先に、硝煙をくゆらせるリボルバーを向けていた。

「今のは空砲だ。まあ、そうそうポコポコと、人死になんぞ出したかないからな。これでビビって降参する奴も多いから、一発目はカラ撃ちで勘弁してやってる。

 だがこれじゃ言うこと聞かないって奴には……」

 ジェンソン刑事はリボルバーに実包を込め、撃鉄を起こした。

「仕方なく、本物をブチ込んでやることにしてるんだ。

 分かったらさっさと出てけ。挨拶だろうと言い訳だろうと、これ以上ゴチャゴチャ言いやがったらブッ放すぞ、ボケ」

「……」

 エミルたち3人は無言で、屋敷を後にした。


「なんだありゃ……。ヤバすぎだろ」

「取り付く島もない、ってどころか、取り付かせる船も出させないって感じね」

「あの……」

 と、二人の後ろで縮こまっていたグレッグが、恐る恐る声をかけてくる。

「なんで僕まで追い出されちゃったんでしょう?」

「追い出されたって言うか……」

「あんたが一緒に来たんでしょ?」

「……でしたっけ?」

 きょとんとした顔でそう返したグレッグに、エミルたちは呆れ返っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ