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間抜けな田舎紳士

 応接室に通されたグレッグJrは、ひどく顔色が悪かった。

「お願いします。あの銃が無ければ、いや、もしくは保険金が降りなければ、僕は破産してしまうんです」

「と言うと?」

 尋ねたアデルに、グレッグは顔をくしゃくしゃに歪ませ、こう答えた。

「父は金脈を掘り当てたことで巨額の富を得て、有数の資産家となりました。僕もそのおこぼれに預かり、ちょっとした商売を行っていたのですが、……まあ、その。あまり業績が芳しくなく、今では多額の負債をかかえております。

 今年中にその負債を解消しなければ、会社は倒産。僕も破産を免れません。そのため、当初は父に無心しようと思っていたのですが……」

「ですが?」

「どうやら晩年の父は、相当に金遣いが荒かったようでして。

 表向きは資産家として知られていましたが、死後にあちこちから、借金の返済を求める声がかかりまして。

 それらを処分する内、10万ドル以上あったはずの資産は、あっと言う間に消えてしまいました。残るはあの黄金銃だけとなり、私はそれを競売にかけ、負債を帳消しにしようと考えていました。

 しかし父が殺された際、この黄金銃が盗まれていたことが発覚しまして。まあ、銃が戻ってこなくとも、保険金が入ってくるのならと安堵していたのですが……」

 そこでグレッグは顔を覆い、頭を抱えてしまった。

「保険金を請求したところで、ゴーディ君の罪が明らかになったわけだ。

 このまま支払いが行われなければ、アメリカとイギリスの両国で、紳士がそれぞれ1名ずつ消えることになる。

 しかし黄金銃があれば、その心配は無いわけだ。ポートマン氏は負債を消化でき、ゴーディ君は罪を問われること無く掛け金を丸儲け。双方不満なく終われたはずだが……」

「呆れてものも言えないわね」

 話を聞いていたエミルは、顔をしかめる。

「事業失敗も背任も、結局自己責任じゃないの。何が紳士よ」

 アデルも苦い顔で、それに同意する。

「まったくだ。因果応報ってヤツじゃないか」

 それを受け、局長も苦笑いして返した。

「まあ、まあ。確かに二人共、ほめられたことをしているわけじゃあない。私だって同感だ」

「ううっ……」

 全員一致でなじられ、グレッグは消え入りそうな声でうめいた。

「しかし依頼は依頼だ。黄金銃を取り戻すことができれば、両氏は破産せずに済む。我々も儲かる」

 局長の言葉に、エミルとアデルは首を傾げた。

「どう言うことです?」

「黄金銃を競売に出し、負債を消化できた後、余った金の75%を我々が契約金として受け取ることになっている。

 私のツテから聞いた黄金銃の予想落札価格は、少なくとも4万は堅いとのことだ。そしてポートマン氏の借金は残り約3万ドル。それを消化した、残り1万ドルのうち7500ドルが我々の懐に入る、と言うわけだ」

「なーるほど。計画通りに行けば、いい収入になるってわけですね」

「そう言うことだ。しかしこのまま放っておけば、我々には1セントの得にもならん。

 一方、ろくでもない男二人ではあるが、手を差し伸べてやれば金になる。それなら助けた方がいい。誰にでも納得行く話だろう?

 と言うわけでだ」

 局長はにっこり笑い、アデルとエミルに命令した。

「早速ポートマンSrシニアの邸宅に向かい、黄金銃の手がかりを探しに行ってくれ」

「……あえて言わせてもらうけど、局長」

 エミルは憂鬱な気分をどうにか押さえつけ、こう言った。

「こんなバカみたいな依頼、二度と受けないでよ?」

 それを受け、局長はふてぶてしく返した。

「金次第さ。

 例えまだオムツの取れないような3歳児から、よだれでベトベトになったクマちゃんを探してくれと言うようなチンケな依頼があったとしても、その親から報酬10万ドルを約束されたと言うのなら、私は二つ返事でOKするよ」

「ゲスなこと言ってる、……ように見えて、実は逆ね。

 金にならなきゃこんなバカ依頼は絶対受けるもんか、って聞こえたわ」

 エミルの言葉に、局長はニヤッと笑って見せた。

「そう言ったつもりだよ」

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