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12月17日 /
暖かな日差しと平穏な日常。
キラキラした笑顔を振りまく冬十の姿があって。
友人や先生も幸せそうな笑顔でいる。
俺の望んだ世界。
それが【夢】だって気づくまで時間はかからなかった。
…目を開けたくない
目を開ければ、何も変わらない白い世界が広がるばかりで
深淵に落ちた瞳を輝かせた冬十がいると分かりきっている。
あぁ…もっと眠っていたい。
永遠に眠ってしまいたいと考えてしまった。
だが一瞬よぎった過去の記憶が、その考えをかき消した。
まだ俺の【声】があった頃。
【その事件】は街が眠りについた最中のこと。
当時家族で住んでいたマンションで火事に巻き込まれた。
俺達の部屋の隣が火元だったのと、夜中の事故で両親もいなかったのも相まって
完全に逃げ遅れていた。
火事に気づいてから消防隊員に助けられるまでの十数分間
一緒にいた冬十のことばかり気に留めていたからか
冬十はかすり傷一つなく無事だったけど
俺は大量の熱気を吸い、気管のほとんどを焼いてしまっていた。
そして一酸化炭素中毒で倒れ、意識不明のまま眠っていた。
眠りから覚めた時に周りの人達に大喜びされた。
でも実際、自分の事はどうでもよくって
自分の事なんかより冬十の事ばかり考えていた。
そんな中で、俺に会いに来た冬十の言動がおかしくなっていた。
冬十が自分の事を【春一】だと言い出し
一人称が【俺】になっていたことに。
後で医者の先生に聞くと
「火事の精神的なストレスで人格障害が起きてるだけだろう」
そう言って口をつぐんだ。
そこから俺は【ハル兄ぃ】ではなく【冬兄ぃ】を演じることを決めた。
他の誰でもない【春一】が望んでいるなら。
せめて、そうさせてしまった俺から唯一の償いになるのなら。
…そうだった、忘れちゃいけない。
「ハル兄ぃ?考えごと?」
目を開けるとそこには
何も変わらない冬十の姿があった。
そうあの日から何も変わらない。
この気持ちを伝えたくて
ホワイトボードに字を綴った。
『俺の愛する冬十。俺は一生離れないし、愛するとと約束するから…だから俺を好きにして構わないから一緒に居てください。』




