少年の小さなお話(プロローグ)
小さな国の、小さな村に幼い少年が住んでいました。
少年は家族と、幸せに暮らしていました。
でも、ある日、皆笑ってくれなくなりました。
遊んでくれなくなりました。
身体だけ置いて、どこかへ行ってしまいました。
大切な大好きな人達が居た場所には、空っぽの身体と、紅い水溜まりと、黒焦げの世界が有りました。
少年は泣きました。
少年は叫びました。
少年は願いました。
少年は祈りました。
・・・誰も帰って来てくれませんでした。
少年は・・・一人ぼっちになりました。
ねぇ、皆、どこへ行ったの?
僕を置いて、どこへ行っちゃったの?
一人はとてもとても寂しいものでした。
本当は少年も気づいていました。もう、二度と皆が帰って来てくれないことに。
遠くの遠くの遠くの世界へ行って、二度と帰って来ない事に。
少年は、お母さんが毎日寝る前に読んでくれた、絵本を広げます。
焦げて、かろうじて読めるぐらいの絵本には国の伝説が書いて有りました。
--うすむらさきのおやまのてっぺんの、たかいたかい、おおきなきにはかみさまがいます。そこでおねがいをすると、なんでも、ふたつだけおねがいごとがかなうのです。--
少年には願い事が、ぴったり二つ有りました。
一つは大切な人を取り戻したい。
二つ目は------。
少年は立ち上がりました。
長い長い旅に出るために。
もう一回、幸せに暮らすために。
一人ぼっちじゃなくなるために。
少年は鞄と絵本をもって歩き出します。
全てを取り戻すための旅へ。