第八話 優男系ふんわりイケメン
ちょっと遅くなりました
フィオが半強制的にアクセサリーをくれた。しかもかなり高価なものを。これで俺はフィオに逆らえなくなった訳だ。祝☆下僕☆…あれ、涙出てきた。
…まあぶっちゃけあいつはそんな器用な性格してないからその辺は心配してないが。
アクセサリーをどうしようか迷っていた俺を見兼ねたフィオがアドバイスをくれた。
「何かずっとつけてるとかずっと持ってる物に埋め込んだりするのが一般的らしいよ?」
「あ、それなら…」
俺は自分の腕を見下ろす。そこにはいつもつけているブレスレットがあった。随分と年季が入っており、表面には青い龍の装飾が施されている。
「そのブレスレットでいいの?」
「ああ。昔貰った物でな。大事にしてんだ」
フィオの知り合いにアクセサリーや装飾品を専門に扱っている人がいるらしい。フィオに渡そうとすると、どうせだから一緒に行こうよ、と誘われたので、暇だし一緒に行くことにした。いや、アカデリアを休んでいる時点で暇ではないのだが。
「そういえば修行は?」
「あ、修行はもういいよ。今のソウならランク7は固いと思うよ。もともと魔力量以外は問題なかったしね」
「え、じゃあ」
「うん、とりあえずは卒業。ここからはソウ次第かな」
合格?を貰えたことで思わず顔がほころんでしまう。つまり明日からはアカデリアに舞い戻ることになる。散々馬鹿にして来たやつらを見返そうと、俺の胸は高鳴っていた。…いや、その前にケンタだな…
「やあ、いらっしゃい…ああ、フィオかい、久しぶりだね」
そこにはとても感じの良い爽やかな笑顔のお兄さんがいた。黒縁メガネをかけており、その柔らかい物腰と若干天パが入ったような茶髪はあらゆる年代に受け入れられそうだった。…チッ。
「そっちの子は?」
「どうも、ソウ・スメラギです。フィオに魔術を教えてもらってました」
「へえ、フィオに弟子か。珍しいね」
男性は心底驚いた顔をしていた。確かにフィオのようなぼんやりした奴が師匠には結びつかないだろう。長い知り合いなのかな?
「ああ、そういえば自己紹介をしていなかったね。ドルー・テオライズだ、よろしくね。私はフィオの…」
「ドルーさんは結構昔からの知り合いなんだ」
「…!そうなんだよ、だからフィオのいろんな事を知ってるよ?」
「もう、ドルーさん!」
二人のやり取りを見ていると本当に仲がいいのが伝わってくる。そうだな、俺もああは言ったが対策を取るにこしたことはないからアクセサリーの件の対抗策として今度ドルーさんに個人的にお話にこよう。うん、それがいい。
「…ん?そういえばテオライズって…」
「ああ、知っているか。貴族のテオライズ家の親戚に当たるんだよ」
やはりそうか。テオライズ家は貴族の中でも結構大きな力を持っている家名だ。そんな人と知り合いのフィオはやはりすごいのだろう。詳しい経緯は想像もつかないが、アカデリアNo.2ともなればそんなこともあるのだろうか。
ドルーさんは良い人で、俺は話しているうちにすぐに懐柔されてしまった。例のアクセサリーの話をすると、3日後にまた取りに来てくれと言われた。長居する理由も見当たらなかったのでお礼を言って帰る事にする。
「じゃあ、そろそろ失礼します」
「あ、そうかい?じゃあこれは預かっておくから、時間のある時にまた来てね」
お礼を言って店をあとにした。ふと思ったが、この礼儀や物腰はやはり貴族仕込みなんだろうか。
そんなことを考えていると、今出たばかりの店からドルーさんが追いかけてきた。
「忘れてた!フィオと仲良くしてくれたお礼だよ」
そう言って何かを投げる。受け止めて手元を見ると、それはリングだった。召喚石程ではないが、それなりに高価なものに見える。戸惑っていると、
「今後もこの店をご贔屓に!」
と言って爽やかな笑顔を向けて来た。いい人ばっかりだな。…やだ、惚れちゃいそう。いや、勿論俺にそっち系の趣味はないのだが。
勿論作者にもありませんよw