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imagic  作者: みげるん
第四章 森林王国編
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第六十一話 束の間の休息

 


「…ん」



 俺は木目のある天井を見つめていた。

 ぼーっとしていたが、ヌエにぶっ飛ばされたことを思い出す。

 そうだ、あの時ヌエが変な雰囲気を出し始めて……



「ヌエはどうな痛でえ!」



 状況を把握しようとして起き上がろうとしたが、身体に激痛が走り顔をしかめる。

 俺が涙目になりながら横を見ると、隣のベッドには未だ目を覚ましていない紅が横たわっていた。

 無茶しやがって。



「あ、蒼起きたんだ。……紅はまだだよ」


「あ、ああ……ヌエはどうなったんだ?」


「師匠が一人で倒しちゃった」


「ええー……まじか……」



 あの三人がかりで倒せなかったバケモンを一人でである。どっちがバケモンだよ。



 街は今半分お祭り騒ぎだ。

 ヌエの襲来自体を知らない人が殆どだった様だが、人から人へと伝わって行ったらしい。

 身の接近していた過去の脅威に怯えるより、それが撃退された今を喜ぶ方が得だと気づいたのだろう。

 人知れずヌエを撃退した俺たちは英雄扱いされているとか。

 倒したのは結局アクセルだけなんですけどね。悪い気はしないけど。


 フィオに治癒魔法をかけてもらい、俺たちは連れ立って建物を出る。

 ちなみにアクセルは長の家に行っている。

 俺たち全員が目を覚ましたら集まれ、とのことだ。

 紅がまだ目を覚まさないので、起きるまでぶらぶらしてなんか買ってきてやろうという算段だ。

 治癒魔法をかけてもいいんだが、できるなら自然治癒に任せた方が体にいいらしいので、目を覚ますまでは何もしないことにしたのだ。



 俺は美味しかったあの串焼きを買って帰ろうと自然と同じ方向に足を向けていた。

 その道中、街の人々から口々に声をかけられる。



「あんたらが討伐してくれたんだってな、ありがとよ!」


「この街はあなたたちのおかげで救われたわ!感謝してもしたりないくらいよ!」


「は、はあ……」



 終始こんな具合である。

 最初の方はまんざらでもなかったが、しばらく経ってくると終わらない感謝の言葉への対応による疲労と自分たちがほぼ何もしていないという申し訳なさで参ってしまった。

 ようやく人の少ないところへ抜け、一息、というかため息をつく。



「にゃは、こういうのはあんまり慣れないねー」



 色濃い疲労がにじんでいた俺のため息に答えたのは同じく疲れた顔で笑うフィオだ。



「しかも俺何もしてねえからなあ……」


「いやいや、蒼は最初一人で頑張ってたじゃない。女の子も一人助けてたみたいだしー」



 それは確かにそうなんだが。

 結果を見ると多分俺が何もしなくてもアクセル一人でなんとかなってたんじゃないかって思わざるを得ないんだよな。



「でもあの爆発がなければ僕たちはそもそも気づかなかったよ?」



 それはそうかもしれないな。

 じゃ、ちょっと仕事したってことで。

 確かにそもそもの目的は時間稼ぎだった訳で。

 そう考えると俺はできることはしっかりできたんだろうか。

 ま、何にせよ精進あるのみだな。



 何気なく空を見上げると、日が少し高い位置まで登っていた。

 ぶらぶらするつもりだったのに人の波をかわしたりで思ったより時間を食ってしまったらしい。

 そろそろ紅も起きている頃かもしれない。



「そろそろ戻るか。その辺で何かしら買って」


「そうだね。もう少しゆっくりしたかったけど」


「じゃあその辺の……ん?」



 俺が当たりを見渡すと、この街にはおよそ不釣り合いな、大きな荷物をもつ見慣れぬ人物が立っていた。

 旅人だろうか。それにしては大荷物の様に感じるが。



「いや、行商人か」



 定位置から動かずに佇んでいるところを見ると客を待っているのだろうと分かる。

 だがそれにしても声をあげるなり方法はあるし、待つだけが商売じゃないだろうと思いつつ俺はゆっくりと近づいて行った。



「……おや、お客様ですか?」


「ええ、何を売っているんです?」



 行商人の男は近づいた俺たちを見ると意外そうに声をあげた。

 客がきて驚くなよ……仮にも商人だろ、お前。

 口には出さないが頭の中でそんなツッコミをいれながら俺は品物を確認する。



「ああ、あなた方が今街で話題の英雄方ですか。では折角ですしサービスしますよ。ちょうど掘り出し物もありますし」


「いいんですか?」


「いいんですいいんです、未来の英雄たちに乾杯、ということで」



 そんな事をいいながら品目名のリストを取り出す行商人。

 少し悪い気もするが、こういった恩恵は受けとかないとな。



「……これは?」



 俺がリストを片手に気になったものを見ていると、見慣れぬ果実が目に入った。

 赤くて弾力があり、今にもはちきれそうなその身はかじりつきたい衝動にかられる。

 行商人はそれを確認するとああ、と言った具合に説明してくれた。



「それはコットプリアの身ですね。ここからは遥か南……サウセズで採れる果物ですよ。瑞々しさとほんのりとした甘酸っぱさが人気の果物です」


「へえ……ってサウセズ!?遠っ!」


「まあ、色々なところに足を伸ばしましたからね。おかげで品揃えには自信があります」



 えへん、とばかりに誇らしげに少し胸を張る行商人。

 それまで感情の起伏が少なく、あまり表情に変化が見られなかった男だったが、その顔は今少しだけ緩んだ。



「あの、一体どの位の地域を回ったんです?」


「ええと、あらかた回りましたかね。行ったことがないのは魔獣と人間の共存する地、位でしょうか」


「そんなに!?」



 先程からこの男の発言には驚くばかりである。

 世界を一周するには途方もない時間が必要なのだ。

 見たところそこまで老けていないし、若い内から旅をしてきたのだろう。

 ご苦労様です。



「じゃあ、コットプリアを三つと……何かオススメあります?」


「そうですね、掘り出し物があります」



 そう言ってカバンをガサガサと漁っていたかと思うと、男は小さな石を取り出した。

 いや、魔石とかじゃなく本当に道端にある様な小石だ。

 これが何なのだろうか。



「これはーーあ、これはただの小石でした、失礼」



 本当に小石だった。


 だが、その後に取りだされた物も同じような物だったのだ。というかぶっちゃけ差が分からん。

 唯一ただの小石とは違う点はといえば石全体が紫がかっていること位だろうか。



「これは希少な鉱石です。魔素の欠片……魔素片ともいいます」


「まそへん?」



 俺は知らなかったので、隣にいたフィオの方を向く。

 だが、フィオも分からないといった表情で首を傾げていた。



「これは魔力が結晶化した物だと思ってください。これ程小さいですが、見た目より遥かな魔力を秘めています」


「魔力が結晶化!?もしそれが本当なら……その密度は計り知れないね……」



 フィオが信じられないといった体で呟く。

 俺も同じ意見だ。



「砕いて使ってください。魔力が枯渇した時に使うもよし、一発逆転の一撃のために使うもよし。性能は保証しますよ」



 確かにその言葉通りなら素晴らしい性能だし、重要な武器になるだろう。

 でも、お高いんでしょう?



「今回はサービスすると言ったはずです。無料で差し上げますよ。コットプリア三つ分は頂きますがね」


「本当ですか!?ありがとうございます!」



 なんていい人だ。

 俺たちはコットプリアの料金を支払うと紅が起きているかもしれないことを思い出し、道を引き返すことにした。



「色々ありがとうございました」


「いえいえ、また何処かで会えるといいですね」



 そう笑って男は背を向けて歩いて行った。

 またどこかへ巡るんだろうか。



「名前、聞きそびれちゃったな」



 でも何故かまたいつか会えるような、そんな気がしていた。



 ーーーーー



「どこ行ってたのさ!」


「お、起きたんだな」



 俺たちが部屋に戻ると、そこには元気な姿を見せる紅がいた。



「これやるから怒んなよ、ほれ」



 俺はコットプリアを投げる。

 紅はそれを戸惑いながら受け止めた。

 俺は身振りで食ってみろよ、と示す。

 いや、本当にうまかったのだ。

 その実の九割が水分であるかの様な瑞々しさ。

 絶妙な甘さにほんのりと混ざる酸味。



 コットプリアを齧りながら、紅はことの顛末を聞いてきた。

 俺も分からないので詳しく説明したのはフィオだが。

 そして三人とも目が覚めた今、師匠のところへ行かなくてはならない。

 まだこの件は終わってない。


 それを解決するべく、俺たちはアクセルの待つ建物へと足を運ぶのだった。




アプリコット?何ですかそれ((

似てるだけです。たまたまですよ、たまたま


答え合わせは次回へ持ち越しです……

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