第六話 絶賛修行中
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フィオとの修行を始めて5日目。ランク7は楽勝、とまではいかないが、俺の魔術は最初とは比べ物にならないほど様になっていた。
「『フレイム』」
ボゥッ!
杖先から吹き出した炎弾が着弾したところが大きく燃え上がる。この炎はあのときの試験のときのような炎に限りなく近いものだ。勿論大きさはセーブしているが。
「『アクア』」
その火が燃え移らないよう、すかさず水魔法で消火する俺。この水も無論これまでのようなちょっとちびりました、みたいな水滴ではなく、放水されたちゃんとした水だ。
俺はしばらくこの作業をかれこれ数十回繰り返していた。
「飲み込み早いね〜」
フィオが俺の様子を見て言う。本当はフィオの教え方がうまかったからなのだが、ここでそれを言うのは野暮だろう。素直にお礼を言っておく。
それに今やっているのは基礎魔法だ。これくらいできなくては当然ランク5なんて無理だろう。その基礎ができなかったのは他でもない俺なのだが。今では基礎はほぼ完璧に使えるといっていいだろう。つまりここから先は俺の頭の使い方次第、といったところだろう。
それにこころなしか魔力総量も増えた気がする。変わらないってのはガセなのだろうか。いずれ確かめてみよう。
しかし、今でこそ完璧だと言っているがはじめはとても苦戦した。脳の魔力を体へ移動させる練習から始めたのだが、2日たっても成果なし。
俺はやはりダメだったのだろうか、と諦めかけたのだが、そこでフィオはやり方を変えた。脳から直接魔力を放出する方法だ。その方法だと、頭の中に想像したものを現実で創造する、と言った使い方になる。
だが、前者のやり方に比べて、後者のやり方だとある程度のセンスがいるらしい。
センス…俺の嫌いな言葉の一つだ。
だが、この方法は思ったよりすんなりできた。俺もしかしてセンスあるかもしれない!
嫌いな言葉…?ああ、そんなもん撤回だ撤回!
更に驚いた事に、このやり方だと詠唱不要で魔法が使えるようになる可能性が高いらしい。ちなみにフィオも同様だ。だがまだ少し難しいらしい。
つまりフィオができないのだから俺には当分縁のない話だということだ。いずれ俺にもできる日が来るといいが。
ある日、俺がある程度の魔術を扱えるようになると、フィオは次のステップに進むと言い出した。
「ソウの得意な属性を見つけよう」
「得意な属性って…火とかそうゆうことか?」
魔術には属性がある。火、水、雷、土、風だ。そしてそれぞれには相性が存在し、今述べた順に相性が良くなっている。水は火に、火は風に、と言う様にだ。
他は大体分かるけど火が風に勝つってどう言う事だよ。
ちなみによくある木魔法や氷魔法はないのか、とツッコミが入りそうだが、木魔法は土魔法の上位だ。土魔法を洗練してゆけば使えるようになる。氷魔法も同様に、水魔法の上位互換だ。
だがこれはあくまで単純な相性だ。全く同じ威力で全く同じ魔法をぶつけると相性のいい方が打ち勝つと言うだけの事で、途轍もない威力の火魔法と弱々しい水魔法をぶつけると、なんのことはない、火魔法が勝つだけの話だ。だから皆得意な属性を伸ばす。そして、ここぞという場面で使えるような魔術を持っておくのだ。
だが一つだけ相性に左右されない属性がある。それが『超』属性だ。無属性とも言われる。…超属性の方が中ニ心をくすぐって個人的には好きだが。超属性はポピュラーなものでいくと念動力や音魔法などだ。自然物ではなく、人智を超えたものを扱うものが多い。これは覚えておきたい。
だが後日聞くところによると超は難しいらしいので後回しだそうだ。残念。
「そうだよー。ちょっとこれに魔力をこめてくれる?」
「なんだこれ?」
フィオに手渡されたのは手のひらサイズの透明なガラスのような玉だった。内部には特に何も見えない、なんの変哲もない玉だ。見たことある形状だな。
「材質は昇級試験のアレと同じような感じかな。とにかくやってみればわかるよー」
やはり試験のアレか。
言われるがままにその玉に魔力をこめてみる。すると玉の中にもやが渦巻き始めた。
「そのもやの色で何が得意か分かるから」
そんなハイテクなものがあるのか。
そこで俺が玉に視線を戻すと確かにもやが色づいていた。だが…
「これはーーー
ーーー何色…なんだ?」