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imagic  作者: みげるん
第四章 森林王国編
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第五十三話 はじめてのたびじ

活動報告で言った通り少しだけ遅くなりましたが…


新章!

 

 俺たちの脇の草むらがガサガサと音を立てて揺れる。



「またかよ…」



 もう何度目だろうか。

 俺たちはほとほとうんざりして溜息をつく。

 アクセルを除いて。



「お前ら…こんなんにうんざりしてたら街に着く前に果てちまうぞ?」


「そうは言っても…ねえ?」



 俺たちは恨みがましい視線でアクセルを見る。

 自分だけ楽してるくせしやがって…



 そう、今俺たちが直面しているのは魔物の群れである。

 俺たちは常に綺麗に整備された街道を歩くわけではないので、頻繁に山道だったりを通る。

 すると勿論そこは人が滅多に通らないので、魔物が頻繁に現れるという事態になってしまうのだ。

 それも予想以上の頻度で。

 魔物数匹の群れに一貫して現れるのは黒い毛が全身を覆っている獣だ。

 猫というほど小さくはなく、また虎というほど大きくもない。

 その黒狼(ブラックウルフ)という名の通り、オオカミ程の大きさだ。

 ネコ科で例えたのは失敗だったか。

 まあいいや。


 ともかくその黒狼(ブラックウルフ)が数匹の集団を形成して定期的に襲ってくるのだ。

 荷物目当てだろうか。

 そしてその魔獣の撃退をあろうことかあのアクセルとかいうクソヤローは俺たちに丸投げしたのだ。



「てめーら連れて来てもらった俺に感謝の一つでもあるだろ?…あ、それに訓練にもなるしな!」



 なんて理由で。

 最後に付け加えたの絶対今思いついただろ。


 だが事実俺たちはそれに従うほかなかったのだ。

 理不尽な社会の縮図である。


 一つ幸いしたのは、現れる魔物がどれも大した強さではないということ。

 個体によっては周りより少し強かったり弱かったりという位はあるのだが、その程度だ。

 俺たちが苦戦する程ですらなかった。


 なので今回も俺たち三人は流れ作業のように魔物を撃退してゆく。

 ちなみに魔物によってはアクセルが金になるから、と素材を剥いだりしていた。

 以外と倹約家である。

 そんなこんなで進んでは交戦、進んでは交戦していたので俺たちは大した距離を進むことはできなかった。


 あたりも暗くなって来てしばらくたち、これ以上の移動は危険だとアクセルが判断したのでその場で野営の準備をする。

 ここでまたひとつアクセルの予想外な特技が明らかになった。

 料理がうまい。

 いや、ガチでうまい。

 流石にいい食材を使った一流のシェフの料理と比べると多少劣るだろうが、自分で調達して生き残るためのサバイバル的な料理では勝るとも劣らないのではないだろうか。

 それ程の腕前だった。



「…詐欺じゃね」


「「同意」」



 なんて会話が俺たちの間でひっそりと行われていたのだが、それは今取り上げることではないだろう。


 飯を食った後は風呂…と行きたいところだが、生憎とそんなものは旅路には存在しない。

 村や街に着けば流石にあるはずなので、それまでの辛抱だ。

 一応汗もかいているし、そのままでは気持ち悪いので軽く体を拭く位はしておいた。

 幸い、魔術のおかげで水には事欠かないしな。



「フィオ、ほい」


「あ、ありがと」


「ちょっと蒼、早く」


「…?」



 ここで出てきた問題は、俺たちはいいとしてもフィオが体を拭くのを見るわけにはいかないということだ。

 仮にも女性なのであるからして。

 俺はそのことを完全に忘れていたのでごく自然に濡らしたタオルをフィオに手渡してしまったのだが。



「何見る気満々で座ってるのさ」


「は?…ああ!そうだった!」



 アクセルはというと、いかにも面倒だと言った具合に背を向けて寝転んでいた。

 この男ですら気を使ったというのに、我ながら情けない。

 無意識だったのだ。


 だが俺が怒られているのを知ってか知らずか、フィオは気を使わなくていいと笑っていた。

 それは勿論フィオに羞恥心がないとかそういうことではない。

 そして、俺たちになら見せてもいいなんていうラブコメ展開になった訳でもない。

 彼女は器用に服を着たまま腕をひっこめ体をもぞもぞと動かしたからと思うと、満足したようにタオルを腕と共に袖口から出した。


 俺たちが呆気にとられて見ているので、フィオが声をかけてくる。



「どうしたの?」


「いや別に…その女子の特殊能力はいつ身につくのかな…と」


「身体に値段がつくって分かってからじゃない?」



 フィオが悪戯っぽく笑いながら答える。

 だとしたら女性は遥かに小さい時から大人の世界を知っていることになる。

 女、恐るべし。


 それから俺たちは隠すこともないので上半身裸になって汗を拭く。

 俺が体を拭きながらふとアクセルの方へ目をやると、服の上からは目立たなかったが恐ろしい程鍛えられた肉体が目についた。

 伊達に傭兵やってないな…。

 そんなことを思っていると紅から声をかけられた。



「蒼のその傷何?」


「え?…ああ、何か昔からあるんだよ、これ」



 言いながら俺は自分の胸を見下ろす。

 その胸の内側には縦に二本大きな縫合跡のような傷がついていた。

 考えても思い出せる気はしなかったので、軽く誤魔化して服を着る。


 こうして、俺たちの旅路の一日目の夜は深い安眠と共に更けていく。

 わけがない。


 夜に魔物が襲ってこない保証がどこにあろうか。

 順に見張りを立てて眠ることになった。


 ちなみにアクセルに今までどうしてきたのか聞いてみた。


 曰く、できるだけ早く街に着くようにし、野宿を極力避ける。

 あと少しで着くなら寝ずにそのままなんて事もざらだそうだ。

 どうしても野宿をしなくてはならない場合は匂いなど気どられるものをできるだけ消し、浅い眠りで過ごすそうだ。

 少しでも気配を感じたら起きなくてはならないので、結構神経をすり減らすらしい。


 そのせいか久しぶりにちゃんと寝られる、と喜んでいた。



 見張りの間は死ぬ程暇である。

 眠気が来た時には地獄でしかない。

 それに、フィオは多少筋肉痛にも悩まされたらしい。

 紅は勿論、俺も多少は剣術の修練をしていたのであまり気にはならなかったが、魔術師の彼女には少々こたえたようだ。

 恐らくすぐに慣れるだろうとアクセルは言っていたけれど。


 初日の夜は何度も襲われあまり眠れなかった。


 そんな生活を続けてどれほどたっただろうか。

 時間感覚が麻痺していてあまり参考にはならないが、一ヶ月弱は歩いたような気がする。

 一応ゆっくり行ったのでもう少し急げばもう少し早くつけるだろうし、アクセル曰くもっと早い方法もあるらしいが、こんなものだと思う。


 そして日に日に夜に魔物に襲われる事が減っていった。


 俺たちはそれで多少上機嫌だったのだが、アクセルはずっと渋面を呈していた。

 俺たちには都合が良かったその事は彼にとっては逆にあまり芳しくないらしい。

 アクセルはしばし考えた後、俺たちに注意を促した。



「俺の杞憂ならそれでいいんだが、少しこの地域…俺たちが向かっている場所はおかしいかもしれない」


「どうして?」


「よく襲って来た魔物がいただろ?あいつらは色でだいたいわかると思うが基本的に夜行性なんだよ。それが昼間ばかり遭遇して夜に会わない。どう考えても変だ」



 適当に見えてやはりこの人は戦場で生き残って来た猛者だ。

 意外と色々考えているらしい。


 俺たちは一応警戒を怠らないようにしつつ、先へ進むことにした。



 そして更にその三日後。

 俺たちはようやく小さな集落にたどり着いたのだった。



タイトルはあえて平仮名

あの某番組を連想しますよねー


たまにやってるのを見てがんばれ!って思いますw

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